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「・・・俺は、お前と一度ゆっくり話がしたい」
「何言ってるんだ、紋太・・・!」
思いがけない紋太の言葉に、星喇は面食らう。
「悪い、みんな。でも俺、なんか・・・・・・こいつの事、知ってる気がする」
「―!!」
「―そうか」
そう言い、その場にしゃがみこんだ地面に伏せこんだ男の顎を、くいっとあげる。
紋太の目は、声は、ガラスのように透き通っていた。
男も暫く紋太の顔に穴が開くほど見つめていたが、やがて深いため息を吐く。
「いくら考えても、記憶にない。人違いなんじゃないか」
「・・・そうか。悪かったな」
紋太もため息を吐き、立ち上がる。
「!ちょ、ちょっとお兄ちゃん」
「大丈夫。気にしないで。ただちょっと・・・びっくりした」
いつもと変わらない笑顔で、彼は言った。しかし、どこまで本当なのか。
「・・・今日は、帰ろう」
その笑顔が本当なのかどうなのか測りかねた。
「!!星喇!?」
暖香が驚き、振り向いた。
「あの男には、もうあんな大事をする力など残っていないさ」
「でも・・・」
「暖香」
不満げな暖香の言葉を、ロンレイが遮る。
「聞き分けろ――、お前だって見たんだろう。星喇が言うとおり、あいつは当分何もできないよ。しかも今日は下見だけのつもりだった。帰ろう」
もちろん、暖香の気持ちもよくわかった。星喇も、こんな中途半端な状態ではなく、しっかりと処分したい。だが、そんなことよりも紋太の様子がとても気になる。彼は今もいつもと同じ表情ではあるが、いまいち信用できなかった。




