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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
38/50

堕天使の使徒(デモ=ラドロ)

頑張って1章〆切りまでには完結させます。


「さて、邪魔者はいなくなったところで――」

 ガレットは右手に持つ『核石(セミ=クリスタル)』を懐に一度仕舞うと、簡単な魔法公式(プログラムルーン)を空間に書く。

《「――『解除』」――unlock》

 起動言語を紡ぐとガレットの周りに黒い魔方陣が発生する。直後、陣から光が発生――みるみるとその光はガレットを飲み込んでゆく。

 ――やがて、光は薄れる。

 そこには――

「アナタ、まさか……ア、アスピス……!?」

 6人の中でまず真っ先に声を出したのはライムだった。

 男性で肩ほどの真っ黒な長髪はゴムで一本に結ばれておりダークコートを身につけ、腰には細剣(レイピア)が取り付けられていた。耳には特殊なデザインを施された真っ黒な鍵が飾れていた。

 ラルフはその『鍵』を見た瞬間、何かを思い出したのか憎しみに満ちた眼差しでアスピスを睨め付けた。

 彼の表情を見たレクティアはそっと話しかける。

「ラルフ……どうしたの?」

「何故だ……何故『あのギルド(、、、、、)』がここにいるんだよ……『あのギルド(、、、、、)』は昔、(エダ)が全員ぶっ殺したハズじゃ……」

 ラルフは歯をギシギシと軋ませ手を強く握り締めた。まるで過去の恨みの塊が彼の目の前に現れたかのように……。

 彼女は、まるであの時(、、、)の事を思い出したのか背後から凍てつくような感覚に襲われ足が竦む。

「これはこれは、あの時から二週間ぶりだね……ライム」

 アスピスは、ライムに目を向け紳士のような口調で話しかけた。

「どうして……どうして……アナタがここに居るのよ!!」

「どうして、って……私は言ったじゃないか、『もう時間切れ』だって」

「っ!?」

 アスピスの言葉にゾッとするライム。気が付けばアスピスが声を一語発する度に震えが止まらない状態になっていた。

 彼女の怯える姿を目の前にしてアスピスは下衆(げす)を見るかのような目でニヤリと笑う。

「私は言いましたよね? 期限は二週間、それに今日がその期限だって……約束は守る物。違うかい?」

「ひっ、嫌っ!?」

 何も言い表せないライムの姿を目にして、ラルフは二人の間に庇うようにして割って入った。

「オイ、てめぇ!!」

「ん、何だい? 部外者の分際で私の邪魔する気かい?」

「当たり前だ。それになぁ、俺はアンタの正体、分かっているぞ」

「ほう、面白いことを言うじゃ無いか……言ってみな」

 ラルフは問われると落ち着きを取り戻すかのように一度大きく深呼吸する。

 そして――

「……『堕天使の使徒(デモ=ラドロ)』そうだろう?」

「な……!?」

 ラルフの数文字の一言に一瞬アスピスは顔を歪ませた。

 堕天使の使徒(デモ=ラドロ)。それは当時サービスが開始されて間もない頃、最も問題となった非道ギルドだ。当時の情報だと総人数は約5千人所属していると言われていた。主に奴らは集団PKで、格下の核石人種(プレイヤー)を襲いアイテムやお金を奪い取り、自分を強くするためであればなんでもする奴らだ。かつてはゲーム内だけでは飽き足らず、ましては現実世界で恐喝や暴行事件、最悪には殺人事件までも起こし、データを奪ったりなどとするいう事までもやっていた。

 しかしそのギルドは二年前、たった一人の核石人種(プレイヤー)によって壊滅した。

 そう――当時のトップランカー『ルイス(エダ)』によって。

 だからラルフは知っていたからこそ、その表情をしていた。

「その反応だとやっぱ図星みてぇだな。ばっくれても無駄だ、アンタの耳に取り付けられている『飾り』がある時点でもう言い逃れは出来ねぇぞ」

「はははっ」

「何がおかしい?」

「いいや、まさか……君の口から『堕天使の使徒(デモ=ラドロ)』という名前が出るなんて思わなくて……流石に『これ』でバレたら、認めざる負えない」

「どういうことだ、お前らはとっくに消えたハズだ。何故今ここに居るんだ!!」

「何故って、生まれ変わったんですよ……」

「どういうことだ?」

「言葉の通りさ。我々『堕天使の使徒(デモ=ラドロ)』は、活動を再開したのだ!!」

 アスピスは両手を大きく広げ不気味な笑みを浮かべながら叫んだ。

「ふざけんな、冗談も大概にしろよ。お前らが存在するだけでどれだけの人間が死ぬと思っているんだ!!」

「そんな物、我々にとっては知ったことではありません」

「はぁ!?」

「『強くなるため』であれば、我々はどんな手段も選ばない。たとえそれが犯罪だとしても……です」

「クソ、この屑が……一回本気でぶん殴らせろ」

 ラルフ両方の剣を抜きアスピスに構える。

 するとアスピスは、懐から2つ(、、)の『核石(セミ=クリスタル)』を取り出した。

 ライムはその二つの『核石(セミ=クリスタル)』に見覚えがあった。

「あ、あれは……!!」

 ライムは『それ』に気が付き咄嗟に叫んだ。

「ここに二つ『核石(セミ=クリスタル)』があります。因みに貴方は知っていますか?」

「何を、だ」

生きた状態(、、、、、)で『核石(セミ=クリスタル)』を抜き取った場合どうなるかを」

「……お前、今持っているのはまさか――」

「ええ、そのまさか(、、、)ですよ。この二つは貴方の後ろにいる女性の関係者の『核石(セミ=クリスタル)』です」

 チッ、とラルフは一度舌打ちをする。

「……脅迫か?」

 忌々しげな声でラルフは問う。

「それ以外に何かあるとでも? 申し訳ありません、一度貴方の持つ物騒な物を仕舞って頂けませんか?」

 余りの悔しさにまたもやラルフは舌打ちをし、一度剣を元に戻した。

「有難う御座います。これ結構壊れやすいので(、、、、、、、)

「汚い真似しやがって」

 すると、その場にいた。レクティアが何を疑問に思ったのかラルフへそっと話しかける。

「ちょっと待って、『壊れやすい』ってどういうことよ?」

「ああそれはな、まず聞くが『核石人種(プレイヤー)』のHPが0になったときに『核石(セミ=クリスタル)』になるが、その時に『核石(セミ=クリスタル)』に特殊な保護が発生することは知っているか?」

「まあ、それ位なら……」

「どんなに強い剣でも魔法でも一切傷が付かなくなる。しかし、それは『死んだ』場合にのみ発生するんだ。故に『生きた(、、、)』状態であればどうなると思う?」

「……ま、まさか。その逆だって事なの!?」

「正解。そういう事だから今の奴が持つアレはガラス玉レベルにもろいんだよ。しかも最悪なことに、彼らの意思データもあの中に閉じ込められている」

「そ、そんな!?」

「今頃彼らは、現実世界ではハード機器を取り付けたまま植物状態って所か。畜生、面倒くせぇ事させやがって」

 2人は言うだけ言うとアスピスの方に顔を向けた。

「俺らをどうする気だ。テメェ」

「ん? 最初はアナタ方の核石(セミ=クリスタル)を頂こうと考えていました。が――」

 ド直球な彼の答えに彼らはゾッとする。

 するとアスピスは右腕をラルフ達に突き出し人差し指を立てた。

 そして言葉を付け足す。

「本当は貴方(、、)の『核石(セミ=クリスタル)』が欲しかったんですよ?」

 アスピスが指を向けた先、それはラルフ……では無く――

「レクティア。貴方ですよ……」

「えっ?」

 瞬間、この場にいた人間全てが息を飲んだ。

「貴方の『核石(セミ=クリスタル)』はこのワールド上の中でも唯一無二の存在でもあり……且つ全ての『核石人種(プレイヤー)』が喉から手が出る程欲しい物」

「わ……私の核石(セミ=クリスタル)が欲しい? アンタ、何を言って……」

 レクティアは戸惑いを隠せない様子で震えた声で発声した。

「ここまで言ってまだ分からないのかい? なら教えてあげようか、貴方の『核石(セミ=クリスタル)』を」

「わ、私の……」

 瞳孔を大きく開きアスピスの話を聞くレクティア。

神の結晶(クリスタル)さ」

「アスピス、てめぇ嘘つくのも大概にしろよ!! ……レクティア、今のヤツの言った言葉は忘れろ。良いな?」

「う……うん分かった、わ」

 直後非常に強張った口調でラルフは警告すると言わんばかりに再度剣を引き抜いた。

「まあまあ、そう興奮しないで……とりあえず貴方が嘘だと言い切るのであればそういう事として解釈しても良いでしょう」

 軽く笑いながらアスピスは言った。そのまま彼は調子を取り戻すかのように軽く息を吐くと、言葉を付け足すかのように言葉を放つ。

「しかし、気が変わりました。せっかくですし私とゲームをしましょう」

「ゲームだと?」

「はい、勝てばこの二つの『核石(セミ=クリスタル)』はお返ししましょう」

「本気で言っているのか?」

「本気です。ただし負けた場合、アナタ方の核石(セミ=クリスタル)全て『生きた状態』で頂きます。因みに拒否権はありません」

 アスピスがそう言うとパチンと指をゆっくり二度鳴らした。

 直後――、この場にいる全ての者の足下から水色の魔方陣が出現する。

「な、なんだ!?」

「強制転移です。ここでは流石にアレなのでもっと広い場所でやろうと思いまして。特別ステージを用意しています。そこでやりましょう」

 そこまで言うとアスピスはまたもや二度指を鳴らす。


 次の瞬間――


 この場の全ての景色が変わった。



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