第31話 さらの結婚練習
この物語が、降り止まない雨の中にいるあなたの一本の傘になれますように
研究室でさらがシウに声を掛ける。
「シウ君さ、今日うちにごはん食べに来てくれない?」
「?」
「私もいつかは結婚したいしさ、いつまでも料理するの怖いとか言ってらんないしさ」
「はい、僕で練習しましょう」
シウは快諾した。
「将来さらさんも誰かと結婚するでしょうから」
さらは、その誰かがシウではないことに少し切なくなった。
さらの家のキッチンで、エプロンをするさら。
「このエプロンかわいくない?形から入るタイプなんだよね、私。こういうのから気分あげてさ」
シウは微笑んでいる。
「あとさ、フライパンも鍋もかわいいの買っちゃった」
さらはシウに見せつける。
「かわいいです」
「でしょー。あとね、お皿も新しいのにしたの」
お皿も顔の横で見せつけるさら。
「かわいいでしょー」
「かわいいです」
さらは冷静になって言う。
「……さてと。一通り買ったもの見せたから、シウ君帰る?」
「?」
「食べないで帰っても全然いいんだよ?」
「食べます。食べて帰ります」
シウはにっこり微笑んだ。
「そう……」
さらは、深呼吸する。
「じゃあ、覚悟してね」
さらは意を決して、豚肉に包丁の刃を入れる。
順調に生姜焼きは出来上がり、シウの前に置いた。
「美味しそうです」
シウは箸を手に取った。
「いただきます」
「どぞー」
シウは生姜焼きを口に入れると、ごはんもかき込んだ。
不安そうに見ているさら。
「美味しいです」
「ほんと?」
「はい」
「量に文句とかない?」
「ないです」
「ありがとーシウ君」
さらはそう言うと、泣きながら自分の生姜焼きを豪快に食べだした。
夕食が終わり、お茶を飲んでいるシウとさら。
「ほんとにさ、シウ君て素敵な人なんだね」
「ありがとうございます」
シウは素直に礼を言った。
「私がシウ君にふさわしい人になって、その時シウ君に恋人がいなかったら……また私と付き合ってくれる?」
シウは戸惑った。
「いい、いい。今は答えなくていいから」
シウはさらをじっと見つめる。
「私ね、こうも思うんだ。シウ君が韓国に帰るなら、私が韓国に行けば良くない?て。私が留学する!はは」
シウは、本気と受け取って良いか分からなかったが、優しく微笑んだ。
……未来のことは誰もわからない。より良い未来の為に毎日を大切に過ごすしかない……
さらはそう思った。
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