第五十四話 回し続けろ
【土曜日 06:02/東柵】
丸太が再び激突する。
鈍い衝撃。
だが。
今度は耐えた。
斜め支柱。
縄固定。
負荷分散。
全部効いている。
「持ってる!」
「まだいける!」
村人達の声が変わる。
恐怖だけじゃない。
踏ん張れていた。
◇
【土曜日 06:05/東柵内側】
相沢は柵へ手を当てる。
揺れ。
軋み。
耐久。
まだ危ない。
でも。
崩壊寸前ではなくなった。
その時。
⸻
【東柵耐久:安定化傾向】
⸻
「珍しく褒めたな」
小さく呟く。
ミナが聞く。
「また?」
「オカンが褒めてきた」
「本当に何言ってるの」
◇
【土曜日 06:11/東柵外】
片目ゴブリンが低く唸る。
すると。
ゴブリン達がまた動く。
「まだ来る!」
若い見張りが叫ぶ。
だが。
今回は違った。
前へ出ない。
石。
投げてくる。
「うおっ!?」
「石!?」
村人達が慌てて伏せる。
相沢は眉をしかめた。
「嫌な方向に進化してんな……」
完全に。
試している。
どれが効くか。
◇
【土曜日 06:16/東柵】
ガンツが舌打ちする。
「チマチマしやがって」
「でも前より厄介だ」
「ああ」
相沢は周囲を見る。
疲労が溜まっている。
特に若い見張り。
恐怖と緊張で顔色が悪い。
その時。
⸻
【対象:見張り二名】
【集中低下】
【交代推奨】
⸻
「おい、
そこの二人下がれ」
「え?」
「交代だ」
「でも――」
「今だ」
相沢が低く言う。
「崩れる前に休め」
二人は少し迷う。
だが。
ガンツが頷いた。
「行け」
ようやく下がる。
相沢は小さく息を吐いた。
◇
【土曜日 06:22/東柵裏】
ミナが水桶を運んでいた。
相沢は一本受け取る。
「助かる」
「珍しいわね」
「何が」
「ちゃんと頼った」
相沢は少し止まる。
それから。
「……回らなくなるからな」
「前なら一人でやってた?」
「多分」
ミナが少し笑う。
「進歩じゃん」
相沢は苦い顔をする。
七瀬にも。
似たような事を言われた気がした。
◇
【土曜日 06:31/東柵】
朝日が少し差し始める。
森が見える。
そして。
ゴブリン達も。
片目ゴブリンは後方。
こちらを見ている。
相沢は目を細めた。
「……お前、
本当に嫌なタイプだな」
すると。
片目ゴブリンが口を歪めた。
笑ったように見えた。
「は?」
次の瞬間。
ゴブリン達が一斉に下がる。
森奥へ。
消える。
ガンツが槍を構えたまま呟く。
「……終わりか?」
「いや」
相沢は即答した。
「あれ、
次考えてる」
空気が重くなる。
長期戦。
その言葉が。
また現実味を帯びていた。




