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第五十九話 止まらないために

【土曜日 09:31/広場中央】


 空気が重かった。


 赤い個体。


 他村の崩壊。


 監視。


 嫌な情報ばかり増えていく。


 若い村人達も明らかに不安そうだった。


「……大丈夫なんですかね」


 誰かが小さく漏らす。


 その声。


 広場全体が聞いていた。


     ◇


【土曜日 09:36/広場中央】


 相沢は地面へ座る。


 メモ帳を開く。


 それから。


 淡々と言った。


「まず、

 今すぐ全部終わる状況じゃない」


 皆が少し顔を上げる。


「東柵は持ってる。

 排水も改善してる。

 交代も回り始めてる」


 指差す。


 一つずつ。


「崩壊寸前からは戻した」


 ガンツが腕を組む。


「……まぁ、

 それはそうだな」


 相沢は続ける。


「だから次」


 紙へ書く。


【索敵】

【補給】

【休息】


「戦うだけじゃ詰む」


 かなり現実的だった。


     ◇


【土曜日 09:42/広場】


 ミナが顔をしかめる。


「索敵って?」


「見る役」


「見るだけ?」


「かなり大事」


 相沢は森を見る。


「敵が来る時間、

 数、

 動き」


 線を書く。


「分かるだけで、

 休める時間も変わる」


「あ……」


 ミナが少し止まる。


 今までは。


 来るまで怯えていた。


 でも。


 見えるなら準備出来る。


     ◇


【土曜日 09:48/東柵】


 ガンツが数人へ指示を出していた。


「二人一組。

 深追いすんな」


 索敵班。


 新しく作った。


 相沢は少し見る。


 以前なら。


 全部ガンツ一人で抱えていた。


 今は違う。


 少しずつ回り始めている。


 その時。



【役割分担:改善】


【持続性:上昇】



「……お前、

 褒める時だけ静かだな」


 相沢が小声で言う。


 ミナが聞く。


「また会話してる」


「オカンだからな」


「便利なのか怖いのか分かんない」


     ◇


【土曜日 09:55/簡易小屋】


 男が少しだけ目を開けた。


 リリアが気づく。


「アイザワ殿」


 相沢が入る。


 男はまだ苦しそうだった。


 だが。


 少しだけ意識がある。


「……ここ、は」


「村だ」


 男が周囲を見る。


 それから。


 怯えた顔になった。


「逃げろ……」


 小さい声だった。


「赤いのが来る……」


 相沢は目を細める。


「何なんだ、

 あいつ」


 男の喉が震える。


「速い……

 強い……

 火を……」


 そこで咳き込む。


 血。


 リリアが慌てる。


「無理に喋らないでください!」


 だが。


 男は震えながら続けた。


「村が……

 燃やされた……」


 静かになる。


 相沢は少し黙る。


 火。


 つまり。


 赤い個体は。


 ただ強いだけじゃない。


 使っている。


     ◇


【土曜日 10:03/簡易小屋前】


 相沢が出てくる。


 ガンツが待っていた。


「どうだった」


「最悪寄り」


 相沢は即答する。


「火を使う可能性ある」


 ガンツの顔が変わる。


「……は?」


「あいつの村が焼かれてる」


 数秒。


 沈黙。


 それからガンツが低く吐き捨てた。


「クソが」


 相沢も同意だった。


 本当に。


 どんどん嫌な方向へ進んでいた。

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