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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
33/50

絶体絶命の窮地に追いやられたけど何か文句ある?

遅くなりすぎました

 そこには、未だかつて見ることの無いような業火の嵐があった。

 クトラの詠唱した高等魔法【プロミネンス】により今まで火とは殆ど無縁だったレンガ床から突然赤い魔方陣が発生、直後噴水の如く吹き上がりそれが『溶岩の塊』となって降り注いできたのだった。

 この魔法を向けていた先、それは一人のラルフという少年……本来であれば相手にならなかった筈のLv1の核石人種(プレイヤー)なのだ。

 当然、初見でこの光景を見てしまえば驚愕以外の言葉なんて見つからない。

 故に現実的に見てその光景を例えるならば一枚のティッシュペーパーに火炎放射器を戦わせてどちらが勝つかという最初から分かっている試合を見物するかのような物なのだから……。

 それ位の事だったのだ。


 やがて――時は来る。

 

「さあ……これで終わりだああぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 クトラは、喉からありったけの声を出しながら魔法公式(プログラムルーン)の詠唱を誰よりも早く成功させ、直後叫びと共に『起動言語』を紡いだのだ。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ――――!! と、地響きのような騒音が辺りを埋め尽くす。

 このまま行けばラルフが助かる確率は完全なるゼロ。


 誰もが、分かりきっていた――


 誰もがクトラの勝利を確信していた――

 

 なのに……


 なのに…………!!


 直後の出来事だった。

 クトラがラルフと対峙して聞いたことの無い、クリアな声が聞こえた。

「――終わるなんて、誰が言った?」

 刹那、ビュンッ!! という突風が発生する。

 次の瞬間――

 パァーンッ!! という音と共に降り注いでいた溶岩の塊がまるで的に置いたリンゴを実弾で打ち抜かれたかのように弾け飛んだ。

 溶岩の塊はまるで手榴弾の如くラルフの頭上を中心に四方八方へと、飛び散っていた。

 ラルフは咄嗟に【守護結界】で遮る。

 当然その塊はクトラにも向かってくるが、持っていた剣で守る。

 暫くしてクトラの目の前に二本の安物の武器を持ったラルフの姿が確認できた。

 彼のその姿は、よく見ると先程とは大きく変わっていた。それはラルフの表情から読み取れる事だった。少し前までは片眼が赤く光らせ、まるで愉快に人へ刃を向けて振るう殺人鬼のような顔で戦っていたのに、今となれば『それ』自体は全く以て消え表情も人間らしくなっていたのだ。

「――は、はぁ……はぁ……っ」

 まるで『危なかった』と言わんばかりにラルフはナイフを持った左手で額や頬の汗を拭う。

 そう、彼は『退けた』のだ。あの高等魔法をあの体、あのステータスで……。

 突然の出来事にクトラは驚愕し戸惑いを隠せなかったのか彼の瞳孔は大きく開き、干上がるような声で言う。

「き……貴様ぁ!? 今、何をした!?」

「――何って、軌道(、、)を変えたのさ」

 ラルフは、息を切らすような声で言葉を返した。

「軌道だと?」

 クトラの脳内では彼の言葉を聞いて『発動している魔法の軌道を変える魔法』の存在について考えていた。

 今現在、CWO上にてその様な事が出来る魔法は【コース・ブレイカー】の一つしか無い。出来るとしても、それはそれなりの技術(、、)が必要だ。

 しかし、ラルフ自体はそれをしないとは限らなかった。何せ無傷で何十人とのLv270の核石人種(プレイヤー)と対峙してもここまで来たのだ。そう考えて見ればそう想定するのが正しいのかもしれない。

 だが、それには一つ違和感があった。

 仮として本当にその魔法を使ったとするのなら、なぜ弾け飛んだ(、、、、、)のだろうか?

 その魔法の軌道は本来であれば一方向(、、、)しか変えることが出来ないはずなのに何故弾き飛ばせる(、、、、、、)ということが出来たのだろうか?

 クトラは考える。

 しかし、その答えはラルフの口から放たれた。

「「存在してなければ……創ってしまえば良い(、、、、、、、、、)

 瞬間、クトラはハッとなる様子で脳裏にあることを思い出す。

 それは数時間前、仲間から彼の元に届いた一通のメッセージだった。

『――みた事の無いのうりょくだった。軍勢も一気にきえた。――』

 内容から見ててそのメッセージは他にも所々に誤字や無変換が目立っていた。おそらく察するにラルフに倒される寸前、咄嗟の思いで送信した物だと思われる。


 つまり、ここまでヒントを出されれば――、だ。

 少し頭を捻って考えて見れば、答えは一つしか無いと言いきれるだろう。

「――貴様ぁ!! まさか――っ!?」

「そう、その『まさか(、、、)』だよ」

 ラルフの返答は単純そのものだった。

「最初は、もちろん焦ったさ。何せ俺の頭上から溶岩の塊が降ってきたもの……でも――」

 言いながらラルフは左手でメニューウィンドゥを開き何回かの電子音が聞こえた後にそのウィンドウをクトラへ見せた。

 そこには、

「ば、バカな、こ……こんな固有特性(パーソナルアビリティ)聞いたことが無い!?」

「――『アイツ』のおかげで、助かった。そう、ここに来るまでずっと……」


『【能力錬金(オリジナル)】経由・作成魔法3/5:【ダイバージェンス】=敵が自分を対象として放った魔法及び物理攻撃を強制的に分散させる』


「くっ!? チィ――、ならばもう一度――!?」

 クトラは、またもや同じレベルで火炎(フレア)属性の【プロミネンス】を再度起動させる。

 しかし、結果は……

 パァーンッ!! と、当たる30センチ程前でまたもや悉く弾け飛んでしまった。

 因みにラルフは一歩たりとも動いていない。

 弾けた火は落下の影響で冷え、固まりやがて只の石ころとなっていた。

 ラルフは今の段階で自分の身に危険が無いことを確認すると、武器を持っている右手の人差し指を立たせマナを指先から滲ませる。

 指先から出たマナは青白かった。

「な……何故だ!? 一体どうやって、その力を――!?」

 クトラのその時に出た声は屈辱という感情に満ちていた。一応、ラルフはLv270の核石人種(プレイヤー)を全て退けた程の実力を持っているがステータスであれば一部を除いて何千倍の差があった。にもかかわらず、ラルフはそれよりも差があるクトラを圧倒していた。

「あ? もしかして、情報来てねぇのか? おかしいなぁ~、そんな大軍勢であればそれなりの情報は来てると思うんですけど?」

「……くっ、あいつら……」

 ラルフの言うとおりだった。一応来てるには来ていたが少な過ぎたのだ。情報が。

 『なるべく情報共有をしない(、、、、、、、、)』。作戦を開始する前にそんな事を言っていたことを思い出すクトラ。彼自身それはあくまで他の部隊での混乱を押さえるためにそう命令したのだが、説明不足だったのかもしれない。

「ま、いいや。もうこれで俺はネタバレしたんだ。これでもう――」《「閃光・上級付与」ⅦⅦ=high》

「貴様……!!」

 クトラは皮肉な様子で小さく舌打ちをし、持っていた大剣をラルフに向ける。


 そして、

「――小細工はナシだ」

 双方が爆ぜるように足を蹴り出し、至上最大の第2ラウンドのコングが鳴り、『刃物』同士の鳴る音がイニティアムの町全体へと響かせるのであった。


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