全ての元凶――『彼女』の二週間前の悲劇――
超重要話です。
一つ、私――ライムの話を聞いて下さい。
この日、私は友達の『ミネ』と共にとあるダンジョンクエストを攻略していました。
内容は、資材回収。ダンジョン内のモンスターも私たちに対して余裕があるようにして調整し挑んでいました。
そして、いつものように何事も起こること無く事が進むと思っていました。
しかし、事件は起こりました……。
そこは暗く、そして寂しく、地獄の様な光景が広がっていました。
これまで出たことが無いようなありったけの声が咆哮の如く鳴り響きます。
「返して!! 私の友達を返してよ!!!!」
私は、地べたに横たわっていました。
体の至るとこには無数の細長い刺し傷や引っ掛かれた傷を付けられあまりのダメージにより魔法を唱えられるような気力もありませんでした。
私の目線の先には、奇妙な笑みを浮かべたダークコートと細剣を持った男の姿があった。右の耳朶には独特のデザインが施された真っ黒な鍵がイヤリングとして付けられていました。
おまけに、彼の右手には――
「貴女の友達の核石、確かに頂きましたよ」
ダークコートを羽織った男の足下すぐ側には、うつ伏せに倒れた蒼い長髪の女性の姿がありました。
「今アナタ何をしたのよ……」
「何って、『死んでいない状態で核石を抜き取った』それだけですよ」
彼女の姿はまるで死んでいるかのようでした。顔はまるで魂が抜けたかのような暗い目をしていて、髪は荒れ、口からは『セミ=ブラッド』が蛇口から漏れた水の如く流れ出ていました。腹部には腕丸々入りそうな程の穴がぽっかりと空いており所々えぐられた痕が残っていました。彼女の長い頭髪は彼女の酷い傷を隠すかのように体を覆っていました。
「アナタは一体何者なのよ、それに彼女をどうする気なの!!」
「何者? ……私はアスピス、どうもお見知りおきを」
紳士的な言葉遣いでライムの問に答えながら軽く会釈をする男、すると彼はそのまま続けるように、――
「それを答えるよりもまず先に私の『計画』に参加してくれるか。してくれないかを判断していただけませんでしょうか? さもなければ『この子』はどうなっても知りません、とでも言っておきましょうか」
突然男から放たれた言葉、それは要約すれば一種の半強制的に架せられた『取引』の様な物でした。
直後男は、かつて私が聞いた中でもとんでもない固有名詞を口にします。
「神の結晶……言葉くらいはご存知でしょう?」
彼女がその言葉を耳にした瞬間ハッと息を飲んでしまいました。
「アナタ、一体何を言ってるのよ!! 神の結晶なんて……もう3つ目は事実上もう存在しないはずじゃ……ッ!?」
「そう、確かに貴女の言うとおり二つはあの『ルイス』に先に越され獲得クエストは今では存在しない。しかし今、『情報』があるんですよ」
「情報……?」
「ええ、貴方達の降り立った最初の場所『始まりの町・イニティアム』にて今現在ネット上で3つ目の存在の噂が出ています。貴女にはそれを回収していただきます。期間は、そうですねぇ……二週間にしましょう」
「た、たったの二週間……無茶言わないで!?」
「私は待つのが特に嫌いでね。どうしますか『核石』はもう諦めるのですか?」
男の一言に、私は何も言い返すことが出来ませんでした。
「実を言えばあなた達の友人関係は大体こちらで把握しております。貴女の兄は、中規模レベルのギルドを運営しているらしいですねぇ~」
「アナタ何でそれを!?」
「流石に一人だけでは不安とこちらも思いましてね。ちょっとした気遣いを――」
「ふざけないで!! 私の兄に余計な迷惑を掛けたくない!!」
「残念だ。じゃあ、精々頑張りなさい。いま『この子』がいない君に今何が出来ると言うんだい?」
「くっ!?」
私は悔しさに溢れ、皮肉ながらも頷くように首を縦に振りました。男は私の姿を見て大きく目を見開きにやけます。
私は、衝動的に最後の力を振り絞り傷んだ腕を強引に男のいる方向へと向けマナを滲ませました。
「ん、脅しでしょうか? まあ良いでしょう、ほ~ら、折角の良い機会です。泣き寝入りしてお願いでもしてくれば良いじゃないでしょうか?」
「い、嫌だッ……私は自分の手で今アナタを討つ!!」
「ほう、その屈辱的な状況の中で私を討てるとでも?」
「討つ……絶対に!!」
私が掠れたような声を放つと、男は笑いながらそっと私の居る方向に右手を突き出し中指と親指を擦り合わせます。
直後――
「クズが」
パチン! と、指が鳴る音がこの辺りを響かせました。次の瞬間、私の居る八方向から真っ黒な魔方陣が発生、その中から各一体ずつアンデット系のモンスターが出現します。
彼らは、白目を剥きまるでゾンビのようにゆっくりと私の方向へと近づいてきます。
「何!? 『グール』――何で……アナタ詠唱は!?」
グールは、アンデット系モンスターの中でも上位に分類されるモンスターでした。推定レベルはおよそ350程とされ特にとてつもなく素早く討伐しづらい事でも有名です。
「ご名答、私はね固有特性が特殊でねぇ。面倒な詠唱をパスして簡単な動作でモンスターを呼び出せる『能力』なんだ。例えば今みたいにね。さあショータイムだ。君の無様な姿、見せてくれよぉ!!」
私にとっては格下の相手であるが今のこの状況、この体でパッと動いて戦えるという事は到底出来ることではありませんでした。
男はまるで私の置かれている状況を見てお笑いを見ているかのように笑っていました。私は悔しくて仕方がありませんでした。
「この……鬼畜っ、がぁ……」
絶望に心身が染め上がり私は呆然としながらもそんな事を口にしました。
しかし男の返答は、
「ああ、よく言われるよ。――二週間後、楽しみにしてるよ」
それが彼と話した中で最後に聞いた声でした。
次の瞬間、私はグールに襲われ『石』に、俗に言う強制ログアウト、実際その後の事はよく覚えていません。
――因みに男の言う期限はあれからして残り24時間を切りました――
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