元・トップランカーの励まし
よろしくお願いします。
「お帰り、ラルフ」
申請所から出てきたラルフを見てレクティアが声をかけた。
彼女の顔には悔しげな表情が滲み出ていた。レクティアだけではない、スピカやセピアそしてユウの4人もがそれぞれ複雑な心境に至っていた。
ラルフは彼女らの表情を伺いながら返事を返す。
するとスピカがラルフの前に寄り、彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい……ラルフ、私何も言えなかった……」
彼女の声には悔しさの感情が詰まっていた。
スピカはこのギルド晴天の彗星のリーダーだ。そんな彼女が何より大切にしているギルドを侮辱されたのだ。屈辱以外に何があるというのだ。
しかしラルフはそんな彼女を頭をそっと優しく撫でた。
「そんな事一々気にすんなよ」
彼の予想外の言葉に一瞬言葉が詰まる。
「どうして? あれだけ言われてあなた悔しくないの?」
「悔しいに決まってんじゃん」
「ならどうして?」
「そもそも気にした時点で負けなんだよ」
「負け?」
「この間の『イニティアム襲撃事件』覚えてるか?」
ラルフの言うイニティアム襲撃事件とは数週間前に起こった核石人種によるテロだ。
このワールドにおいて最大級の価値を誇るアイテム神の結晶を得る為にシステムウイルスの一種である『システム・ベアリア』を利用し大勢の核石人種や原人種を拘束し、虐殺や拷問など過激な行為を繰り返した。
しかしその事件に終止符を打ったのはラルフ達――そう晴天の彗星だった。
残念なことにこの事件の詳細は現実世界での『治安維持委員会』によって口止めされている。しかしその経験は彼らにとっては大きな物であった。
「あの時はあなたがいたから出来たのよ、もしあなたがいなかったら――」
「だとしてもその経験が無駄になった訳じゃないだろ? 俺が居る居ないは関係ない」
ここまで言うとラルフはスピカの肩をポンと叩き励ましの声をかける。
「自信を持てよ、悔しいなら悔しいなりに這い上がれ。そして見返してやりな、俺も協力するから」
「ラルフ……」
ラルフの正体はあの一件以降ギルドメンバー皆知っている。だからこそ皆は彼の言葉に説得力を感じていた。
「重い話はこのくらいにしようぜ、エントリーのついでにギルドクエスト申請してきたしそれで暫くはレベル上げすれば良い……後は――はい、スピカ」
「え?」
ラルフは持ってたクエスト用紙をスピカに渡した。
突然のラルフからのパスを受けて彼女は動揺する。
「ここからはお前の仕事だ。唯一無二のギルドのリーダーであるお前が先導しなくてどうするんだよ」
「……ありがとう、ラルフ」
スピカは大きく深呼吸し、うんと頷くとレクティア達に向かって話す。
「そうね――。よし、行きますか皆の衆!」
彼女はそう言いながら皆を先導するように前に立ち馬車乗り場に向かい始めた。
レクティア、セピア、ユウはそんなスピカの姿を見て彼らも次第といつもの威勢を取り戻し始めていた。
ラルフはいつもの自分を取り戻した4人の姿を見て安心するように笑っていた。
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