救いし3名の『核石』
続きです
結果を言えば本当に外には敵が居なく邪魔されることなく無事展望台付近に到着した。
ウッドレイクと配合して作ったであろう淡く黄色いレンガが横に何重にも円形に組み立てられており、所々見ると老朽化の影響によるヒビが発生していた。とはいえ、それでもまだ10、20年程の間であれは第三者の意図的な物による攻撃がない限り崩れることは当分ないだろう。
彼女が中に入るとそこには吹き抜けのらせん状階段があった。階段もやはりウッドレイクで出来たレンガが設置され壁際には後で取り付けられていたであろう木の手すりがあった。
窓は無かった。しかし、その展望台には吹き抜けという事もあり天井には屋根がなかった。その為、光は来る人をもてなすかのようにそこから差し込み、照らすのだ。
が、今の状況では光がレクティアをもてなすなんていう暇なぞ有りはしなかった。
光すらそこには無く、夜中に壁際にある夜中にあると自動的に火が着火されるという特殊な力を付与された松明すら火が付いていなかった。
レクティアはそれでも階段を踏み外さないように手すりにつかまり、片手でメニューウィンドゥを開き発生する微かな光を頼りに次々と先へと進んだ。
後に3分も経たない内にレクティアは何とか頂上まで登ることが出来た。
50メートルの高さがある事もあり登る前と比べて妙に風が強く感じられた。
すると、
「貴方が、レクティアさんですか?」
突然の声にレクティアは声のした方向に顔を向けた。
そこに居たのは一人の幼い少女だった。
見た感じ年は13、4という所だろうか……身長的にもレクティアほどの高さだった。水色の透き通った頭髪は一本のリボンで簡単に結ばれており、そして何よりも目に付いたのが少女の装備だ。今いる中でも見ててラルフしか分からないような彼女の中では見たことも無い装備、防具が全身を覆っていた。
瞬間彼女は確信した。
イニティアム内のどの素人が見ても分かるくらいに。
この人は私たちとは次元が違うと。
「……」
不意の問いに少々動揺しながらもこくりと彼女は首を縦に静かに振る。
「良かった……メール見てくれたのですね。私はライム」
「私はレクティア……私が探している物って今アナタが持っているの?」
レクティアがそう言うとライムは左手でウィンドウを開きしばらく指先を動かしていると、突然ライムの左手に3つの輝かしい光を纏った――『核石』が出現した。
「これで間違い無い?」
一個一個手首を180度回しその『核石』をレクティアに見せる。
パッと見ては分かりづらいと思うが実を言えばそこまで難しいという訳では無かった。
何故そう判断できるか、それは『核石』の輝き方による物であった。
核石人種が『核石』になってしまった場合その人の意思は別例
を除いて基本全て『核石』に移行される。『核石』になってしまうと核石だけ残りそれ以外の肉体は全て消滅してしまうのだ。そうなってしまうと言葉での意思表示が出来なくなりその人の身元が分からなくなってしまうという事態が発生していた。
この世には『死人に口なし』ということわざがあるが、実際この仕様に反対する声が大きかった為、その次の文化の新進により『聞く』という感覚と共に何かしらの意思を表すための『輝く』という仕様が追加された。
ライムが持った石をレクティアに見せた瞬間、赤く点滅するかのように光を放った。
それは、その『核石』の人がフレンド、もしくはギルドメンバーであるという証拠だ。
「……そうね、間違いないわ」
レクティアがそう返答するとライムは安心したかのように安堵の息を吐くと、持っていた核石を一定の幅を開けながら置いた。
するとライムは右手の人差し指を前に突き出し、突然指先にマナを滲まし公式を書き記す。
《「恵の精霊よ、汝らの御霊を今ここにて『蘇らん』」Ⅷ=Ⅱ/Lv7/a.0.∀∃turn-relive》
レクティアの聞いたことの無い魔法に一瞬驚愕するも刹那、地に置かれた『核石』に直径1メートルほどの円状魔方陣が発生した。
その直後の出来事だった。
魔方陣の中心にあった『核石』が突然未だかつて無いような輝きと共に突如光の
粒子が彼女らの周りに出現、浮遊し『核石』を軸へとしてそれぞれ集まってゆく、やがてその粒子は人の体を形作ってゆき、ましては衣類や防具までの物なども形成されてゆく。
そして。
光の粒子はまるでフィードのように薄らと消えて行き仰向けに倒れる3人の姿が確認できた。
3人は確定で、スピカ、セピア、ユウであった。
小さく呻るような声と同時に3人はそれぞれ目を開けた。
その光景を見ていたレクティアはふと、こう言葉を漏らした。
「今あなた……何を?」
「回復属性魔法【精霊の宴】、一定の核石人種を各魔法レベルに沿って復活させる。Lv200以上の者でしか唱えられない高等魔法よ」
「凄い……」
簡単にライムは返答してくれるも、あまりの高度な技術に彼女はそう返すことしか出来なかった。
すると、二人の間から一人の女性の声が聞こえた。
「こ……ここは?」
声の主はスピカだった。
そのまま次々とセピア、ユウが起き上がる。
「たしかあの時……私は突然後ろから剣で切りつけられて死んだはずじゃ……」
独り言のようにそう彼らは呟いた。
3人は眠い目を擦りながら周りを見渡し状況を把握し始めた。
直後スピカ達の3人はレクティアの姿を捉える。
「れ、レク!! あなた、無事だったの!?」
レクティアの身体はラルフの【ヒール】のお陰で傷という傷は無かったが、衣類の損傷は所々見受けられていた。
「ええ。なんとか……」
「あれ、ラルフはどうしたの!?」
そういえば、と妙な違和感を抱いていたスピカはそうレクティアに問いかける。
聞くとレクティアは答えるかのように首を真横の方向へと曲げ視線の照準を合わせる。
「あれ……見える?」
言われると他の3人は、レクティアが見ている場所に目を向ける。
そこには……、
「――嘘っ、あれが……ラルフ?」
目の瞳孔を大きく広げ、思わずスピカは声を挙げてしまった。
3人が見た物、それは――これまでの中で一度も見たことが無いラルフの姿であった。
まるで別人のような動きをするラルフ。彼はどこでも買えそうな簡単な武器で相手をしていた。
「彼の相手をしているあの大剣の使い手って誰よ!?」
「それは私が説明する」
聞こえ、レクティアに向かっていた3人は反応するかのように反対の位置にいたライムへと体を振り向く。
ライムは一度深呼吸をすると再度口を開く。
「彼は『虎の刻印』という中規模のギルドリーダー、名前はクトラよ。レベルは823よ」
「Lv823!? ちょっとなんで、そんな相手がラルフと戦っているのよ!!」
「クトラ曰く『これ以上の兵力の消耗は防ぎたい』と言ってたわ」
「どういうこと?」
「私の言った言葉の通りよ」
「……」
彼女の言葉を聞いていたそれ以外の人は素直に黙って聞くことしか出来なかった。
対してレクティアの視線はライムでは無く、燃えるイニティアムの町へと向いていた。
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