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花束の傘  作者: 祥野雅子
27/28

第27話 無駄にかっこいいお父さん

この物語が、降り止まない雨の中にいるあなたの一本の傘になれますように

 海老川の桜は満開だった。


 四歳になった智博を連れて、ハユンと亜希子は毎年恒例のお花見に来ていた。


 桜をバックに、亜希子と智博を写真に撮るハユン。

 

 川沿いには多くの屋台が並んでいる。智博が一つの屋台へ走っていく。

「たこ焼き食べたい」

 智博はハユンにねだる。

「一つください」

 ハユンはポケットを探る。それを見た亜希子が、バッグから財布を取り出して小銭を払った。

 

 亜希子はたこ焼きを一パック受け取ると、

「智博ちょっと待ってね」

 そう言って、たこ焼きを半分に割ってふーふーする。

 ハユンは一足先にたこ焼きをまるごと口に入れる。ハユンは熱すぎたのか、はふはふしている。

「ハユンさん、ふーふーしないと」

 亜希子はたこ焼きをふーふーしながら智博に食べさせた。

「美味しい?」

 亜希子が智博に聞くと、智博は満足そうに頷いた。

 ハユンは続けざまにたこ焼きを口に入れる。案の定、また熱さにはふはふ言う。

「ハユンさん、さっきのが熱かったら、こっちも熱いですよ。同時に出来たんだから」

 亜希子のもっともな指摘に苦笑いするハユン。


 夏になると、幕張の千葉市民花火大会へ三人で出かけた。五万発の花火が打ち上がるという触れ込みだった。

 

 亜希子は紺色の浴衣に紅色の帯をしている。ハユンはいつもと違う亜希子に緊張した。

「浴衣持ってたのか」

「昨日、リサイクルショップで買ったのよ」

「そうか」

 ハユンは亜希子が眩しくてまっすぐ見れない。

「ネットの動画で見よう見まねで着付けしてみたんだけど……どうかしら。ね、どう?」

「すごく、いいんじゃないかな?」

 ハユンはそう言いながらも、亜希子を直視出来ない。

 亜希子はハユンを自分に向かせて聞く。

「ねえ、似合ってる?」

「う、うん」

「綺麗?」

「う、うん」

 固くなっているハユンを微笑ましく感じる亜希子。

 

 打ち上げ花火が始まると、頭上で花火が開いていく。

 

 亜希子はそっとハユンの手を握った。ハユンも亜希子の手を強く握り返す。そんなハユンに亜希子はときめいた。

 

 ハユンは打ち上げられる花々に魅了されながらも、ふと横の亜希子を眺めては魅了された。

 

「僕もー」

 両親が手を繋いでいるのに気づいた智博は、両親の間に入って来る。三人で手を繋いで花火を見ることにした。


 打ち上げ花火が終わると、智博は屋台が気になり出す。亜希子が尋ねる。

「お腹空いたの?」

「ううん。お父さん、あれやって」

 智博の指先には、射的があった。

「お父さん、当てられるかしら?」

 亜希子は挑発してみせる。

「俺を誰だと思ってる。現役の警官だぞ。百発百中だ。みてろよ」

 ハユンは店主に小銭を渡すと、三つのコルクを受け取る。

 コルクガンを構えるハユン。亜希子はその姿が決まっていてまた惚れ直した。

 

 一発撃つ。


 が、当たらない。

 

「ん?」

 ハユンはなぜだ?とばかりに構え直す。

 やっぱりかっこいい、と思う亜希子。

「お父さん頑張って」

 応援する智博。

 亜希子と智博は声を合わせて応援する。

「お父さん頑張ってー、フレフレー」

 

 当たらない。

 

 最後の一つになった。ハユンは身を乗り出して当てようとするが、

「だめだめ」

 と、店主に止められる。

 

 最後の一発を撃つ。

 

 景品にかすって揺れるが倒れない。

 

「あー」

 悔しがる三人。

 亜希子はハユンの背中に手を置いて言う。

「ハユンさん、良く頑張ったわよ、ね、智博」

「うん」


 ……気を遣わせたようだ……


 とハユンは思った。


 ハユンは、慰められている状況に不満を持って自説を述べる。

「違うんだ。射的というのは、良い銃と良い撃ち手が揃ってこそ当てることが出来る。良い撃ち手だけじゃダメなんだ。教訓になったな」

 亜希子はハユンを慰めるように言う。

「ハユンさん、かっこよかった。智博、お父さんかっこよかったわよね」

「うん!お父さん、かっこよかった!」

 亜希子はまた挑発する。

「ふふ、お父さん無駄にかっこよかったわよ」

「『無駄に』は要らないだろう……」

 ハユンは肩を落として言った。

お読みいただきありがとうございます*͈ᴗ͈ˬᴗ͈ෆ

お気軽にご感想等くださると嬉しいです♡♡

今後ともよろしくお願いいたします( ơ ᴗ ơ )

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