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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
36/50

第2ラウンド・終了

ラストスパート

「ぜぇ……ぜぇ…………ッ!!」

「ゲフン……ゴホォ、ゴホッ!!」

 世紀の第2ラウンドが始まってからおよそ15分、二人の活動は限界から既に大幅に超えていた。

 未だかつて無いほどの疲労が四肢へと、まるで重りを取り付けられたかのような感覚が波のように響く。

 しかし、二人に休息などという時間など無い。

 どちらかが『隙』を見せれば確実に『(セミ=クリスタル)』は確定。今はそういう状況なのだ。

 クトラは大きな両手剣を手慣れた様子で横から豪快に振りかぶる。

 狙いは首、『核石人種(プレイヤー)』が持つ最大の弱点の一つだ。

 しかしラルフはまるで流れる川のように華麗に首と刃の差10センチの所で回避。

 そのままラルフは、その一瞬の間で両手に持つ剣を構え反撃に出る。

 片手剣のため両手剣のような重い一撃を繰り出すことは出来ないが、マシンガンのような連撃(ラッシュ)を繰り出すことは出来る。それが片手剣装備の一番の強みなのだ。

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!!!!」

 外れてもいい、貧弱なダメージでも、何だっていい。だって、最初(ハナ)から当たれば良いのだから。

 だけれども。

(クソッ、いくら俺の攻撃が通ったとしてもヤツの最大値が多いお陰で一向に減らねぇ!!)

 このままでは埒が明かない。

 ラルフがまだ『エダ』に支配されていた時に作成された特殊魔法【ジャック・ナンバー】の補助によってこの『状態』を維持出来ているが、増幅されたのは攻撃力と素早さのみ。因みにこの二つのセレクトはいかにも生前の『エダ』好き好むスタイルだった。昔ラルフがルイスとして活動しいた頃、彼はレベルアップのステータスボーナスにて必ず均等にその二つにガン振りしていたのだ。

 しかし、生憎だが今の彼はエダでは無い。

 出来れば自分のやり方でステータスを振り直したいところであるが、実際この状況で出来なかった。

 それはクトラとの戦闘(第2ラウンド)開始寸前ラルフは、自分のステータスを確認していた。

 当然その中には【ジャック・ナンバー】についても書かれてあった。

 しかし、能力の内容は複雑だった。

 一応、主な詳細については理解したがこの(、、)内容に関しては、異常に面倒だった。

 それは、割り振るステータスを変更する場合、一度能力を解除し再度新しく(、、、)制作し直さなければならないのだ。

 故に、その能力の詳細を知った以上。変に解除することなんて出来なかったのだ。

 それに、元の固有特性(パーソナルアビリティ)、『能力錬金(オリジナル)』の『制限』――存在しない力しか作成することが出来ないこと、そして一週間に五つまでしか作成する事が出来ず一週間経てばリセットされること――についてもあの時、既に把握していたのだ。

 だから、今この間だけはなんとかしてこの状態で倒すしか他ならなかった。

 ラルフは右手の木刀、左手のナイフを握り締め――

 刹那の如く。

 右手を、そして左手を交互に――

 反撃の隙を一切与えないように――

 木刀を天から地へと叩き付け、ナイフを右から左へと大きく弧を描くように振り回し更に追い打ちを掛けてゆく。

 しかし、ラルフの攻撃は何故か一向にヒットしない。

 そう、クトラはラルフの連続ラッシュをなんと両手剣で悉く退けていたのだ。

(コイツ、あんな大きな両手剣でどうして俺の攻撃防げるんだよ!?)

 ラルフがそう思った、しかしその時であった。

 クトラの右手の人差し指から赤い光が滲み出し、文字を書いている姿が確認できた。

「ちっ――!?」

 ラルフの舌打ちと同時にクトラの唱える魔法の正体を察する。

《「――『消えろ』」――0Rx→delete》

 火炎(フレア)属性魔法【フェニックス・レイ】。

 真っ赤な凝縮した熱エネルギーが一つの光となって放たれる一撃は、まるでレーザーのように一直線に突き進み、接触する全ての物質を貫通する高等魔法だ。

 クトラの右手をラルフに向け、甲から円状の魔方陣が展開され中心から赤い光が徐々に集まってゆく。

 距離はほぼ零。

 発動すれば回避は不可能。

 だが、ラルフは一つあることに気が付いた。


(――狙いが、俺の顔に集中している!?)


 胴体であれば無理であったものの幸い顔に意識が集中していたため、咄嗟にラルフはある行動に出る。

「何ッ!?」

 発動する寸前、ラルフは頭から一気にしゃがみ込んだのだ。

 直後、しゃがんだ時の勢いを殺さず、流れるようにクトラの足首を掛け、まるで鎌のように払いバランスを崩し転倒させる。

「もらったあああぁぁぁぁぁ!!」

 その一瞬を見逃さなかったラルフは一気に間合いに入り込み両手の剣をコマのように振り回す。

「がっ……!?」

 結果はヒット。

 重い一撃(ダメージ)がクトラに入った。

 クトラは大きく舌打ちをすると、すぐに立ち上がり今度はクトラの攻撃へと変わる。

「舐めるなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!」

 彼の攻撃はこれまでとは比べ物にならない程強靱な物へとなっていた。

 クトラが一回剣を振るごとにまるでLv5の【ウィンド・ランブル】に匹敵するほどの威力をもった風が鋭く襲いかかってくるかのようだった。

(これでは、上手く避けられても風で飛ばされてしまう……。クソッ、やるしかないのか(、、、、、、、、)!?)

 ラルフは歯を強く噛み締め、覚悟を決めたのか左手のナイフを一旦鞘に仕舞う。

 その後、フリーになった左手は人差し指を立てマナを滲ませる。

《「虚無の精霊よ、――」∅=Ⅰ/LvⅢ/――》

 右手を口に押さえ何を唱えているかを察しられないようにし必死に魔法公式(プログラムルーン)を書き進めてゆく。

《「――――」――――》

 そして、最後の一文字を書けば魔法は完成する。その時だった。

 チリンチリンと突如メッセージの受信音が鳴った。

「!? なっ!?」

 突然の出来事にラルフは一度詠唱を止めてしまう。

 その後自動でウィンドウが展開され文面の内容がラルフの視線に映し出された。

 本文には次のように表記されていた。


『【守護結界】を頭上に今すぐ張って!!』


 メッセージの送り主は、匿名でも何でも無い。なんとレクティアからの物であった。

「なんであいつが……? ――って、危なッ!?」

 そうしている間にもクトラの攻撃は怯む事は無くひたすら攻撃を続ける。

 しかしやがて、ラルフは剣の風圧で後方へ拭き飛ばされ強く壁に背中を打ち。横たわる。

「うっ……が、ガハッ……!?」

 背中を強く打った影響により肺が締め付けられるような痛みが起こり上手く体を動かすことが出来なかった。

 だけど、それでも手だけは動いた。

(クソ、賭けるしかないのか!?)

 『ならば』と、ラルフは思い切り――

 強引に手からマナを発生させ、魔法公式(プログラムルーン)を書く。

「どうした? ……何故今になって貴様は【守護結界】を張ろうとしているんだ?」

 経過を見られ何を唱えようとしているのか、察した様子だった

 何も知らないクトラは今のラルフの姿を見て鷹を括っているかのように話しかける。

 そう、彼の口調はまるで勝利を確信したかのような物だった。

 ラルフはそれでも、なんとかして魔法を完成させ【守護結界】を張る事に成功する。

 無駄なあがきを……クトラはそう思いながらゆっくりとラルフの方へ近づいて来る。

 しかし、ラルフは何故か笑っていた(、、、、、)

「何故、……ねぇ……まあそれは――」

 ラルフがそう言いかけた。後の出来事だった。

「一応、仲間を信じているからさ……」

 ヒュン、と。

 二人のいる遥か先――展望台の頂上にて突如上空へ一閃の『光』が放たれたのが見えた。

 すると、何故か段々とその『光』は一つなら二つへ――、四つであれば八つへと倍に数が 次第に増加していくのが遠くからも確認できた。

「な、何だ……!?」

 呆然とした様子で『光』に目をやるクトラ。

 ラルフは『光』をよく見るとその『光』はいくら何でも細すぎるように感じた。

 直後ラルフはあることを思い出した。

(これ……光ではなくて、矢ではないか?)

 彼が思い出すきっかけとなったのは、今から数時間前の事。ラルフとレクティアが『デッドリー・ドッグ』から救われた時た。

 この時助けてくれたのはセピアだった。装備はヒーラーでありながらも弓矢使いというアンバランスの極みであったがセピアの弓は確かに凄かった。何故ならあの足が速い『デッドリー・ドッグ』をこの(、、)スピードにも関わらず正確無比に一発(、、)で全てを仕留めることが出来たのだから。

 だから、


 だから……

 彼の、勘が正しければ……

「もう、チェックメイト(、、、、、、、)じゃん」

「貴様、何を言っているんだ?」

「後ろを見ろよ」

「な、何?」

 結果は、正解。

 飛んでくる全ての光の正体は矢だった。

 実際ここまで大量の矢を受ければ守りもクソもない。

「残念だったね。ここまで来られたのは初めてだったけど……俺の勝ちだ」

 そして最後 、何度も何度も分裂し続けやがて何千万にも及ぶ大量の弓矢がクトラの胴体へと貫かれ――


 勝負は決した。


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