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第六十一話 煙

【土曜日 10:57/西柵】


 相沢達は西側へ走っていた。


 村人達も不安そうに続く。


「どこだ!」


 ガンツが叫ぶ。


 見張りが森奥を指差した。


「あそこ!」


 全員が見る。


 遠く。


 黒い煙。


 細い。


 だが確かに上がっていた。


     ◇


【土曜日 10:59/西柵】


 相沢は目を細める。


 距離。


 風向き。


 煙量。


 考える。


「村か?」


 ミナが小声で言う。


 相沢は即答できなかった。


 ただ。


 嫌な予感は強い。


 その時。



【煙源:

 継続燃焼を確認】



「確認すんなそんなの……」


「何だ?」


「オカンが嫌な報告してきた」


「本当に便利なのかそれ」


     ◇


【土曜日 11:03/西柵前】


 ガンツが腕を組む。


「確認行くか」


 空気が重くなる。


 危険だった。


 今の森は。


 完全に敵側。


 だが。


 放置も出来ない。


 相沢は少し考える。


「少人数だな」


「俺もそう思う」


「あと、

 戻る時間を決める」


 ガンツが頷く。


「戻らねぇ奴出ると崩れる」


 完全に今の村はギリギリだった。


     ◇


【土曜日 11:08/広場中央】


 簡単な編成が決まる。


【ガンツ】

【若い見張り一名】

【相沢】


 ミナが即座に言った。


「私も行く」


「駄目だ」


 相沢が即答する。


「何で!」


「村回す側がいるだろ」


「でも――」


「今、

 全員前に出る方が危ない」


 ミナが悔しそうに黙る。


 だが。


 理解はしていた。


     ◇


【土曜日 11:14/広場端】


 相沢はリュックを確認する。


 LEDライト。


 水。


 携帯食。


 結束バンド。


 カッター。


 持てる物は限られていた。


 ガンツが横を見る。


「毎回思うが、

 変な袋だな」


「便利だからな」


「その灯りも持つのか」


「一応」


 相沢は少し考える。


 現代なら。


 ホームセンターで済む。


 でも。


 ここでは全部貴重だった。


     ◇


【土曜日 11:19/西門前】


 出発前。


 村長が低く言う。


「無理はなさらず」


「無理しかない状況ですけどね」


 相沢は苦笑する。


 その時。



【警告】


【単独行動リスク:上昇】


【帰還優先を推奨】



「分かってる」


 相沢は小さく返した。


 ガンツが嫌そうな顔をする。


「最近本当に慣れてきたな」


「オカンだからな」


「怖ぇよ」


     ◇


【土曜日 11:24/森入口】


 森は静かだった。


 静か過ぎた。


 ガンツが槍を握る。


「……行くぞ」


 相沢も森を見る。


 煙はまだ上がっている。


 嫌な予感は。


 全く消えなかった。

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