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第四十六話 再編成

【土曜日 00:24/広場中央】


「まず状況整理する」


 相沢が言う。


 その瞬間。


 広場の空気が少し変わった。


 皆、疲れている。


 でも。


 “誰が回すか”


が戻っただけで違った。


「ガンツ」


「おう」


「今、一番危ない場所は」


「東柵」


 即答だった。


「西もキツいが、

 東は押された回数が多い」


「火台は」


「一応維持してる」


 相沢は頷く。


 次。


「リリアさん」


「はい」


「怪我人は」


「重傷三。

 軽傷多数です」


「寝れてます?」


 リリアが少し黙る。


「……ほぼ」


「寝てないなそれ」


 図星だった。


     ◇


【土曜日 00:28/広場】


 相沢は地面へ簡単な図を書く。


 村。


 倉庫。


 東西柵。


 火台。


「今からやるのは三つ」


 皆が集まる。


「休息」


「防衛維持」


「倉庫保全」


 短く。


 必要だけ。


「全部同時にやる」


 ミナが嫌そうな顔をした。


「絶対面倒なやつ」


「当たり前だろ」


 相沢は図を指す。


「まず、

 寝れてない奴から落ちる」


 ガンツが頷く。


「……分かる」


「だから交代制を固定する」


 その瞬間。


 若い村人達が少しざわつく。


「固定?」


「毎回決めるんじゃなくて?」


「そう」


 相沢は続ける。


「揉める時間が無駄」


 全員少し黙る。


 それは。


 この数日で痛いほど分かっていた。


     ◇


【土曜日 00:35/広場中央】


 相沢はリュックを漁る。


 取り出したのは。


 メモ帳。


 油性ペン。


「何だそれ」


「記録」


 紙へ線を書く。


【東】

【西】

【休憩】

【火台】

【治療】


 簡単な担当表だった。


 ミナが目を丸くする。


「……見える」


「当たり前だろ」


「いや、

 何か急に賢そう」


「失礼だな」


 相沢は淡々と続ける。


「誰が今どこいるか、

 見えるようにする」


 その瞬間。


 村長が小さく息を漏らした。


「……なるほど」


 今まで。


 全部頭で回していた。


 だから崩れた。


 見える化。


 それだけで違う。


     ◇


【土曜日 00:42/倉庫前】


 相沢は結束バンドを持っていた。


「……何ですかなそれ」


「固定具です」


「ひも?」


「もっと便利だ」


 折れかけた棚。


 木材。


 結束バンド。


 締める。


 固定。


「うわ」


 ミナが引く。


「何その速度!」


「現場は速さ」


 さらに固定。


 補強。


 ガンツが棚を揺らす。


「……おお」


「とりあえず応急だけな」


 相沢は周囲を見る。


 濡れている。


 床も危ない。


「やっぱブルーシート欲しいな……」


「だから何なのそれ」


 ミナが言う。


 相沢は少し考える。


「神」


「絶対違う」


     ◇


【土曜日 00:51/東柵】


 見張りが交代する。


 今までより静かだった。


 混乱が少ない。


「次、一刻な」


「終わったら休め」


 声が飛ぶ。


 若い見張りが少し驚いた顔をする。


「……ちゃんと休んでいいんですか」


 相沢は眉をしかめる。


「休め。

 倒れる方が迷惑だ」


 若い見張りが少し笑う。


「回し屋っぽい」


「うるさい」


 だが。


 その顔は少し安心していた。


     ◇


【土曜日 01:03/広場中央】


 火が揺れる。


 相沢はその前へ座っていた。


 疲れていた。


 現代。


 異世界。


 どっちも限界近い。


 その時。


 ミナが隣へ座る。


「……おかえり」


 小さい声だった。


 相沢は少し止まる。


「ただいま?」


「疑問形やめて」


 ミナは少し笑う。


 本当に少しだけ。


 それから。


 焚き火を見る。


「正直、

 かなりヤバかった」


「ああ」


「皆、

 頭回んなくなってた」


 相沢は火を見る。


 分かる。


 現代でも同じだった。


 余裕が消えると。


 人は考えられなくなる。


 その時。


 視界の端。



【休息推奨】



「……分かったから」


 相沢は小さく呟いた。

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