第五十話 長期戦
【土曜日 02:46/東柵】
森は再び静かになっていた。
だが。
誰も安心していない。
村人達は槍を握ったまま。
暗闇を睨んでいた。
「……何で下がった」
若い見張りが震えた声で言う。
「分からん」
ガンツが低く返す。
だが。
皆、感じていた。
今までと違う。
前のゴブリンは。
もっと雑だった。
もっと勢いだけだった。
でも。
今のは。
“様子を見ていた”。
◇
【土曜日 02:49/東柵内側】
相沢はLEDライトを消す。
白い光が消え。
再び火だけの世界へ戻る。
「……あれ効き過ぎだな」
「何なんだそれ本当に」
ガンツが言う。
「灯り」
「そこじゃねぇ」
相沢は森を見る。
片目ゴブリン。
あれが厄介だった。
前へ出ない。
死なない。
観察している。
かなり嫌なタイプ。
その時。
視界の端。
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【推奨:
統率個体への警戒強化】
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「だから説明増やすなって……」
相沢は疲れた顔をした。
◇
【土曜日 02:54/広場中央】
村長も来ていた。
顔色が悪い。
「被害は」
「軽傷二です」
リリアが答える。
「大きな怪我はありません」
少し空気が緩む。
だが。
相沢は緩まなかった。
「……短期戦じゃ終わらない」
その一言で。
広場が静かになる。
ミナが顔をしかめた。
「それ、
聞きたくないやつ」
「俺も言いたくない」
相沢は東を見る。
「でもあいつ、
学び始めてる」
ガンツが舌打ちする。
「クソだな」
「かなり」
相沢は続ける。
「正面突破で削れるって理解した。
だから下がった」
村長が重く息を吐く。
「つまり……」
「消耗戦になる」
空気が冷える。
今の村で。
それは最悪だった。
◇
【土曜日 03:02/広場】
相沢はメモ帳を開く。
「前提を変える」
皆が集まる。
「今までは、
“防ぐ”だった」
「これからは、
村を止めない方が重要」
ミナが少し止まる。
「……止めない?」
「全員限界まで戦うと終わる」
相沢は村を見る。
「飯。
睡眠。
交代。
修理。
見張り」
一つずつ数える。
「全部回す」
それは。
戦争というより。
完全に現場維持だった。
◇
【土曜日 03:11/広場端】
ガンツが座り込む。
「面倒だな」
「現場は大体面倒だ」
「お前の世界もか」
「ああ」
相沢は少し笑う。
「人足りないのに、
問題は増える」
「最悪だな」
「かなり」
ガンツが少し笑う。
疲れた笑いだった。
◇
【土曜日 03:18/広場中央】
相沢は再びメモ帳を見る。
必要な物。
足りない物。
優先順位。
全部増えていく。
その時。
視界の端。
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【精神負荷:上昇】
【単独負担集中を警告】
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「……はいはい」
相沢は雑に返す。
ミナが横から覗く。
「また変なの出てる?」
「オカン」
「は?」
「いや何でもない」
本当に。
最近のシステムは、
妙に世話焼きだった。




