第四十二話 繋ぐ
【金曜日 13:38/東柵】
咆哮。
森が揺れる。
ゴブリン達が再び前へ出る。
「来る!」
ガンツが槍を構える。
だが。
今度は少し違った。
「左下がれ!」
「槍交代!」
「火こっち!」
村人達が動く。
まだぎこちない。
でも。
さっきより繋がっていた。
ガンツは一瞬だけ目を見開く。
回っている。
完全じゃない。
でも。
止まっていない。
◇
【金曜日 13:42/広場】
「水は治療を優先!」
ミナが叫ぶ。
「倉庫後回し!」
「でも保存食が!」
「今崩れない方優先!」
苦しい。
胃が痛い。
でも。
決める。
止まる方が危ない。
その時。
若い村人が走ってくる。
「ミナ!」
「何!」
「東側、火維持できそう!」
ミナが一瞬止まる。
出来る。
少しずつ。
皆、自分で動き始めている。
◇
【金曜日 13:47/治療場所】
リリアは包帯を巻いていた。
手が震える。
疲労だった。
だが。
止めない。
「次」
「はい!」
周囲も動く。
若い女達が湯を運ぶ。
軽傷者が別の怪我人を支える。
前なら。
全部リリアへ集中していた。
でも今は違う。
皆、
“次に何が必要か”
を考え始めている。
その時。
若い女が言う。
「リリアさん、
こっちは見ます!」
リリアが顔を上げる。
「……できますか」
「やります!」
不格好だった。
でも。
前へ進んでいた。
◇
【金曜日 13:53/森外れ】
片目の大柄ゴブリンが動かない。
片目で村を見る。
違和感。
崩れ切らない。
疲れている。
弱っている。
でも。
折れない。
その時。
東側。
火が再び強くなる。
視界が戻る。
さらに。
槍列も立て直される。
片目ゴブリンが低く唸る。
気に入らない。
崩れる寸前だったはずだ。
◇
【金曜日 13:58/広場中央】
村長が座ったまま笑う。
疲れ切った顔で。
「……少し、
似てきましたな」
ガンツが鼻を鳴らす。
「誰にだよ」
「アイザワ殿にです」
ミナが嫌そうな顔をする。
「嫌だなぁそれ」
「何でですかな」
「胃痛くなりそう」
ガンツが吹き出す。
短く。
本当に短く。
でも。
その空気で少しだけ張り詰めたものが緩む。
その時。
東側から声。
「押し返したぞ!!」
一瞬。
広場の空気が変わった。
勝ったわけじゃない。
終わってもいない。
でも。
まだやれる。
皆、少しだけそう思った。
◇
【金曜日 14:06/東柵】
ガンツが槍を下ろす。
息が荒い。
全身重い。
だが。
ゴブリン達は少し引いていた。
「……下がったか」
その時。
森奥。
片目の大柄ゴブリンがこちらを見ていた。
片目だけ細い。
怒っているようにも見える。
そして。
ゆっくり森奥へ消えていった。
ガンツは嫌な汗を拭う。
「……終わってねぇな」
直感だった。
あれは。
諦めた顔じゃない。




