今日もギルドは(多分)平和でした
久しぶりの投稿です。
エリーミ邸庭地のボロ小屋にて、
今日もいつものボロッボロのカビ臭い小屋(拠点)でいつもの今いる4人が一つの長机を囲うように座っていた。
「ねぇ、今日もリーダーは遅刻なの?」
一人目が特徴的な金髪を持つ大風魔法が得意な少女レクティア。
「うん……スピ姉は勧誘してから来るって……言ってた」
二人目が物静かな自称ヒーラー少女(主要武器は弓矢)セピア。
「ま、まあ皆さん取りあえず待ちましょうよ。スピカさんもそう言ってるんですし……」
三人目が人見知りな姿を醸し出す片手剣使いの少年ユウ。
「ホントにそうか? もしかしたらそう口述して実はまた碌でもないクエスト申請したんじゃねえの?」
四人目が腰に二本の剣を刺す簡単な装備を身に纏った青年ラルフ。
そんな会話を進めていると、
ガンッ!!
「ヤッホゥ!! 今帰ったぞい皆の衆!!」
小屋の扉(以前壊され補強済み)が勢い良く開かれたと同時に一人の女性が現れた。
赤いリボンに結ばれた特徴的な赤髪、安定の赤を基調としたファンション。
そう、彼ら《コメット・スター》のリーダー、スピカだった。
「あ……スピ姉お帰り」
「何人か見つかった?」
訊かれるとスピカは、
「ナッシング!!」
「無えのかよ」
清々しく返答し、ご機嫌にスキップするかのような足取りで自分の席に着いた。
「それにしても嬉しそうだね。何かあったの?」
スピカの様子を見てレクティアは彼女に問いかける。
「いやいやいや~、クエスト申請所でお金漁ってたらとんでもなく良い物を見つけてね」
「何だよ。また何か訳の分からねぇクエスト申請したのか……?」
呆れ気味にラルフは言った。
彼がそういう反応を見せるのも仕方の無いことだった。
何せ毎度自分たちのレベルを考えないで(仮にも簡単だと言っても)鬼畜クエストを申請するからだ。
しかしそう訊かれたスピカは、
「ノン、ノン――今回は違うわよ」
メトロノームの様に右手の人差し指を振り、ニヤリと笑みを浮かべながら懐から一枚の紙を机に叩き付けた。
ラルフ含めた4人は紙に顔を近づけ文面を眺める。
「何だこれ、チーム対抗PVPサバイバル大会だぁ?」
書類を見たラルフが真っ先に文面の一部を読む。
「そうよ、たまたま街歩いていたら壁に貼っていたからヒッペ剥がして持ってきちゃった」
「勝手に盗るなよ、返して来いよ……現実の選挙ポスターなら犯罪だぞそれ」
「別に良いじゃない、そこまで人の目につくような所には貼ってなかったし」
そう言われるとラルフは面倒になったのか適当に言葉を返した。
するとユウがポスターを眺めて何かに気付く。
「ちょ、これ優勝賞金半端なくないですか……ッ!? い、1千万Pecって!?」
「そうなのよ、この大会って運営側が大きくサポートされていてねLv75までという制限が設けられているのよ、低レベルユーザー向けの大会なのにも関わらずそこまでの金額を出す運営もなかなかの太っ腹よね」
一応Pecは日本円に換算して百Pec=一円という価値なのだが、そう考えるとこの金額だと日本円で十万円と言う事になる。
金にしか目に無い(その為に何かすると言う事は特に無い)スピカに対して自然に4人は何故彼女がこの大会に目を付けたのかが納得がいく。
するとレクティアはふと意見を述べる。
「だけど、今の私達のレベルじゃあLv75の核石人種にやられてしまうだけでは?」
彼女の言う通りだった。このメンバー全員で見ても主催の定めるレベルに達している者は一部例外を除いては誰も居なかった。高くてもリーダー、スピカのLv53――いや、この間のクエストで少し伸びてLv56だった。
他を言ってしまえば、その半分のメンバーは規定レベルの半分も満たなかったのだ。
「ええ~大丈夫でしょ、ウチにはラルフいるし」
「そういう問題じゃ無くて、幾らラルフが居てくれたとしてもずっと彼頼みするのはどうかということですよ、ずっと居てくれるわけじゃ無いんですよ」
「だったら、ラルフだけ試合開始直後に敵陣に向かわせて直ぐ帰って来てもらえば良いんじゃないの? 彼なら秒で出来るっしょ」
「その肝心の彼が敵陣に向かっている間に我々に秒で不意討ちされたらどうするんですか?」
レクティアの的確な返しにスピカは言葉が詰まり、レクティアから目をそらす。
彼女の態度を見る限り適当に考えた作戦であることが確定する。
「やるんなら真面目に作戦考えてください、彼は私達にとって切り札であることには変わりありません、それはあなたも知っているでしょう?」
「え、~そんなキレ気味にならなくても……」
口笛混じりに誤魔化すように言うスピカ。
「キレてません」
「本当? こっちから見たら怒ってるようにしか見えないけど」
「……いいえ、イラッとしてるだけです」
「怒ってんじゃん」
「今はそれはどうでも良くないですか!?」
「や~い、怒ってる~」
レクティアの返答に対してスピカはまるで小学生のような語彙力で煽る。
「……」
すると――
「や~い、や――」
《「風の御霊よ、風の塊、形成し『放て』」Ⅲ=Ⅰ/LvⅡ/a.0.Ⅲblow」》
ドゴッ――!!
刹那、正面からの突風の直後にスピカの立つ背後の壁に大きな衝撃波が轟いた。
「……え?」
一瞬何が起きたのか分からなかったが後ろを向いた瞬間彼女は絶句する。
「か、壁ぇっ!? あ、穴……ッ!?」
口をパクパクさせ、あわてふためくスピカ。
「……いい加減にしてください」
スピカはレクティアに目を向ける。
レクティアの指先には魔法詠唱のマナの余韻が残っていた。
「今度機嫌が悪い私をおちょくったら、その壁の修理費もあなたに請求させますからね」
彼女が撃ったのは大風魔法【ウィンド・ランブル】だ。風の突風だけで相手にダメージを与える比較的簡単な魔法だ。
とはいえ、Lv2の魔法なので本来は脅しにもならないはず。しかし場所も場所、震度0でも壊れる小屋のこともあり、スピカに対しては2つの意味で大きな脅しとなっていた。
経済的に見ても彼女には効果てきめんだった。
「分かりました! 分かりました! 私が悪かったです!! ちゃんと作戦考えますからあああぁぁぁぁぁ!! もうしないからその指しまってええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そして謝罪の最終点の土下座をかますスピカであった。
レクティアの冷酷に満ちた姿を見たのは初めてだった。
「こ……これ、どうすんの? どう収拾させる気なの? 俺ら止めなきゃマズイ系のヤツ?」
「気が済むまでそっとしよう……壁の件は一応……申請しておけば良い」
「まあリーダーの素行に関しては皆も同じような思いしてましたし、今回は彼女に色々と反省してもらいましょう」
離れから見ていたラルフ、セピア、ユウは二人の姿を見てそんな言葉を交わす事しか出来なかった。
まあ、ちゃんと作戦練ってくれるならクエスト申請もまともな物をやって欲しいと思う一同であった。
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