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第六十話 火への備え

【土曜日 10:14/広場中央】


 空気が変わっていた。


 火。


 その情報は重かった。


 村人達もざわついている。


「燃やされるって……」


「どうやって……」


 恐怖が広がる。


 相沢は地面へ座った。


 考える。


 優先順位。


 今すぐ必要な物。


     ◇


【土曜日 10:19/広場中央】


「まず火の対策をする」


 相沢が言う。


 皆が見る。


「倉庫周りの水増やす」


「火台は整理」


「燃える物まとめるな」


 村長が頷く。


「延焼防止ですな」


「そうです」


 相沢は地面へ簡単な図を書く。


【火】

【広がる前に切る】


「全部守ろうとすると終わる」


 ミナが少し顔をしかめる。


「また現実的」


「現場だからな」


     ◇


【土曜日 10:26/倉庫前】


 水桶が並べられていく。


 若い村人達が走る。


「もっとこっち!」


「運べ!」


 以前より動きが速い。


 誰が何するか。


 少しずつ回り始めていた。


 相沢はその様子を見る。


 その時。



【作業連携:向上】



「お前、

 現場好きだろ絶対」


 小さく呟く。


 ミナが横を見る。


「また会話してる」


「オカンが褒めてきた」


「最近ちょっと慣れてきたの嫌」


     ◇


【土曜日 10:33/東柵】


 ガンツが森を睨んでいた。


「火か……」


「嫌だろ」


「かなりな」


 木の柵。


 乾いた縄。


 全部燃える。


 相沢は支柱を見る。


「夜襲で火投げられたらキツい」


「防げるか?」


「完全は無理だな」


 相沢は即答した。


「だから、

 燃えても回るようにする」


 ガンツが少し黙る。


 それから笑った。


「お前、

 本当に回す事しか考えてねぇな」


「止まる方が怖い」


 本音だった。


     ◇


【土曜日 10:41/簡易小屋】


 男がまた目を開ける。


 今度は少し意識がはっきりしていた。


「水です」


 リリアが渡す。


 男は震える手で飲む。


 それから。


 相沢を見る。


「……ここ、

 まだ無事なのか」


「今のところは」


 男の顔が歪む。


「無理だ……」


「何が」


「赤いの、

 普通じゃない」


 呼吸が荒くなる。


「火を投げる……

 叫ぶ……

 群れが動く……」


 ガンツが顔をしかめる。


「片目の上か?」


 男が震えながら頷く。


「赤いのが来てから、

 全部変わった……」


 静かになる。


 かなり重要な情報だった。


     ◇


【土曜日 10:49/簡易小屋前】


 相沢は外へ出る。


 空を見る。


 朝。


 なのに重い。


 その時。



【新規脅威:

 指揮個体の可能性】


【脅威評価:上昇】



「お前、

 本当に悪い知らせ好きだな……」


 本当に。


 このシステムは、

 不安を増やす時だけ仕事が早かった。


     ◇


【土曜日 10:56/広場中央】


 ミナが走ってくる。


「回し屋!」


「何だ」


「西側の見張り、

 煙見えたって!」


 空気が止まる。


 相沢とガンツが同時に顔を上げた。


「……煙?」


 嫌な予感しかしなかった。

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