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夜。
町まで言って買ってきたインスタントの夕食を食べながら、暖香がほのぼのと言った。
「はー、だけどそう考えると会えてよかったな、お兄ちゃんに。家出てきて正解だったかも」
「そうですね」
萊兎も微笑みながら答える。
「あ、そうだ。お前たち二人とも、なんで家出てきたんだ?」
突然のロンレイの問いに、二人がぎくりと目を丸くする。
「そうだな・・・そういえば聞いてなかったな。俺たちも話すから、お前たちも話してくれ。これから一緒に旅をするんだ、隠し事は無しにしよう」
星喇が真剣な眼差しで言う。
―萊兎・・・
暖香は俯いた萊兎の顔を見た。唇を固く噛んでいた。
「あ、あの、萊兎・・・」
「いえ、大丈夫です。話します」
萊兎がまたほほ笑む。少し無理して笑ってるようにも見えた。
「だけど、知っても今更私を追い出したりしないでくださいよ?」
「・・・・・・当たり前だ」
今度はロンレイが言う。萊兎は決心をしたようにまた笑った。
少し、自嘲的な笑みにも見えた。
「率直に言うと・・・、私、“魔人”の末裔なんです」
「ま・・・魔人?あの、昔とてつもなく膨大な量の魔力を持った上、さらに世界の魔力を支配したっていう」
星喇がオウム返しに言葉を加えて聞いた。
「は、はい。だから私は―・・・、人ではありません」
その場に、何とも言えない空気が流れた。
「えっと・・・魔人ってたしか、魔力の塊みたいなものなんだよね?」
紋太が聞いた。
「はい、そうです。だから私はあまり魔法を使えなくて」
「じゃあ、俺たちが萊兎のぶんも頑張らなくちゃな」
そう言って、萊兎の頭の上にぽん、と手を置いた。
「萊兎、俺たちはそんあことで今更追い出したりしないよ。もしも、萊兎が森の中で見つけた、まだ一言も会話をしてない赤の他人だったら話は別だけど。でも、萊兎はもうそんなつながりのない人なんかじゃないじゃん。俺たちはもう、萊兎の明るさも、優しさも、賢さも、前向きでいつも笑っていようとする心も、知ってしまったんだよ」
―お兄ちゃん。変わったな
暖香は萊兎の揺れる瞳をまっすぐに見つめて言う紋太の言葉に、そんなことを思っていた。きっと、昔の紋太だったら、他人の事をよく見て居うるようで実はそうでもなくて、こういうときに萊兎のいいところもすぱすぱ出てこなかっただろう。
「じゃあ、萊兎は魔人の末裔だからという理由で家を追い出されたんだな?」
ロンレイが念を押した。
「はい・・・」
「まったく、理解できねえよ」
「私もでていきたくなかったんですけど・・・。無理やり追い出されて」
「?無理やり?」
星喇が怪訝そうな顔をする。
「はい、そうです。なんか、暖香さんのお母さんの使用魔類が“消去”っていうので、それで・・・」
「魔法で追い出されたってわけか」
暗い、闇のような声が小屋の中に籠り、消えていく。
「なんなんだよ・・・。いつからこんな・・・、クソみたいな・・・」
星喇はテーブルの上で拳を固く握り、憎しみと悲しみが混ざった声で言った。
「・・・星喇?」
「星喇、なんなら今、俺らも話すか?―俺らのこと」
ロンレイが言うと、顔を少し上げて頷いた。
「ちょっと長くなるけど・・・聞いてくれるか?」
全員が、緊張した面持ちで頷く。
外では、止まない雨が、木々の葉を揺らしていた。




