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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
40/50

勝利への前準備 二年ぶりの二人

遅れていい事に今更知った俺……

 エダはスルリと双方の刀を鞘から抜いた。

「さぁて、まずはどうするか……相手はあのグールだ」

「正直、面倒臭ェが。相手してくれるなら、それなりに振る舞ってやろうか。まあ張り合えるかは別だけど」

 エダの持つ刀――通称『結晶刀』は刃の根元から先まで、この闇に包まれたこの空間にも関わらず虹色に光り輝いていた。

「作戦とかはあるのか?」

「まあ、三パターン程は……だけどその内の二つはいくらボクでも少しキツい」

「じゃあ確定だ。その内の最もリスクが低いヤツを志望するね」

「ほう、そうと決まれば。君に渡さなきゃならない物があったよ」

 エダはそう言うと手元に辞書のような分厚い一冊の本を、ウィンドウのアイテム選択画面から実体化させラルフへ渡した。

 その本は一言で表すのであれば、それは『相当な年期が入った高級感溢れる辞書』としか言う言葉が最もふさわしい。

 本の表紙には何語かも分からない文字で表記されており、本の角には金の装飾が施されていた。

 直後ラルフはその本の正体に気が付く。

「ちょ、お前!? これ、魔法改変の(ライブラリ)権利書(・チェンジャー)じゃねぇか!! どっから取ってきたんだよ!!」

「どっからって、適当に君の所持品漁っていたら出てきたんだよ」

 魔法改変の(ライブラリ)権利書(・チェンジャー)、それは消費アイテムの中でも最大級の物た。しかし魔法改変は起動言語や効果、範囲を少し変える場合には単純に魔法公式(プログラムルーン)を少しいじれば簡単に改変ができる。だが、大幅(、、)に改変をするのであれば話は変わるのだ。例えば【ウィンド・ランブル】の魔法に『鎌鼬(かまいたち)』の特殊効果を付与したい場合だ。その場合にはそのようなアイテムがどうしても必要になってしまうのだった。しかし一度その魔法の詠唱に成功すると、以降その魔法はあのアイテム無しでも詠唱することが出来るようになる。

「つーか、俺にこんな物を渡して何唱えろって言うんだよ!? 大体は、お前唱えられるじゃねぇかよ!?」

 しかしエダは、――

「……いいや、これはボクには出来ない」

「はぁ、どういうことだよ!?」

「これは、キミにしか出来ないことなんだ。そう、キミの能力でね」

「俺の能力で……?」

「そう、キミには本の最後のページを開いた所にある文を解読して欲しいんだ」

 ラルフの固有特性パーソナル・アビリティ存在しない(、、、、、)特性、魔法を『作り出す力』。俗に言う【能力錬金(オリジナル)】という能力だ。しかしその力には一週間に五つまでしかないというリミッターが掛けられていた。故に正直な話、無駄な消費は一切許されなかった。

「これって……」

「一見なんて書いてあるかは分からないかもしれないが、それにはとてつもない異の力が込められていると言われているんだとよ」

「仮に俺が解読している間、お前は、どうするんだ?」

「そりゃあ、言うまでも無いでだろう?」

 エダは言いながらふと笑うと、ラルフは察した様子で笑みを返した。

 そうか、とラルフは一度息を吐く。

「わかった。まあ、なるべく俺にグールを近づけさせないでくれよ」

「そりゃあ、最初からそのつもりだよ……ッ!!」

 エダがそこまで言うと隼の如く大地を蹴り出し大量のグール達へと襲いかかるのであった。

 ラルフがその瞬間を確認すると一度【守護結界】を体全体が入る程の大きさに形成した。

(さて……始めるか)

 右手の人差し指を伸ばし指先からマナを滲ませる。

《「虚無の精霊よ、我、英知を『与えたまえ』」∅=Ⅰ/Lvx/a-academic・UG》

 ラルフは、これで今週の中で四つ目の作成魔法【スカラシップ】を唱えると魔法改変の(ライブラリ)権利書(・チェンジャー)の解読を開始する――


「……始めたな」

 エダはグール達に剣を振るいながらも、ラルフの行動を把握した。

 そのまま、彼は攻撃の間を縫ってメッセージのやりとりを交わす。

 メッセージとは言っても一々文字をキーボードで入力するというわけでは無い。実際は発した声を文字に自動変換し、そのままメッセージとして送信したのだ。

『どうだ。どの位掛かりそうだ?』

『幸い一文だけで助かったが、まだ見当がつかない。とりあえずこっちが合図を出すまで耐えてくれ』

 ラルフの返信は早かった。

『了解……』

 エダは紡ぐようにそんな事を口にするとウィンドウを閉じた。

 エダの中では最低でも三十分、彼はどんなことをしてでも時間を稼がなければならなかった。

(それじゃァ、その間まで極力どうにかしなければ……頼んだぞラルフ)

 祈りながらそんな言葉を口にするとエダは戦いに集中するのであった。


(なんだ……何て書いてんのかわからねぇ)

 くそ、とラルフは悔しげに舌打ちをした。

(それにしても法則も分からない……ローマ字みたいに母音と子音で構成されているような単純な文では無い感じだし……)

 一応ラルフには【スカラシップ】を付与させ、知識の補助がされていた。今彼の視線には、まるでこの時だけ脳内その物が電子辞書になったかのように見えていたのだ。

 しかしそれでもラルフは問の正解に辿り付けなかった。

 英文法、ロシア語文法、ドイツ語文法、スペイン語文法、その他色々――いくら試してもその文らしき物には一切その文の手がかりを感じられなかった。

(不味い、このままでは……)

 ラルフはかつてつい数分前にライムがかつてラルフへ面と向かって言った言葉を思い出す。

 ――兄を助けて下さい――

(……)

 他に何か策は無いのだろうかとラルフはウィンドウを開き、ダメもとと思いながらも画面をスクロールする。

 とはいえ、あるのは簡単な消費アイテムだけだった。見終えるとすぐにウィンドウを閉じ、ポケットを漁った。

 すると――

「ん?」

 ガサ、と何か指から紙に触れるような感覚がした。

 そのまま彼は掴み、取り出し広げた。

「これは……」

 その紙は、今彼が所属しているギルド『晴天の彗星(コメット・スター)』の勧誘ビラだった。

 一見何て書いているかは分からないが今頃になれば、何とか目を凝らしてみればなんとか読める程には取りあえず成長していた。

 その時、彼はある事に気付く。

(ちょっと待てよ……? これ、まさかとは思うが――)

 持っていた魔法改変の(ライブラリ)権利書(・チェンジャー)を彼は改めて見直す。

 そして、考察する。

 ――仮に外国語とかそんな難しいことを言っているわけでは無いとしたら?

 ――仮にこの文字が、『つい最近日本に来た外国人が書いた適当な“ひらがな”』だとしたら?

 次の瞬間、確信する。

「……ったく、魔法創ったの意味ねぇじゃねぇかよ」

 ラルフはメッセージウィンドウを開きエダにとある一文を打ち送信した。


 グール達の猛攻はこれまで以上に激しくなっていた。

 しかしエダは両手に持つ刀を駆使しなんとか彼らを手に取っていた。

(くそ、このままじゃ拉致があかねェ……一度でも、いや一瞬でも良いからあのクズ野郎が持つ核石(セミ=クリスタル)をまず取り返したい……)

 このグールはアスピスの召喚魔法によって誕生したモンスターだった。故に彼はこのグール達を召喚する時、魔法公式(プログラムルーン)に『∞』のコードが記入され、こうなった場合には術者のMPが切れるかもしくは術者が死ぬかしか止める方法がない。

 本来であればアスピスに近づきたい所だが、あまりのグールの量になかなか前に進むことが出来なかった。

 その時、ピロリ、とエダに受信通知が聞こえた。

 エダはすぐさまウィンドウを開く。

 そこにはこう書かれていた。

『解読に成功した』

 一瞬その文に目を疑うエダ。

 実際もっと掛かると思いきやまさかの十分も経たずに解読に成功するなんて彼は予想もしていなかった。

『マジかよ……』

 自動変換機能でメッセージを返すエダ。

『嘘じゃない。とりあえずお前には頼みがある』

『何だよ?』

『今すぐに、アスピスに囚われている核石(セミ=クリスタル)を回収し、グール達を丸々一カ所に集めさせろ。お前にとっては難しいことを言っているわけでは無いだろう?』

 メッセージを読み切ると彼は面倒くさそうな様子で言葉を返す。

『ああ、ハイハイ。わかったよ。やりますよ』

 言うだけ言うと彼はメッセージを閉じた。

 直後エダは周りからじりじりと歩み寄るグール達に対して一つ魔法を唱える。

《「――――」――――》

 彼のその声はまるで口パクの様に小さかった。文字もまるで蟻のように小さく誰にも読み取れなかった。

 しかし、魔法は発動した。

 刹那、襲いかかろうとしていたグール達の地面からエダを中心に数メートルかけて魔方陣が展開され。次の瞬間、耳が轟くような爆音が響いた。全てを焼き尽くすような真っ赤な炎がグール達を飲み込み灰となる。

 だが、エダの行動はそれだけでは終わらなかった。

 またもや彼は小さな声で魔法を詠唱する。

《「――――」――――》

 それでも、魔法は発動した。

 今度はアスピスがいる場所へ目掛けて一直線に爆風にも似た風を発生させ集うグール達を吹き飛ばす。

 直後エダはその一瞬の瞬間を見逃さず、アスピスの姿を捉えた。

 次の瞬間、爆ぜるように大地を蹴り出し前へと突き進む。

 この間たったの5秒。おまけに今彼が唱えた魔法は唱えるだけでも相当な時間が掛かる高等魔法だった。普通に考えて核石人種(プレイヤー)が出来るような技では無い。

 流石はトップランカーと言われているのも正直納得がつく。

 エダは一直線に前へと突き進みアスピスとの距離を徐々に縮める。

「き、貴様ぁ……何を!?」

「いや、ちょっと忘れ物を取りに来ただけだよ」

 そして、彼はアスピスの懐に手を伸ばし――

 二つの核石(セミ=クリスタル)を入手する事に成功した。

「こ、これは私のだ!! 返せ!!」

「馬鹿かお前。人の命と同等の物に所有権を主張すんなよ」

 あとは、一カ所にグールを集めれば良いだけだ。

(グールはアンデット系モンスターの分類に入る。……ならば――)

《「閃光の精霊よ、――」Ⅶ=Ⅱ/LvⅤ/――》

 エダは閃光(シャイニング)属性魔法の【ホワイト・シャイン】を発動させアスピスの頭上に網膜を焼き尽くすような光を発生させ辺りを照らす。

(アンデット系モンスターは光を見るとそこに一体一体集まってくる)

 エダの狙いは的中した。

 魔法を唱えるとエダは懐から札のような一枚の紙を抜き取った。

「貴様、それは……『トランスファービル』!?」

「その通り、何か問題でも?」

 アスピスが気が付いた瞬間エダは即座にしてその紙に座標を記入する。

 そして。

「じゃあね悪人サン」

 札を中心として頭上に人一人すっぽり入る程の大きさの魔方陣が展開され、閃光弾の如く札から(まばゆ)い光が発生しエダの体を包み込み消滅した。

 

「――ふぅ、なんとか出来た……」

 エダは額の汗を拭い辺りを見渡した。

 彼が到着した先はライム達のいる【守護結界】のドームだった。結界はグール達の攻撃を受けるも、何一つ傷が付いていなかった。

 エダがここに到着した頃、結界の外側には彼の唱えた魔法のお陰でグールは一体もいなかった。

 結界の中にはエダを含め6名の核石人種(プレイヤー)がいた。

 エダは手に持つ核石(セミ=クリスタル)を水色の長い髪を持った少女――ライムに渡す。

「あ……ありがとうございます!!」

 ライムは取り返してきてくれたエダに向けて感謝を送り。嬉しそうにその核石を抱きしめた。

「良かった……本当にみんな無事で、良かった……」

 暫くしてエダの耳に別の女性の声が入ってきた。

「エ、エダさん……?」

 声の主は、金髪が特徴的だったレクティアからであった。彼女の声は心配そうに強張り、震えていた。

「ラ、ラルフの方は大丈夫なのですか?」

 レクティアの目線には数百メートル離れたところにいるラルフへと向いていた。

「ああ、大丈夫だ。それに――」

 エダはそう返すと一度指を鳴らす。

 次の瞬間――今まで彼らを守って来た【守護結界】を、生成したエダ自らの手で破壊した。

「もう、勝負は決まった様な物だからな」

 言うとエダはウィンドウを展開し、メッセージを送信する。すると彼は歩いてどこか(、、、)へ向かい始めた。

「ど、どこに向かうんですか?」

 レクティアの問に対して、エダは笑いながら答えた。


「どこって……そりゃあ“友達(ラルフ)”の場所に決まっているじゃ無いか?」


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