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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
39/50

非道遊戯のその先

急げえええええ!!


 皆が到着した場所は、光すら存在しないような荒廃した村だった。

 空は闇雲に覆い包まれ、まだ人が住んでいるかも分からないような建物にはカラスが集っていた。

 その光景を一言でまとめるとするならば悍ましいほどに酷、と言う事しか出来なかった。

「私のゲーム会場にようこそ」

「何いってるんだ。ここが会場だぁ? 人を招くなら、もっと衛生管理くらい徹底したらどうだ?」

 ラルフが一通り辺りを見渡した後、彼はアスピスに話かけた。

「まあ元はイニティアムの島から離れた場所にある孤島さ。一応私のお気に入りの場所でもある」

 ほう、とラルフはアスピスの言葉にそっと頷く。

「それより、さっさと教えてくれない? お前の言う『ゲーム』ってヤツを……」

 ラルフは腕を組みながら呆れるような口調で問いかけた。

「まあ、そう焦るな……ルールは幼稚園児でも分かるごく単純な物さ」

「単純だぁ?」

「……そうさ、()を倒すのさ。ホラ、単純でしょう?」

「ああ確かにその通りだな。でも良いのか、そんなルールで?」

「問題ないよ全員(、、)で掛かってきなさい」

 アスピスは、余裕に満ちた表情でハッキリとそう答えた。

「ラルフ……どうする気なの? 勝算があるとでも言うの?」

 レクティアは心配そうな顔つきでラルフに話しかけた。

「いいや、あるとは言い切れない。正直あの野郎が何考えているかは予測不可能だし、一応さっき調べたがヤツはLv900台だ。ステータスもクトラとは比にならんからな」

「そんな……まさか賭け、だというの!?」

 ラルフはアスピスのもつ細剣(レイピア)に視線を向ける。

「それに、あの武器。奪ったか何かは知らねぇけど、ありゃ『ダークマター=ロック』で作成された上位クラスの『特殊武器(スペシャルウェポン)』じゃねぇか」

特殊武器(スペシャルウェポン)……?」

 過去のありったけの記憶を掘り起こし、思い出しながら苦い顔で彼は話した。

 武器のクラスには二種類存在する。一つは、店頭などに売られ誰でも手に持てるような武器、通称『通常武器(ノーマルウェポン)』。二つ目は今アスピスが腰に掛けているような武器、通称『特殊武器(スペシャルウェポン)』だ。特殊武器には通常武器とは大きく違い、通常武器には無い特別な力が付与されている。基本、それらの武器は店頭で購入する事が出来ない。手にするには一定の素材を集めて生成する必要があるのだ。

 ラルフはその武器に関して更に記憶を掘り起こす。

「そうだ思い出した。たしか、あの武器の特殊効果は暗黒(ブラッティー)属性の魔法を通常詠唱の10分の1の軽い消費MPで唱えられるんだ!!」

「ほう、随分と知っているじゃないか。まあいい、そろそろ始めようか」

 言いながらアスピスは腰に掛けてある細剣(レイピア)を鞘から抜くと――

 彼の行動を見てラルフは反射的に両方の剣を引き抜いた。

 他の5人も流れるように武器を手に取る。

「ラルフ、私達も戦うよ」

 スピカが言う。

 しかしラルフは一瞬、躊躇いながらこう言葉を返した。

「……いいや、しないでくれ」

 衝撃的なラルフの言葉に彼女は呆然とした。

 何故この状況まで来て一人で戦おうとするのか、スピカはまるで意味が分からなかった。

「……ど、どうして!? それじゃあホントに負けるわよ!!」

「別にかまわねぇよ俺の体なんて、それより――」

 ラルフは足竦んで全く動けない少女――ライムに目線を向ける。

「まずあの子を、どうにか守ってくれ。俺は二の次でいい」

「ラルフ……」

「俺は……なんとかしてコイツをぶっ殺さなきゃならない。だから頼むリーダー(、、、、)

「そんなの……私達が許すわけ無いじゃん……」

 涙ながらに彼女は言った。

「ライムも救うし、アナタだって救う。これ以上アナタを無理に戦わせたくないのよ!!」

「……チッ、勝手にしろ」

 ラルフは、一度大きくを息を吐くと呆れ返った様子で、

「ただし、補助魔法だけだ。それ以外の事は一切するなよ」

「……分かったわ」

 スピカの返答を耳にするとラルフは彼女から背を向きアスピスのいる場所の近くまで歩き進む。

「おや、作戦会議はもう終わったのですか?」

「ああ、相手は俺だ。覚悟は出来てんだろうな?」

「その台詞、そのまま貴方にお返ししますよ」

 アスピスは穏やかな表情のまま答えた。まるで全てを見据えているかの表情にライムの額に青筋が浮かぶ。

 次の瞬間――

 ラルフは爆ぜるように大地を蹴り出しアスピスへと襲いかかった。

 寸前、両方の剣に閃光(シャイニング)属性の武器属性付与(エンチャント)を付与させた。

 まず中心から真横へと剣を振るい、そのまま流れるようにして二刀流の連続ラッシュを繰り出す。

「おや、Lv1にしては……速いですね。殺すには惜しいです」

「全部見ていたクセして初見臭くほざくんじゃねぇよ!!」

 しかし、ラルフの剣先はまるで全て読まれていたかのように悉くアスピスの細剣(レイピア)で流されていた。

 舌打ちするラルフ。

(この野郎……さすがはLv900台っていった所か。全然隙を見せねぇ)

 眉の皺を縮ませ、強く歯を噛み締める。

 ラルフは剣を振ったときの反動を利用し、後方へと一歩下がると掌をアスピスに向けた。

「これなら――どうだ!?」

 直後彼の掌から燃えるように赤く光る魔法陣が発生する。

(【バレット・フレア】……この距離で!?)

 意外な行動にアスピスは一瞬反応に遅れるも回避に成功する。

 しかし、正直それで良かったのだ。


 何故なら――

「なぁ、背後だと……!?」

 そう、その彼が避けた時を利用し一瞬だけ彼の視界から外れることに成功したのだ。

 しかし、何故かアスピスはこの状況でいながらも笑っていた。

「素晴らしい攻撃だ……だが、少し惜しいな」

 アスピスには攻撃が一切通っていなかった。


 何故なら――

「う、嘘だろ……」

 アスピスの目に前には一体のアンデット系モンスターが盾のように阻んでいたからだ。

「悪いがこんな使い方もあるんだよ」

「お前、まさか。こいつら……お前が召喚したのか」

 そのアンデット系モンスターの正体はグールだった。足が速く殺しずらい事に定評があるモンスターだ。

「それ以外に誰が出来ると?」

 当然の如くアスピスは答えると、今度は緩やかな表情で問いかける。

「最初、私が言った言葉覚えていますか?」

「……お前を倒すことだろ?」

「それも確かに間違いではありませんが、私はこう言いましたよね? 全員参加(、、、、)だって」

「なっ!?」

 ニヤリとアスピスは笑みを浮かべると、

「私は『ズル』が大っ嫌いでね。つまり、私が言いたいのはこういうこと(、、、、、、)です」

 パチンと一回大きく指を鳴らした。

 次の瞬間――

 この場にて地面から四方八方から大量に黒い魔方陣が発生し、その陣の中心から『グール』が現れた。

「お前、この数いくら何でも尋常じゃ無いぞ!?」

「そう言っている場合かな? そうしてる内に大事なお仲間さんが大変なことになっているよ」

「しまった!?」

 アスピスの言葉にハッとし、ラルフはすぐさまライム達がいる所へと戻ろうとする。しかしグールの厚い壁に阻まれ上手く行くことが出なかった。

「一応補足しますがアナタにもグールは近づいていますからね? 因みに私は術者なので一切襲われません」

「なっ!?」

 アスピスの言葉の通りだった。見た限りでは数十体ほどのグールがまるでゾンビのようにじりじりと近づいて来る。

 ただしまだ距離があったためまだ時間はあった。

 それよりも一番危ないのはライム達のグループだった。

 あそこには人数が多い分取る面積も大きいため襲われやすいのだ。

 しかし詠唱の声が聞こえた。それでも人数の分抵抗はしている様子だったのだ。

 だがそれでも、その状態を保てるかどうかは正直時間の問題だった。

 故にあのグループの中で最も力のあるライムは、戦意喪失状態。今現在ではスピカとユウの2人で【守護結界】を生成し維持していた。


 しかし、最悪な事態は突如起きた。


 パリンとまるでガラス板が割れるような音が響いた。

「ありゃありゃ、これはマズイですね……」

 ラルフの勘が正しければあの音は間違いなく【守護結界】が破れられた音。

「……や、止めろよ!? 今すぐあのグールを止めろ!!」

「止めろと行って素直に止めてくれる人なんていませんよ。さあ、グール達の晩餐の時間です。襲われる悲鳴をじっくり楽しみなさい」

「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!!!!!!」

 喉元からありったけの声がノイズのように響いた。

 何故あの時、彼女らと一緒に戦うことを拒否してしまったのか。もしも逆に選択していたらどうなっていたか……。

 ラルフは、後悔する。

 自分の勝手な判断でこうなってしまったことを彼はひたすら恨んでいた。


 しかし、その時であった。


 ――全く、何やってンだか……こんなモンに手間かけんじゃねェよ――


 何処からか聞き覚え(、、、、)がある声が聞こえた。

 次の瞬間、ドゴッ!! と突如ライム達を覆い尽くしていたグール達がまるで爆風に飲み込まれるように一瞬にして四方八方へとぶっ飛んだのだ。

「なぁ!? バカな、一体何が!?」

 突然の出来事にアスピスは戸惑いを隠すことが出来なかった。 

 やがて爆発の煙が薄れて行き中心から数人の人影が確認できた。そう、ライム達だ。しかし、その中でも今まで居なかったはずの人が一名確認できた。

 ラルフは『それ(、、)』に気付いた瞬間、大きく目を見開き驚愕する。

 その人(、、、)はラルフにとって見覚えがある人だった。

 高貴なる長い銀髪に女性のようなぱっちりと純水の如く透き通った目の色。一切の汚れも許さない純白な服装。腰には日本刀らしき武器が短刀含め二本ぶら下がっていた。

「ったく、来て早々こんな事になるとはね……本当に何やってんだか」

「なんで……どうして、ここに来たんだよ!!」


 そう、()の正体はルイス……では無く、それに紛した『エダ』であった。

 なので一応補足するが、彼は男だ。


「何って、暇だったからだよ」

 平然とした顔でエダは話しながらラルフへと近づく。

「暇って……ここは、今お前が来て良いところじゃねぇ!! 早くどこかに逃げろ!!」

「でも、お前割とヤバかったじゃねェか。もしもボクが来なかったらお前らの仲間死んでたぞ?」

 エダの言葉にラルフは一瞬、息が詰まる。

「……ぐぬぬぬっ!? 貴様ぁ……よくもおおぉぉぉぉ!!」

 呻き声が聞こえる。声の主はアスピスからであった。

「どうしたァ? 大事な死体をぶっ殺されたから逆上したのか?」

 冷酷な表情でアスピスを見るエダ。そこには、これまでに無いような圧倒的威圧感が肌で感じられた。

「許さん……貴様ら、絶対に許さんぞおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 怒りに狂ったアスピスは両手を大きく広げ指先にマナを滲ませ、一気にとある魔法公式(プログラムルーン)を書き切った。

 直後、地上から大量の魔法陣が出現しこれまで類を見ないような数のグールが一瞬にして現れた。

 ラルフとエダの二人はその光景を眺めながらこんな会話をしていた。

「ライム達は、大丈夫なのか?」

「ああ、ボクの高スペック【守護結界】を張って置いた。もう下手なことでは壊れねェよ」

「ならよかった」

 ラルフは安堵したのか胸をなで下ろした。

「それにしてもどうするンだ? この数……多分魔法公式(プログラムルーン)で絶対に『(無限)』のコード記入したよな……」

「多分な、そうされたら術者が死なない限り止まらないぞ……どうするんだ?」

「どうするって……もう実際する事は決まったようなモンだろう?」

「そうだな」

「……やるか?」

「ああ、二年ぶり(、、、、)にやりますか」

 二人は一度ハイタッチを交わしアスピスを睨め付け――

 そして言う。


「「さあ、レベル上げ(レベリングオート)の時間だ。三下ァ!!」」



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