表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/110

第四十二話 繋ぐ

【金曜日 13:38/東柵】


 咆哮。


 森が揺れる。


 ゴブリン達が再び前へ出る。


「来る!」


 ガンツが槍を構える。


 だが。


 今度は少し違った。


「左下がれ!」


「槍交代!」


「火こっち!」


 村人達が動く。


 まだぎこちない。


 でも。


 さっきより繋がっていた。


 ガンツは一瞬だけ目を見開く。


 回っている。


 完全じゃない。


 でも。


 止まっていない。


     ◇


【金曜日 13:42/広場】


「水は治療を優先!」


 ミナが叫ぶ。


「倉庫後回し!」


「でも保存食が!」


「今崩れない方優先!」


 苦しい。


 胃が痛い。


 でも。


 決める。


 止まる方が危ない。


 その時。


 若い村人が走ってくる。


「ミナ!」


「何!」


「東側、火維持できそう!」


 ミナが一瞬止まる。


 出来る。


 少しずつ。


 皆、自分で動き始めている。


     ◇


【金曜日 13:47/治療場所】


 リリアは包帯を巻いていた。


 手が震える。


 疲労だった。


 だが。


 止めない。


「次」


「はい!」


 周囲も動く。


 若い女達が湯を運ぶ。


 軽傷者が別の怪我人を支える。


 前なら。


 全部リリアへ集中していた。


 でも今は違う。


 皆、


“次に何が必要か”


を考え始めている。


 その時。


 若い女が言う。


「リリアさん、

 こっちは見ます!」


 リリアが顔を上げる。


「……できますか」


「やります!」


 不格好だった。


 でも。


 前へ進んでいた。


     ◇


【金曜日 13:53/森外れ】


 片目の大柄ゴブリンが動かない。


 片目で村を見る。


 違和感。


 崩れ切らない。


 疲れている。


 弱っている。


 でも。


 折れない。


 その時。


 東側。


 火が再び強くなる。


 視界が戻る。


 さらに。


 槍列も立て直される。


 片目ゴブリンが低く唸る。


 気に入らない。


 崩れる寸前だったはずだ。


     ◇


【金曜日 13:58/広場中央】


 村長が座ったまま笑う。


 疲れ切った顔で。


「……少し、

 似てきましたな」


 ガンツが鼻を鳴らす。


「誰にだよ」


「アイザワ殿にです」


 ミナが嫌そうな顔をする。


「嫌だなぁそれ」


「何でですかな」


「胃痛くなりそう」


 ガンツが吹き出す。


 短く。


 本当に短く。


 でも。


 その空気で少しだけ張り詰めたものが緩む。


 その時。


 東側から声。


「押し返したぞ!!」


 一瞬。


 広場の空気が変わった。


 勝ったわけじゃない。


 終わってもいない。


 でも。


 まだやれる。


 皆、少しだけそう思った。


     ◇


【金曜日 14:06/東柵】


 ガンツが槍を下ろす。


 息が荒い。


 全身重い。


 だが。


 ゴブリン達は少し引いていた。


「……下がったか」


 その時。


 森奥。


 片目の大柄ゴブリンがこちらを見ていた。


 片目だけ細い。


 怒っているようにも見える。


 そして。


 ゆっくり森奥へ消えていった。


 ガンツは嫌な汗を拭う。


「……終わってねぇな」


 直感だった。


 あれは。


 諦めた顔じゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ