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第五十一話 抱え込み

【土曜日 03:26/広場中央】


 結局。


 相沢はまた動いていた。


 東柵確認。


 火台位置。


 見張り交代。


 倉庫補強。


 怪我人確認。


 全部。


 止める訳にはいかなかった。


     ◇


【土曜日 03:31/倉庫前】


 結束バンド。


 木材。


 濡れた棚。


 相沢は黙々と固定していた。


 その横で。


 ミナが呆れた顔をしている。


「……本当に休まないね」


「後で寝る」


「それ昨日も言ってた」


 相沢は少し止まる。


「昨日?」


「感覚」


「紛らわしいな」


 ミナはため息を吐く。


「回し屋って、

 自分だけ雑だよね」


「何が」


「他人には休めって言うのに」


 図星だった。


 相沢は答えない。


     ◇


【土曜日 03:38/倉庫裏】


 排水溝。


 少しずつ水が流れている。


 リリアが驚いた顔をしていた。


「本当に違いますね……」


「水残ると腐るから」


「腐る?」


「食料も木も」


 リリアは静かに周囲を見る。


 今まで。


 駄目になるのは仕方ないと思っていた。


 でも。


 防げる物もある。


 相沢はそれを知っている。


「回し屋殿の世界は、

 凄いのですね」


「いや」


 相沢は即答する。


「単に、

 問題起き過ぎて対策増えただけです」


 妙に説得力があった。


     ◇


【土曜日 03:44/広場中央】


 相沢はメモ帳へ追加していた。


・排水強化

・倉庫底上げ

・火台固定

・夜間照明代替


 どんどん増える。


 終わらない。


 その時。



【精神負荷:上昇】


【休息不足:継続】


【単独負担集中】



「……だから、

 うるさいって」


 小声で返す。


 ミナが横から見る。


「またオカン?」


「もうその認識でいい」


「何それ」


 相沢は少し笑う。


 疲れている時ほど。


 この表示は増える。


 まるで。


 本当に倒れる直前だけは止めたいみたいに。


     ◇


【土曜日 03:52/東柵】


 ガンツが槍を研いでいた。


「どうだ」


 相沢が聞く。


「今んとこ静かだ」


 だが。


 表情は悪い。


「あの片目、

 嫌だな」


「ああ」


 ガンツは森を見る。


「前の連中と違う」


「考えてる」


「だよな」


 相沢は柵へ寄りかかる。


 眠い。


 頭が鈍い。


 その時。


 視界の端。



【睡眠不足:危険域】


【判断精度低下リスク】



「……」


 相沢は数秒黙る。


 ガンツが見る。


「何だ」


「いや」


 相沢は小さく息を吐いた。


「ちょっと寝る」


 ガンツが目を丸くする。


「お前が?」


「うるさい」


「珍しいな」


「オカンがうるせぇ」


「意味が分からん」


 相沢は壁へ背を預ける。


 本当はまだ動ける。


 でも。


 少しだけ。


 この妙に世話焼きな表示へ従ってみる事にした。

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