♢11♢~追想~
四年前の話。今星喇は17歳なので、このときはまだ13歳…。
「星喇、星喇?ここか?」
自分を探す父親の声に、星喇は彫刻をしていた手を停めて立ち上がった。
「何?父さん
「おお、また彫刻してたのか。好きだな。それより、大事な話がある。ちょっと来てくれ」
「?わかった」
父親は軽くうなずいて歩き出した。
「うっわ・・・、うちってこんなところあったんだ」
父親に連れてこられたそこは、普通の住宅が二個ほど入りそうな大きなところだった。コンクリ―トでできていて、窓など一つもない。そんな灰色で染められてないところは唯一、今自分たちが入ってきた扉くらいのものだった。
「そうだぞ、普段お前が過ごしている場所など、うちの二分の一程度しかない」
父親が自慢げな顔で言う。星喇の育つ家は魔道具を生産するいくつもの小工場の頂点のようなもので、そのせいか、普通のそれとは違う、いわゆる「豪邸」のような家に住んでいた。星喇が普段過ごしているところもだいぶ広いというのに、あれの倍もの広さがあると考えると自分でも寒気がするほどだ。
―いつか、自分の家の中で迷子になりそう・・・
そんなことを考えながら、その四角い空間を見渡す。
「それで?ここがなんなの、父さん」
父親の顔を見上げ、聞いた。
「ん?ああ、そうだ・・・。私は一度、この屋敷で魔道具を生産しようと思う。それを、ここで作ることにしたんだ」
「え、じゃあ新しい魔道具を作るってこと?」
星喇の問いに、無言で頷く。
「?それで、俺は?なんで呼ばれたの」
「お前に、手伝ってほしいからだ」
「・・・え」
突然の言葉に、星喇は目を丸くした。
「俺が、手伝う?」
「ああ、そうだ。これから作るのはうまくできるかわからんが・・・、悪夢が、ものによって人の命まで奪うということは知っているな」
「あ、うん。確か、悪夢の中には黒魔法の一種のものが含まれてるんだよね」
「ああ、そうだ。だから、それから人々を救う薬を作ろうと思うのだが・・・。魔力がとてつもないほどいるんだ。だからそれを、お前に補ってほしい」
「お、俺が!?だって、俺魔力も全然ないし・・・」
「いいんだ、たとえ微力でも。手伝ってくれるな?」
「!もちろん!」
目を輝かせて頷く息子を見て、父親は満足そうに笑った。
「とりあえず作る機械はもう下の会社に形だけ作らせてある。それを参考にして薬を作る魔動機を完成させるのは私たちだ。機会は明日くるはずだから、よろしくな」
「こっちこそ!」
星喇はそのとき、尊敬していた父親に認めてもらえたような気がして、とても嬉しかった。
握った手は岩のようにごつごつしていて、黒くて、いろんなところにまめやたこができて。仕事をしている後ろ姿を見ても、この手を握っても、父親は遠い世界にいるようだったけど、息子と父親だけではなく、父親のいる世界に認めてもらえたような気がして。
とてもとても、嬉しかった。




