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五人が出会ってから、約二週間が経った。毎日なんとなく過ごしたが、それでも何故か夜布団に入るときには充実感でいっぱいになっている。
暖香はそんな日々に溺れて本当の目的を忘れていたが、
「俺らの本当の目的は“本当の魔法”ってのを確認することだろう。そろそろそのことも考えた方がいいぞ」
星喇は一昨日あたりから、毎日そんなことを言う。一番魔法で痛い目にあった彼が必死に訴えるので、他の四人もそろそろ気になってきていた。
―といってもなあ・・・どこに行って何をどうすればいいのか
この目的は漠然過ぎて、どこから手をつければいいのかわからないし、そもそもどんな事柄に手を着ければいいのかからわからない。
朝食の後、暖香は自室に戻って机に置いてあるパソコンをたちあげ、どんなワードを入力しようか悩む。
「うう、魔法?それとも魔法の歴史、とかそんなんかな・・・」
机を人差し指でコツコツ叩き、もう一方の手を顎にあて、目を閉じる。
外から聞こえる木々の葉が擦る音と時計の針がまわる音と、自らのコツコツ音だけが暖香の暖香の耳をくすぐった。
「―・・・んぁ・・・。・・・っは!!寝てた!!!」
椅子から滑り落ちかけた体を勢いよく立て直し、口の端を手でぬぐう。
考えるという作業は暖香の得意分野とは程遠い。
ひっくり返って天井を見上げ、のびをすると、天井についた雨漏りの跡が見えた。
「あ・・・すごい、あれ犬みたい」
天井の染みには耳と丸っこい尻尾がついていて、ずんぐりむっくりの犬の影のようだ。
昔紋太に教えてもらった犬の影絵を思い出し、その影絵と合わせてみる。
「犬・・・っていえばロンレイ、なんかちょっと前の名前が気になるな・・・」
前の名前―星喇に聞けばわかるんだろうか。
―ううぅん、でも星喇もあの屋敷でのことはもう忘れたいのかもしれないし・・・そういう意味もあってロンレイって犬の名前に変えて家を出たのかもしれないし。そう考えると、星喇も元は星喇って名前じゃなかったのかも
いろいろ聞きたいが、知りたいが、暖香の心の中のどこかの善意が邪魔をする。聞いて過去のことを思い出させては、いけないような気がした。
「あ・・・星喇、といえばお父さんの会社・・・!!」
はっと閃き、ばっとパソコンに飛びつき、ぐっとその指が固まった。
「・・・会社名というか・・・グループ名というか、知らないんだった・・・」
―畜生、これも絶対聞けないじゃないかバカヤロー
こっそり悪態を誰かに向かってつきながら、しかたがないので「魔動機 薬」と検索してみる。
一瞬の間の後、ずらりと検索結果が表示される。
「へえ・・・」
暖香は思わず感嘆の声をあげた。
検索結果の中にあの星羅の父親のことはまったく表示されておらず、そこは暖香の予想通りだった。しかし彼が支配する子会社たちのサイトらしいものがあったり、製造しているもののことだったりが記載されている。そのほとんどが同じ種類の薬のようで、暖香はふとこの間紋太が言っていたことを思い出した。
―「最近、街ですごい病気がはやってるみたいだね」
「その薬か」
きっとこれは安全なんだろうけど、星喇の話を聞いた後だと警戒してしまう。
「それにしても・・・」
一つのページを睨みつけ、暖香は首をかしげ、眉を潜める。
何かが引っかかった。
「・・・そういうことか」
引っ掛かりの正体に気づき、悩んだ末に、暖香は部屋を出た。




