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花束の傘  作者: 祥野雅子
26/27

第26話 チャイデリヤの涙

この物語が、降り止まない雨の中にいるあなたの一本の傘になれますように

 シウとさらが、八千代緑が丘にある映画館で映画を観ている。


 上映が終わり、映画館から出て来るシウとさら。

 シウはさらにプレゼントされた春セーターをシャツと合わせて着ている。

「シウ君、映画どうだった?」

「うーん。良かったです」

「どの辺が?」

「うーん、全体的に?」

「あれ、飛行機がさ、真っ二つに割れるとこ面白かったよね」

「面白かったです……」

「シウくん……もしかしてさ、イマイチ内容分からなかった?」

「……はい。専門的な用語が分からなかったです」

「そうかー」

「もっと日本語勉強します」

「今度はさ、韓国映画観ようよ、ね」

「はい」

 シウは嬉しそうに頷いた。

「お腹すいたねー。私、こんな痩せちゃった」

 さらはお腹をさすって言った。

「お腹すきました」

「あそこのチャイデリヤ入ろうよ」


 さらが自分のスマホで注文していく。

「小エビのサラダでしょ、ピザ!ピザさ、ソーセージときのこ、どっちがいい?」

「えーと」

「両方行こう!あと、辛いチキンと、ペペロンチーノと……」

「大丈夫ですか。全部食べられますか」

 シウが心配そうに聞いた。

「大丈夫じゃない?二人だし」

「……」

「あと、何頼む?」

「もう大丈夫ですよ。足りなかったら後でまた注文しましょう」

「シウ君て堅実だね~」

 さらのスマホに、中野から連絡が入る。

 

「ここへ来て」

 

 短い一文と住所が記載されていた。

 さらは、住所を地図アプリに貼り付けた。

 

 表示されたのは、ハイナッタホテルだった。さらは、ホテル?ホテルで何するの?ホテルのカフェかな?と考えを巡らせた。

「シウ君」

「はい」

「ちょっと、お手洗い行ってくる」

「はい」

 シウは微笑んで見送る。

 

 女子トイレに入ったさらは、中野に電話を掛ける。

「もしもし」

「ああ、さらか」

「どういうこと?ホテルって」

「満更でも無さそうだったから」

「何が?」

「言っちゃうけどさ、俺のこと、まだ好きでしょ」

「はぁ???」

「女は別れた男をすぐ忘れるって言うけど、好きなまま振られた男は別なのかなと思って」

「あんたサイテー」

 さらはその瞬間、中野との記憶が一気に蘇った。

「もう、着信拒否して全部ブロックするから!消え失せろ!」

 そう言ってさらは電話を切った。


 さらがテーブルに戻ると、注文した料理が所狭しと並んでいた。不安そうにしているシウ。

「ごめんね、一人にして」

「大丈夫です。食べましょう」

「う、うん」

 さらは食べようとするがため息が出てしまう。

 さらを心配するシウ。

「どうしましたか?」

「ううん、どんどん食べて」

 シウは頑張ってピザを頬張る。

 さらも食べようとするがやはりため息が出てしまう。

 シウは心配して聞く。

「何かありましたか」

「あいつのさ、連絡先消した。ブロックもした」

 シウは察した。

「そうですか……」

「あいつの嫌だったとこ全部思い出したの!ごめんね、昔の男の話なんて聞きたくないよね」

「さらさんが嫌じゃなければ、聞きますよ」

「……あのね、5年くらい前かな……」


 中野の部屋で生姜焼きを作っているさら。楽しそうである。

 

 出来上がり、ご飯と生姜焼きの皿をテーブルへ置くさら。

 中野はさらの生姜焼きと自分の生姜焼きを入れ替える。

「どうして?」

 さらは訳が分からず聞いた。

「さらのやつの方が多そうだった」

「そんなことない。だいたい同じだよ」

「それなら交換しても良いはずだろ?それを嫌がる時点でさらの方が多かったんだろう」

「違うって。疑われたのが嫌なだけで、量は同じだって」

「分かった分かった」

 さらは凄くショックだった。

 

 ……そんなにがめついと思われてたの?あなたより自分を優先すると思われたの?……


 別の日。

 肉じゃがを作るさら。中野がテーブルにつくと、さらがはかりを中野の前に置く。

 そこに肉じゃがを乗せるさら。

「これが、なかのーの肉じゃが300g」

 はかりの数字も300と表示されている。

「で、私の分も300g」

 さらの肉じゃがも300と表示される。

「ね、同じ量でしょ?これで納得した?」

 中野はしばらく考えて言う。

「俺の方がじゃがいもが多くて、肉が少ないんじゃないか?」

「そんな……」

 さらは絶望を感じた。


 ……バランス良く盛り付けたのに……また疑われた……

 

 さらは悔しくてこの日は眠れなかった。

 

 別の日。

 牛丼を作るさら。明らかに超デカ盛りの牛丼と小どんぶりをテーブルに出す。

 

 ……これで文句はないだろう……


 さらはそう思っていた。

 中野は言った。

「なんだこれ。さら、作りながら食べたのか?そうだろう。こんな量でさらが満足するわけないもんな」

「もう別れて」

 さらは思わず口走った。

「もう別れて!別れて!」

「まあまあまあまあ、俺はさ、たださらの困ってる顔が見たかったんだよ」

「ひどい……」

 涙目のさら。

「かわいいからだよ」

「からかうのは良くないでしょ?私がどれだけ傷ついたと思ってるの?」

「悪かった悪かった」

 中野はことの重大さが分かっていないようだった。

「私、もうごはん作るの怖い……」


 シウは真剣に聞いていた。

「それが別れた理由ですか?」

「ううん、婚約破棄は別の理由で、向こうからされたの。あいつの親が、私に両親が揃ってないのはダメだって。私の親、お父さんもお母さんも事故で亡くなってるから」

 さらは今にも泣き出しそうな顔で言った。

「そんなこと言われたって、私に何が出来る?両親生き返らせろって?」

 泣き出すさら。

 シウはさらの涙を見て動揺した。

「さらさん、大丈夫ですか」

 シウはハンカチをさらに渡した。

 さらはハンカチを奪い取ると、涙を拭った。 

 さらは急に正気に戻る。

「でもね、振られた時は悲しかったんだけど、少ししたらせーせーしたんだよね」

「はい……」

「だってあいつ、雨の日に水溜まりを私に歩かせるんだよ?自分は普通の道歩いてさ」

「うん」

「晴れの日はどうだったと思う?葉っぱがとげとげ刺さる方を私に歩かせんの」

「うん」

「でさ、ある時キレたんだよね。『もうちょっと気遣いしたら?』って」

「うん」

「そしたらさ、『俺くらい良い人間いないよ』だって」

 さらは中野の真似をして言った。

「認知が変なんだよね……先にシウ君と会ってればね」

 シウは切ない気持ちになった。

「でもさ、ゆるされないよね。私はゆるされない!」

 さらはきっぱり断言した。

「何がゆるされないんですか?」

「あいつに気持ち残ってて連絡先教えたこと。残ってるのにシウ君がいる!訳わかんない!」

「ゆるしますよ。連絡先消したってさっき」

「私が自分をゆるせないの!」

「……あの、一つ質問があります」

「うん、何?」

「その人のどこが好きで付き合って、婚約までしたんですか?」

「え?どこって言われても……」

「え?」

 シウは目を丸くした。

「だって、あまり良い人ではないですよね?」

「私、付き合ってる人いないとなんか不安になっちゃうの……だから、かな」

「さらさんを大切にしてくれる人と付き合った方がいいですよ。もっと自分を大切にしてください」

「シウ君は大切にしてくれてるね……」

 シウは自信があったわけではなかったが、さらにそう言われて嬉しかった。

「さらさんを、僕はゆるしますから、さらさんも自分をゆるして」

 シウは優しく言った。

 さらは信じられない気持ちでシウを見つめた。

「ありがとう……シウ君」

 さらは気づいたら感謝を呟いていた。

「食べて食べて!私の奢りだから、食べて」

 シウはさらの人生が心配になった。

お読みいただきありがとうございます*͈ᴗ͈ˬᴗ͈ෆ

お気軽にご感想等くださると嬉しいです♡♡

今後ともよろしくお願いいたします( ơ ᴗ ơ )

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