♢30♢
30いり……!
聞き分けろ。
そう言った星喇の顔があまりに真剣で、暖香も頷かざるを得なかった。
「……わかった。でも、あんた! 私たち、許したわけではないんだからね。またなんかしたら今度は今日の倍痛い目あうと思いなさい」
男を指さして言う。男はそんな暖香を上目づかいで睨んだが、すぐに片頬を吊り上げた。
「――ああ。かかってこいよ」
「……んの」
「暖香さん、帰りましょう。別に私たちが負けたわけでも無いし、そもそも勝ち負けの問題でもないでしょう」
萊兎にどうにか説得され、暖香もやっと引き下がった。
――そうか……黒魔法を止めなければ
目の前の男の言動に気を取られてすっかり忘れていた大事な目的を、星喇は思いだし、ため息を吐く。面倒くさいことは嫌いだ。できるだけ手早く済ませたい。
男に背を向け、遠くなった紋太の背中についていく。
丘の植物たちは何事も無かったかのように静かに揺れ、空にはゆっくりと雲が流れている。泉があったはずの穴は相変わらず枯れたままだが、このままならばすぐに水が湧くだろう。そこには、何処の風景とも変わらない平和な土地がただだだっ広くひろがっていた。
――さて、黒魔法の発生源はここだったが、力の元はどこを探したものだかな
今回見つけたこの丘は、魔力を集めて黒魔法を扱うための場所だ。この丘地もかなり広いが、ここだけで黒魔法を使うために必要な、膨大な魔力をあつめることは不可能だ。そのためどこかからか魔力を集めているはずで、その魔力をどうにかして止めれば黒魔法も自然消滅するはずである。
何回目になるかわからないため息を吐いて、倒れたままの男に軽く手を振った。




