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第四十五話 回し屋、帰還

【土曜日 00:00/異世界・広場】


 白い光が弾ける。


 次の瞬間。


 相沢は地面へ着地していた。


「っ……」


 土。


 冷たい空気。


 焚き火の匂い。


 数日ぶりだった。


 そして。


 広場の空気がおかしい。


 疲労。


 焦燥。


 張り詰めた緊張。


 全部混ざっている。


「――回し屋!!」


 最初に叫んだのはミナだった。


 勢いよく立ち上がる。


「え」


 相沢は少し止まる。


 次の瞬間。


 周囲が一気に動いた。


「回し屋だ!」


「戻った!」


「アイザワ殿!!」


 ガンツまで走ってくる。


 その顔を見て。


 相沢はすぐ理解した。


 かなりヤバかった。


     ◇


【土曜日 00:03/広場中央】


「何があった」


 相沢が即座に聞く。


 空気が切り替わる。


 ミナが答える。


「ゴブリン」


「数増えた!」


「倉庫崩れた!」


「怪我人も!」


「西抜かれかけた!」


 情報が飛ぶ。


 相沢は目を細める。


 疲労で整理されていない。


 だが。


 断片だけで十分だった。


 かなり崩れかけている。


 その時。


 視界の端。



【村全体疲労:高】


【防衛持久:低下】


【推奨:再配置】



「……うわ」


 思わず漏れる。


 本当にゲームみたいになってきた。


     ◇


【土曜日 00:05/広場】


 相沢は周囲を見る。


 火台。


 見張り。


 怪我人。


 倉庫。


 歩くだけで分かる。


 皆、限界近い。


 でも。


 完全には崩れていない。


 そこで気づく。


「……誰が回した」


 ミナ達が少し止まる。


 ガンツが頭を掻いた。


「いや……

 皆で何とか」


 相沢は少し黙る。


 それから。


 広場を見る。


 火の配置。


 怪我人の分離。


 見張り交代。


 かなり荒い。


 でも。


 確かに、


“考えた跡”


があった。


 相沢は小さく息を吐く。


「……上出来だ」


 その瞬間。


 ミナが座り込みそうになる。


「うわ」


「お、おい」


「無理。

 今ので力抜けた」


 半泣きだった。


     ◇


【土曜日 00:09/倉庫前】


 相沢は崩れた棚を見る。


 濡れた保存袋。


 泥。


 歪んだ木材。


「南側沈んだのか」


「雨で」


 リリアが答える。


「完全崩壊は避けましたが、

 かなり失いました」


 相沢は床を確認する。


 湿り。


 排水不足。


 荷重集中。


 原因は見えた。


「……ブルーシート欲しいな」


「ぶるー?」


「いや何でもない」


 完全に現代感覚だった。


     ◇


【土曜日 00:13/広場】


 相沢はリュックを下ろす。


 その瞬間。


 村人達の視線が集まった。


「……何だそれ」


 ガンツが言う。


「荷物」


「見れば分かる」


 相沢はリュックを開ける。


 LEDライト。


 結束バンド。


 携帯食。


 水。


 タオル。


 カッターナイフ。


 見慣れない物ばかりだった。


 ミナが嫌そうな顔をする。


「回し屋がそう言う時、

 大体ろくでもない」


「偏見だろ」


 相沢はLEDライトを取り出す。


 スイッチ。


 白い光。


「うわっ!?」


「何それ!?」


 村人達が一斉に下がる。


 ガンツまで目を見開いた。


「火じゃねぇのか!?」


「電池」


「意味分かんねぇ」


 相沢は少しだけ口元を緩める。


 数日ぶりだった。


 この反応。


     ◇


【土曜日 00:17/広場中央】


 村長がゆっくり近づいてくる。


 かなり疲れた顔だった。


「……お帰りなさいませ、

 アイザワ殿」


 相沢は少し頭を下げる。


「遅くなりました」


 村長は静かに笑う。


「ええ。

 本当に」


 その声。


 かなり実感が籠もっていた。


 相沢は周囲を見る。


 疲弊した村。


 でも。


 崩れてはいない。


 皆、ちゃんと考えていた。


 だから。


 少しだけ安心する。


 その時。


 視界の端。



【最優先推奨:

 休息・再編成・防衛再構築】



「……はいはい」


 相沢は疲れた顔で呟く。


「結局、

 休ませてくれないんだな」

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