第百五話 赤のあと
【日曜日 5:18/広場中央】
夜は明けた。
何度も火を見た。
何度も水を見た。
何度も森を見た。
赤の声は、戻らなかった。
それでも、誰もよく眠れていない。
広場の火は小さい。
水桶は決めた場所にある。
板には、夜の印がまだ残っている。
火。
水。
呼ぶ。
誰。
どこ。
何。
その端に、小さな点。
ミナだけが意味を知っている点。
戻る場所。
朝の光が、その点を薄く照らした。
ミナは木炭を持った。
手は重い。
指先は黒く汚れている。
喉も痛い。
泣きすぎたせいか。
叫びすぎたせいか。
どちらでもあった。
「朝にする」
ミナが言う。
呼ぶ役が頷いた。
「朝にする」
ミナは夜の板の下に、新しく描いた。
人。
水。
食料。
仕事。
休む人。
いつもの五つ。
それだけで、昨日より重かった。
人は減っていない。
でも、いない人がいる。
水はある。
でも、いつもより重い。
食料は少ない。
仕事は増えた。
休む人も増えた。
ミナは食料の印で手を止めた。
濃くしたくなる。
囲みたくなる。
でも、しない。
食料はマルタ。
広場全体が食料を見れば、また広場が崩れる。
「食料は、普通の印」
ミナが小さく言った。
呼ぶ役が繰り返す。
「普通の印」
ミナは頷く。
そして、板の端の点を見た。
消すか。
残すか。
朝の板に、戻る場所を残すか。
しばらく迷って、消さなかった。
ただ、朝の五つから少し離した。
広場の中心には置かない。
でも、なくさない。
◇
【日曜日 5:46/倉庫前】
マルタは、倉庫の戸を開けた。
朝の分。
病人用。
見張り用。
森を見る者用。
それぞれを分ける。
量は、少ない。
昨日より、さらに少ない。
赤は倒れた。
だが、飯は増えていない。
その事実は、倉庫の床にそのまま置かれていた。
マルタは袋を持ち上げた。
軽い。
軽すぎる。
「まったく」
誰に向けた言葉でもなかった。
袋の口には、昨日つけた印がある。
無事。
怪しい。
駄目。
病人用。
見張り用。
今日の粥。
アイザワが持ち込んだ袋は、まだ使っていない。
見本だけ見た。
便利だ。
間違いなく便利だ。
だが、いま使い切れば終わる。
便利なものほど、使う順番を決める必要がある。
「死んだかもしれないやつの言うことを、まだ聞いてる」
マルタは低く呟いた。
腹が立つ。
だが、手は止まらない。
乾燥した海草のようなものは、病人用に少しだけ戻す。
塩飴は、リリアへ渡す数だけ。
残りは見せない。
油性ペンは、ミナへ渡す。
ただし、全部ではない。
線が太くなる。
印が見やすくなる。
でも、村の木炭や焼いた棒でもできる形にしなければいけない。
マルタは、自分で苦笑した。
アイザワならそう言う。
たぶん。
いや、言った。
物を増やすな。
使い方を増やせ。
「分かったよ」
マルタは袋を閉じた。
「だから、勝手に消えるんじゃないよ」
◇
【日曜日 6:12/治療所】
リリアは、朝まで何度もガンツの傷を見た。
肩。
脇腹。
出血は落ち着いている。
熱はまだない。
だが、油断はできない。
ガンツは眠ったり、起きたりを繰り返していた。
目を開けるたび、同じことを聞く。
「赤は」
「倒れました」
「森は」
「ダリオさんが見ています」
「アイザワは」
「分かりません」
何度目でも、リリアは同じように答えた。
分かりません。
それ以上は言わない。
死んだとも。
生きているとも。
戻ったとも。
帰ったとも。
言えない。
リリアは、相沢の血がついていた布を見た。
洗った。
だが、血の色は完全には落ちなかった。
その布を捨てるべきか、残すべきか。
迷った。
治療所に血のついた布を残すのはよくない。
だが、捨てることもできない。
リリアは布を畳んだ。
病人用の棚とは別。
薬の横でもない。
治療所の奥。
目につきすぎない場所。
そこへ置いた。
アイザワ殿は、治療所。
ミナの言葉が残っている。
なら、ここに置く。
「リリア」
ガンツがまた目を開けた。
「はい」
「あいつは、死んでねぇ」
リリアは手を止めた。
「根拠はありますか」
「ない」
「では、治療の判断には使えません」
「俺の判断だ」
「昨夜も聞きました」
「何度でも言う」
リリアは、ほんの少しだけ目を伏せた。
「では、聞きます」
ガンツは黙った。
「ただし、今は寝てください」
「……お前、アイザワに似てきたな」
「それは困ります」
ガンツは少し笑った。
すぐに傷が痛んだのか、顔をしかめた。
「痛ぇ」
「当然です」
リリアは淡々と言った。
淡々と言える間は、まだ動ける。
◇
【日曜日 6:48/北柵】
ダリオは、森を見ていた。
赤ゴブリンの死体は、広場から少し離れた場所へ移された。
燃やすか。
埋めるか。
森へ戻すか。
まだ決まっていない。
ただ、村の近くに置き続けるわけにはいかない。
匂いが出る。
獣が来る。
小ゴブリンが寄るかもしれない。
ダリオは、死体ではなく森を見ている。
朝の森は、少し戻っていた。
鳥の声がある。
昨日より多い。
だが、完全ではない。
木の間に、まだ薄い沈黙がある。
赤が死んでも、森がすぐ安全になるわけではない。
見張りの男が言った。
「今日、森へ入るんですか」
「浅いところだけ」
「食べ物を探す?」
「見る」
「見るだけ?」
「見てから、取る」
男は頷いた。
焦っている。
腹が減っている。
分かる。
だが、焦って森へ入れば死ぬ。
アイザワなら、そう言ったはずだ。
ダリオは、その考えをすぐに消した。
今は、自分の目で見る。
誰かなら、ではない。
自分が見る。
「西は、少し開いた」
ダリオが言う。
「西の倒木ですか」
「そこから浅く見る」
「赤が嫌がった場所」
「そう」
男は森を見た。
「アイザワさん……いや、アイザワがいたら、そう言いそうですね」
ダリオは少しだけ横を見た。
「アイザワはいない」
男は黙った。
ダリオは続けた。
「だから、見る」
◇
【日曜日 7:20/広場中央】
朝の粥が配られた。
薄い。
昨日と同じくらい薄い。
だが、少しだけ乾燥した海草が入っている椀があった。
全員ではない。
病人。
怪我人。
北を見る者。
井戸。
必要な者だけ。
子供が、それを見た。
「緑の、ある」
母親がすぐに止めようとした。
マルタが先に言う。
「ある子と、ない子がいる」
広場が静かになる。
マルタは続けた。
「病人、怪我人、見張り。今日はそこに入れる。うまいからじゃない。倒れないためだ」
子供は椀を見る。
「ぼくは?」
「今日はない」
「そっか」
子供は、それだけ言って粥を飲んだ。
マルタは顔をしかめた。
怒っているように見える。
だが、怒りではなかった。
リリアが治療所前から言う。
「病人用です。甘いものも同じです。欲しい人に出すものではありません」
ミナが板を指す。
「食料はマルタさん。病人はリリアさん。勝手に分けない」
呼ぶ役が繰り返す。
「勝手に分けない」
村長が頷いた。
「今日の昼までは、これで持たせます」
昼。
また短い。
だが、昨日よりは少しだけ違う。
森を見に行く。
食料を探す。
道を確かめる。
赤のあとを、村が自分たちで処理する。
それは、怖い。
だが、必要だった。
◇
【日曜日 8:03/広場中央】
森を見る者が決められた。
ダリオ。
村の男二人。
避難民の男一人。
ハルトは行かない。
井戸を離れない。
ガンツも行かない。
治療所で寝かされている。
相沢もいない。
ミナは広場に残る。
マルタは倉庫。
リリアは治療所。
村長は広場。
全員で行きたい者がいた。
だが、行かない。
見たい者もいた。
だが、見ない。
ダリオは短く言った。
「浅く見る。奥へ行かない。見つけても、すぐ取らない。戻って言う」
村の男が頷く。
「見えるものだけ」
ダリオは一瞬、ミナの板を見た。
「そう」
ミナは小さく頷いた。
「誰、どこ、何」
「誰が見た。どこで見た。何を見た」
ダリオはそう返した。
ミナの目が少しだけ揺れた。
アイザワがいなくても、言葉が返ってくる。
誰かが覚えている。
誰かが使っている。
それが、胸に刺さる。
でも、悪い痛みだけではなかった。
「行って」
ミナが言った。
「広場は戻す」
ダリオは頷いた。
森へ向かった。
◇
【日曜日 8:41/西の倒木】
西の倒木は、昨日の戦いの跡を残していた。
踏み荒らされた土。
小ゴブリンの血。
赤ゴブリンの血。
折れた枝。
矢の羽。
ダリオはしゃがみ、土を見る。
新しい足跡。
小さい。
小ゴブリンのもの。
数は少ない。
散っている。
まとまっていない。
赤が死んだことで、命令が切れたのかもしれない。
だが、油断はしない。
村の男が低く言う。
「あれ」
指の先。
倒木の向こう。
実のついた低木がある。
食べられるかどうかは分からない。
だが、実がある。
もう一人が言う。
「根も掘れそうです」
避難民の男が、少し離れたところで地面を見る。
「こっち、前の村で食べた葉に似ている」
ダリオはすぐに言った。
「取らない」
男たちが止まる。
「見るだけ。場所を覚える。戻って、マルタとリリアに聞く」
「でも」
「取って毒なら、飯がもっと死ぬ」
その言葉で、全員が止まった。
飯が死ぬ。
水が死ぬ。
広場が死ぬ。
村の言葉は、少しずつ増えている。
ダリオは低木の場所に、小さな印をつけた。
枝を二本、交差させる。
持って帰るのは、少しだけ。
葉を数枚。
実を三つ。
根は掘らない。
場所を荒らさない。
戻ってから決める。
ダリオは森の奥を見た。
まだ、奥へは行かない。
「戻る」
男が驚く。
「もう?」
「浅く見ると言った」
「でも、まだ」
「戻る」
ダリオは歩き出した。
約束を守る。
それは、今の村に必要なことだった。
◇
【日曜日 9:26/広場中央】
ダリオたちが戻った時、広場はざわついた。
袋を持っている。
葉。
実。
それだけ。
大きな収穫ではない。
でも、森から戻ってきた。
それが大きかった。
ミナがすぐに聞く。
「誰が見た」
ダリオが答える。
「俺と三人」
「どこ」
「西の倒木の向こう。浅いところ」
「何」
「実。葉。根らしきもの。食べられるかは不明」
ミナは板に描かない。
すぐ描かない。
まず役に渡す。
「マルタさん、リリアさん」
マルタが倉庫から出てくる。
リリアも治療所前まで出る。
ガンツが起きようとする声が中から聞こえたが、リリアが振り返らずに言った。
「寝ていてください」
静かに強い声だった。
ガンツは黙った。
マルタが実を見た。
「見たことはないね」
リリアも見る。
「少量で試す必要があります」
「誰に食わせる」
マルタが言う。
広場が静かになる。
誰かに試す。
その重さ。
相沢がいれば、自分で試すと言ったかもしれない。
ミナはそう思って、すぐに唇を噛んだ。
駄目だ。
その考えが危ない。
アイザワがいれば。
そう考えると、全部が止まる。
村長が言った。
「急ぎません。まず、知っている者がいないか確認しましょう」
避難民の男が手を上げた。
「葉は、似たものを見たことがあります。でも同じとは言えません」
マルタが頷く。
「なら、今日は触るだけ。食うのはまだ」
「食料が」
誰かが言いかける。
マルタが睨む。
「毒なら終わりだよ」
言葉はそこで止まった。
ミナは板の食料の印を見た。
食料は見つかったかもしれない。
でも、まだ食料ではない。
見えるものだけ。
食べられると決めない。
「広場には、どう言う?」
呼ぶ役が聞く。
ミナは考えた。
「森に、食べられるかもしれないもの。まだ食べない。マルタさんとリリアさんが見る」
呼ぶ役が頷き、広場へ返した。
ざわめきは起きた。
だが、走る者はいなかった。
◇
【日曜日 10:38/治療所】
ガンツは、ダリオの報告を聞いた。
寝たまま。
不満そうに。
「森、行けたのか」
「浅く」
ダリオが答える。
「赤は」
「いない」
「小さいのは」
「散ってる」
「飯は」
「まだ分からない」
「分からねぇばっかりだな」
「見えるものだけ」
ガンツは黙った。
それを言われると、何も返せない。
しばらくして、低く言った。
「アイザワみてぇなこと言うな」
ダリオは答えない。
リリアが布を替えながら言う。
「似ていても困ります」
「困るのか」
「一人で十分です」
ガンツは笑いかけ、傷が痛んで顔をしかめた。
「戻ってきたら、殴る」
ダリオが短く言う。
「戻る場所はある」
ガンツが見る。
「何?」
「ミナが板に点を置いた」
ガンツはしばらく黙った。
それから、天井を見る。
「そうか」
「戻るかは分からない」
「分かってる」
「死んだかも分からない」
「それも分かってる」
ガンツは目を閉じた。
「だから、殴るまで決めねぇ」
リリアは何も言わなかった。
それは治療の判断ではない。
だが、今は否定しなかった。
◇
【日曜日 12:04/広場中央】
昼の粥は、朝と同じく薄かった。
だが、広場の空気は昨日とは違う。
赤がいない。
森を浅く見た。
食べられるかもしれないものが見つかった。
確定ではない。
でも、完全な閉塞ではない。
村長は、昼の前に短く言った。
「赤は倒れました。ですが、食料はまだ不足しています。森の確認は続けます。勝手に入ってはいけません」
呼ぶ役が繰り返す。
「勝手に入らない」
ミナが板を指す。
「森を見る人は決める。見たものは、誰、どこ、何で戻す。食べられるかは、マルタさんとリリアさんが決める」
マルタがすぐ言う。
「私だけじゃ決めないよ。知ってる者がいれば聞く。少しずつ見る。腹が減ってても、変なもん食えば死ぬ」
ハルトが井戸から声を出す。
「水はある。食べるものを試す時も、水は決めて使う」
リリアが続ける。
「体調が悪くなった者は、すぐに言ってください。隠す方が危険です」
広場は聞いている。
完全に安心した顔はない。
だが、昨日のような割れ方はない。
ミナはそれを見た。
広場は、持っている。
アイザワがいなくても。
その事実が、また胸に刺さる。
嬉しいのか、悲しいのか、分からない。
たぶん、両方だった。
◇
【日曜日 14:26/倉庫前】
マルタは、アイザワの残したものを改めて並べた。
広場には見せない。
倉庫の中。
村長、ミナ、リリア、ハルト、ダリオだけ。
ガンツは来られない。
袋。
ラベル。
油性ペン。
計量スプーン。
塩飴。
乾燥した海草。
小板の割れた片方。
人。
場所。
目。
誰。
どこ。
何。
ミナはそれを見て、手を伸ばした。
小板を拾う。
割れている。
赤の爪か。
落ちた時か。
分からない。
それでも、印は読める。
「これ、直す」
ミナが言った。
マルタが見る。
「使うのかい」
「そのままは使わない」
「じゃあ」
「村の板に直す」
ミナは小板を胸に抱えた。
「これは、見本」
相沢が言った言葉だった。
マルタは何も言わなかった。
リリアが塩飴を見る。
「これは、残りを数えます」
「隠すよ」
マルタが言う。
「はい。薬の前です」
ハルトが袋を見た。
「水を運ぶ時にも使えるか」
マルタが眉を寄せる。
「飯じゃなく?」
「濡らしたくないものを分ける。井戸の近くで」
ミナが顔を上げる。
「それ、使い方」
ハルトは少し戸惑う。
「そうか」
「うん。物じゃなくて、使い方」
倉庫の中が少し静かになった。
アイザワの言葉が、そこにあった。
本人はいない。
でも、使い方は残っている。
◇
【日曜日 16:55/広場中央】
日が傾く。
日曜日の夕方。
本来なら、アイザワはまだこちらにいるはずだった。
土日祝。
そうなら、日曜日の夜まではいる。
だが、いない。
ミナは、そのことを言葉にはしなかった。
村人たちも、分かってはいない。
アイザワがいつ来て、いつ消えるのか。
完全には知らない。
ただ、今回は違う。
いつもの消え方ではない。
そう感じている。
白く光った。
血の中で消えた。
それは、戻ったというより、連れて行かれたように見えた。
リリアは「分からない」と言う。
ガンツは「死んだと決めない」と言う。
マルタは「死んだかどうかも分からない」と言う。
ダリオは「消えた」と言う。
ミナは、何と言えばいいか分からない。
だから、板には書かない。
板には、今見るものだけを書く。
火。
水。
呼ぶ。
人。
水。
食料。
仕事。
休む人。
そして端の、小さな点。
ミナはその点を見た。
「戻る場所」
小さく呟いた。
呼ぶ役が聞いた。
「今日、戻る?」
ミナは答えられなかった。
しばらくして、言った。
「分からない」
「じゃあ」
「分からないものは、広場に増やさない」
呼ぶ役は頷いた。
「でも、点は残す」
ミナは少しだけ笑った。
泣きそうな笑いだった。
「うん。点は残す」
◇
【日曜日 20:41/広場中央】
夜になった。
赤の声は、やはり来なかった。
森はまだ怖い。
だが、赤の声はない。
それだけで、夜の重さが少し違う。
広場では、交代が行われている。
火を見る者。
水を見る者。
呼ぶ役。
休む者。
治療所へ水を運ぶ者。
倉庫へ戻る者。
全員が疲れている。
だが、動いている。
相沢がいたら、何と言ったか。
ミナは考えかけて、止めた。
今は、アイザワがいたら、ではない。
今いる者で見る。
今いる者で動く。
ミナは板に手を置いた。
「火、水、呼ぶ」
呼ぶ役が続ける。
「火、水、呼ぶ」
その時、治療所の方から、ガンツの低い声が聞こえた。
何かを言った。
聞き取れない。
リリアの声が返る。
「寝てください」
広場の何人かが、少しだけ笑った。
小さな笑い。
すぐ消えた。
でも、笑いだった。
ミナは、その音を聞いた。
夜が完全には壊れていない音だった。
◇
【月曜日 0:00/広場中央】
日付が変わった。
ミナは、それを正確には知らない。
だが、夜の交代の感覚で、深い時間になったことは分かった。
火が一度、小さく鳴った。
水桶の影が揺れた。
森は静かだった。
何も起きない。
白い光もない。
アイザワは戻らない。
ミナは板の端の点を見た。
消さない。
でも、呼ばない。
呼ぶ役が眠そうな声で言う。
「火、水、呼ぶ」
ミナも答える。
「火、水、呼ぶ」
アイザワのいない二度目の夜が始まった。
それでも、村は止まらなかった。




