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こぼれた魔法  作者: 亜架 耀太
第三章 ヒーロー気取り
21/32

♢21♢


 翌日。戦闘も想定にして準備した四人と一匹は、発生源を調べるべく街へ出ていた。いつもは賑わう街も、静かだ。


「やっぱりみんな病気恐れて引っ込んでるんだろうな」


 星喇が、商店街で買った肉厚のソーセージが入った固いサンドウィッチを齧りながら険しい表情で言った。体格のいい星喇は彼以外よりもたっぷりの朝食をとっている。


「さて・・・流行は主にこの街を中心にしていたからきっとここの近くが禁忌黒魔法の犯された場所だと思うんだけどな。ロンレイ、掴めるか?」


 最後の一かけらを飲み込み、星喇がロンレイを見下ろす。

 犬としてのロンレイは、魔法の気配を感じで辿って行くことができるらしい。


「よくわかんねぇんだよな。発達してる街の中心部だからか、いろんな魔力が混合してる。街の外周を歩けないか」

「わかった」


 ロンレイの希望に応えて、星喇が大通りから一本の裏道に入る。頭上には洗濯用の細いロープが家と家の間に張り巡らされているが、やはり病気を警戒してか何も吊るされてはいなかった。人々は予想以上に病気に恐れを抱いているようで、カーテンまでぴっちりと引かれ、薄暗い路地に人の気配は全くない。


「なんかこう・・・」

「幽霊街みたい?」

「うん」


 頬を引きつらせてなんとなく警戒してしまう暖香を、紋太がくすくすと笑う。


「どうだ」

「待ってくれよ・・・。あと少しで何か掴めそうなんだけど、黒魔術の禁忌を犯す奴ってのは大体その筋に慣れてる奴だから、たまに気配消してくるんだよ」


 暖香は思わず手を組み目を軽くつむった。


「ん、何暖香念じてるの?」

「む、そうよ。悪い?」

「いや、暖香相変わらずだなあと思って。小さいころもそうだったよね、神様とか物凄い信じちゃってさ」

「お、そうなのか?意外だな」

「そうですね、意外です」


 紋太の言葉に、萊兎と星喇が何故かくいつく。


「お、じゃあ教えてあげようか?」

「えー、なんですか」

「ちょっと気になるな」

「嫌な予感」

「暖香ね、『井戸ってなんかこう神秘的だよね』って俺が行った次の日から朝早く起きてはその井戸の前でいヴぁッ」

「いらないこと言うな!」


 紋太の喉に軽く平手を打ちこんで、きっと睨む。そのまま、聞きたかったと文句を言う星喇と萊兎に今度聞かせてあげるなんていらないことを言う紋太を余所に、前を黙々と歩くロンレイに声をかけようとしたが、


「あ、暖香、魔読中のロンレイに声かけない方が」

「ロンレイ」


 星喇に何か言われた。が、時すでに遅し。

 次の瞬間。

「ぎやああぁぁぁぁぁああぁあ!?」


 暖香の口から、何か物凄い声が飛び出た。そのまま、尻餅をつきそうな勢いで後ずさる。ロンレイが大口を開けて噛みついてきたからだ。


「びっくりした」

「だから声かけたんだ、話しかけるなって」


 俺もやられたことがある、と言い袖をまくる。もともととても生地が薄く、透けてしまうような涼しい素材でできている衣装だが、縫った後の残る傷を隠すことくらいはできていたらしく、正直醜いその傷を暖香は初めて見ることとなった。


「き、気を付けよう・・・」

「ああ、痛かったぞ」


 仮にもこれから共に生きる仲間のひとりだ、今のうちに知れてよかったと思うことにしよう。


 しかしそんな暖香の背後では、彼女の恥ずかしい過去暴露トークが始まっていた。


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