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第五十七話 外から来た男

【土曜日 08:12/東柵前】


「下がれ!」


 ガンツが即座に槍を構える。


 村人達も緊張した顔で距離を取った。


 倒れた男は動かない。


 ボロボロだった。


 服は裂け。


 泥だらけ。


 左腕には深い傷。


 かなり酷い。


「……生きてるか?」


 若い見張りが小声で言う。


 相沢は目を細める。


 近づく。


 だが。


 油断はしない。


 片目ゴブリン。


 あいつがいる。


 今は全部疑うべきだった。


     ◇


【土曜日 08:14/東柵前】


 相沢は男を見る。


 呼吸。


 浅い。


 熱もある。


 それから。


 視界の端。



【対象:人間】


【衰弱:高】


【失血状態】


【緊急処置推奨】



「……人間判定まで出るのか」


「何だ?」


「いや何でもない」


 相沢は男の荷物を見る。


 小袋。


 短剣。


 水筒。


 かなり少ない。


 逃げてきた感じだった。


     ◇


【土曜日 08:17/東柵内側】


「入れるのか?」


 ガンツが低く聞く。


 警戒していた。


 当然だった。


「罠かもしれねぇぞ」


「ああ」


 相沢も否定しない。


 だが。


 男の状態を見る。


 長く持たない。


「リリアさん」


「はい」


「助けられますか」


 リリアは傷を見る。


 表情が曇る。


「早くしないと危ないです」


 ミナが不安そうに言う。


「どうするの」


 相沢は少し黙る。


 その時。



【推奨:

 隔離・治療並行】



「お前、

 マジでオカンだな……」


「は?」


「いや独り言」


     ◇


【土曜日 08:20/広場端】


 男は簡易小屋へ運ばれた。


 完全には中へ入れない。


 まず隔離。


 相沢の判断だった。


「見張りを付ける」


 ガンツが頷く。


「俺がやる」


「頼む」


 相沢は男の装備を見る。


 粗末。


 だが。


 村より少し良い作り。


 別集落。


 その可能性が高かった。


     ◇


【土曜日 08:27/簡易小屋】


 リリアが傷を洗っていた。


 男が苦しそうに呻く。


「……ゴブ……」


 全員の空気が変わる。


 男は震えながら続ける。


「赤……赤い……」


「赤?」


 ミナが顔をしかめる。


 相沢は目を細めた。


 嫌な予感。


 また強くなる。


「それ、

 ゴブリンか?」


 男は薄く目を開ける。


 焦点が合っていない。


「村が……

 燃え……」


 そこで意識が落ちた。


 静かになる。


 誰もすぐには喋れなかった。


     ◇


【土曜日 08:34/広場中央】


 ガンツが低く言う。


「……嫌な話だな」


「ああ」


 相沢はメモ帳を閉じる。


 長期戦。


 学習。


 統率。


 そして。


 他の村の崩壊。


 全部繋がり始めていた。


 その時。



【警告】


【周辺脅威拡大の可能性】



「お前、

 マジで空気読まねぇな……」


 本当に。


 このシステムは、

 悪い報告だけ妙に早かった。

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