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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
1章:後半:最弱方程式 ※証明はされていません
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蟻対獅子はノーハンデ

この話を読む前に前回の『希望と絶望と千Pecの全財産』を読んでから見ることをおすすめします

 イニティアム、飲食店街某所にて、

「はぁ――、はぁ――、はぁ――」

 そこには、とあるレンガで舗装された道を走る一人の少女――レクティアの姿があった。

 走ると同時に現れる肉体の疲労。彼女は息を荒げながら必死にそれとも戦いながら必死に走っていた。

 彼女がそこまでする理由、それは――

「オイオイ!! 何処に行こうとしてんだァ、お嬢ちゃん!?」

 レクティアの背後――そこには数名のLv270ほどの我々にとって高レベル核石人種(プレイヤー)3人の男達が右手に剣を持って追って来ていた。

 走ると言うより正確に言えば逃げていたのだ。

 5分ほど前に起きた『虎の刻印』と名乗る集団、彼らの目的はこの世で幻とも言われている第3の神の結晶(サード・クリスタル)らしい。故に、そのためだけに『システム・ベアリア』と呼ばれるウィルスを利用し、この街イニティアムを地獄と化した。

 証拠として言うのであれば、それはラルフだ。発生直後、その内の男が剣を抜き彼を攻撃した。本来であれば、敵からの攻撃を受けた際HPメーターが減少するだけであるのだが、なぜかこの時だけは違った。

 それは、あらゆるシステムに介入できる『システム・ベアリア』によって常に発動されているはずの『アブソーバー・システム』を遮断し実質現実とほぼ同等な痛みを生ませたのだ。

 走る度に聞こえる生々しい音と、響く大きな悲鳴が聞こえた。レクティアはそれが聞こえる度に目に滲む涙を袖で拭う。

(……一体私はどうすれば良いの――? 私を救ってくれる人はこの世にはもう居ないの……!?)

 道中、道端には原人種(NPC)の生々しい死体と共に核石人種(プレイヤー)の物と思われる『石』がゴロゴロと無惨に転がっていた。

 レクティアはあの時、あの男が言った言葉をふと思い出す。

 それは『システム・ベアリア』による効果で生ませた『ログアウトの禁止』だ。これにより通常HPが0になり『石』になった場合の処置として存在する『強制ログアウト』が発生しなくなってしまったのだ。

 しばらくして、レクティアは走りながら辺りを見回していると細い路地裏の道を見つけた。

(……行くなら、今しかない)

 決心したのか彼女は咄嗟にその路地裏の道に飛び込んだ。

 しかし彼女にとってその決断は賭けだった。なぜなら彼女はこのような道を一度も通った事が無いからだ。故に分からない上に、いつ行き止まりに遭遇するかなんて分からなかった。 おまけにその判断が正しいという確証なんて物もない。

「ちぃ、ちょこまかと」

 男は舌打ちするものの、そのまま彼らは流れるようにその路地裏へと入っていく。

 彼女が入ったそのその道はとてつもなく暗かった。まるで光源を失ったかのように暗く、壁やおいてある樽などの障害物は3メートル程まで近づかなければ到底可視する事なんて出来なかった。

 一応魔法で暗い場所を視覚できるものもあるが、今の彼女にはその魔法を発動する余裕も無かった。

 しかし彼女は、その一瞬の判断で何とか壁との激突を回避するかのように見えた瞬間に右へと、左へとまるで迷路のような道を颯爽と進んでいった。

 だが――どんなに行き止まりや障害を回避したとしてもいずれ彼女にも『限界』と言う物が来る。

「はぁ――、はぁ――――、はぁ――――――ッ!?」

 そう、『体力』だ。

 肺が締め付けられるような苦しさと共に、走っていた彼女の足はもう既に限界を超えていた。

 突如、足に力が入らなくなり次第に体が流れ込むように膝からに掛けて崩れ落ちる。

「ゴホッ――!?」

 嵐が肺を這い出るように彼女の呼吸が乱れる。それは、元の状態までに呼吸を整えるまでは結構な時間が掛かる位だった。

 すると、彼女の背後から3人程の足音が聞こえた。

 同時に声が聞こえる。

「みーっけた。楽しい鬼ごっこはもう終わりか?」

 倒れる彼女の前に姿を現すと、黄色に獅子をモチーフにしたであろう防具を着用しそれぞれの武器を持った3名の男が歩いて来た。

「……っ!?」

 レクティアは目を剥き瞼をブルブル震わせる。

 とっさに逃げようにも足には力が入らず彼女の意思通りには動くことは無かった。なぜと聞いてもそれは言うまでも無いだろう。

「あっ……ああ――、」

 あまりの恐怖に頭の中で出来てるはずの言葉が口から上手く出ず詰まってしまう。

「どうした? あまりに怖くてまさかの失禁か? アハハハハッ――!!」

「い……嫌っ……」

 彼女の中で、この状態で初めて言った言葉がそれだった。

 真ん中に居た両手剣を持ったLv270の体格の良い大男がそう言い笑うと流れるように他の2人も無邪気な子供のように笑っていた。

「やめて――、来ないで――」

 声が震えながらも彼女は懸命に訴える。

 しかし3人は彼女の言葉に立ち止まること無く颯爽と近づいてくる。

 レクティアは腕の力をありったけ使い、後ろへと引き下がる

 が、その時だった。

「何処へ行くのかなぁ!?」

「ガハッ――!?」

 突然彼女の足に鋭い激痛が走る。

 レクティアは咄嗟に激痛の起った右足首を見た。

「な……何よ、これ、――まさか……ち、血……なの!?」

「どうだ? 感じるか、この痛み?」

 彼女は湧き出るように出る傷口の血を見て目を剥いた。

 すると男は刺してあった剣を抜き、改めるように、

「2回目行っちゃおうかなぁ!?」

 今度は左足の付け根をまた突き刺した。

 直後彼女の喉の奥深くからありったけの悲鳴が辺りを響き渡らせる。

「良いね良いね。超良いねぇ!! 刺されると共に生まれる果てしない激痛と悲鳴、の共鳴(アンサンブル)、最高だよぉ!!」

 罪悪感も無しに大男はただただ人に剣を刺して高笑ってた。

 狂っている。レクティアはそう思った。

 そしてまた、大男は足に刺さっていた剣を抜く。

 今度は血管に影響が来たのか、まるで吹き上がるかのように血が出てきた。

 気が付けば数分前に買った純白の聖ローズ学園の制服は所々まるで大陸のように自分の血で染め上がっていた。

 レクティアは吹き上がる血を必死に両手で押さえながらひたすら悶絶する。

「アハハハ――!! ……あーあ、もういいや、なんか飽きてきたわ。いい加減殺ろうかなあ」

「っ!?」

 突然の男の気分変わりにレクティアは、はっと息を飲んだ。

「ど、どうして……?」

「あ?」

「一体どうして……こんなこと、するのよ……」

 涙ながらに震えた声のままレクティアは問いかける。

「はぁ? そんな物お前が知ってどうするんだ?」

「いいから答えてよ!!」

「チィ、うるせえ女だ」

「うるさい!!」

「……ハァ、もう面倒臭いなぁ。まあ冥土の土産くらいには教えてやるか……」

 男は大きくため息をつくと、淡々とした声で、

「全ては『あの方』の為さ」

「あ、『あの方』……?」

「そうだ。我々の全てと言っても過言でもない者――クトラ様さ。」

「クトラ……って誰よ……」

「フン、まさか偉大なるクトラ様を知らないなんて……なんとも哀れな者だ。まあいい、クトラ様は我々Lv270程の我々をレイドPVP戦やモンスターなどで圧倒的格上の者を誰人一度も『石』にさせずに勝利を収められる我々の中で最強(、、)に値する者さ。」

「そ……そんな者がここに?」

「そうさ、そしていずれ我々はクトラ様の指揮にさえ従っていれば、あの現トップランカールイス(、、、)だって倒すことなんて難しい事でないぃぃぃッ!!」

「ルイスって……まさか、あの!?」

 レクティア自身も男の口から放たれた『ルイス』という言葉に彼女は聞き覚えがあった。

 しかし実際は、彼女の中ではあのCWO至上最高峰の大会『クリスタル・レイロード』を4連勝の記録を叩きだしたトッププレイヤーであることしか知らないが。

「まあ、この最終的な目的は主にこの街のどこからかに存在する『第3の神の結晶(サード・クリスタル)』のみだ。我々を邪魔する者、そして反逆者は即粛清だ」

「嘘よ。3つ目なんて何処にあるかなんて聞いたこと無い!」

「黙れ、……故に我々の前から姿を消した者は『反逆者』と見なすこととする」

 彼女の叫びに対して男はその言葉を簡単に切り落とすと当たり前のようにサラッととんでもない言葉を口にした。

 とんだ判断基準である。

「嘘……」

 レクティアは男のその言葉にあまりの恐怖に刺された足の痛みを忘れて呆然としていた。

「今更何を言っているんだ。ここまでやって逆にお前はそれが嘘と言い切れるか?」

 レクティアは反論できずにただただ息が詰まってしまっていた。

「……嫌だ……やめて、殺さないで……」

「まだそんなくだらない事を言ってるのか? 何、安心しろ『石』さえなってくれれば用済みだからさあ」

 そう言いながら男は持っていた大剣を両手で持ち直し彼女の側で大きく真上へと振り上げた。

「まあ、最後に俺からもう一つ教えてやる――」


 ――彼女の中でその先に見える未来はおそらく一つしか無いだろう。

 ――待つ未来は紛れもない『()』。

 それしか考えられなかった。

 逆にあるのなら面と向かって話を聞きたい位だ。


「――弱き者に権利(、、、、、、)なんて無い(、、、、、)

 その一言の直後、振り上げてた剣を振り下ろした。

 直前に……レクティアは歯を強く噛み締めながら目を閉じた。

 レクティアは後悔した。どうして自分はここまでレベルが低かったのか、もっと沢山の経験を積んでおけばこんなザマにはならなかったはずなのに……。故にその『死』の先に何があるのかなんて知る由も無かった。

 仮に抵抗するとして魔法を唱えようとしても、彼らにそれが通用するとは限らない。

(何で……、これが『強さ』という物なの……?)

 彼女は(つむ)(まぶた)の間からわずかな『雫』が流れ出た。

 レクティアは己の弱さと言う物をただ、ひたすら恨んでいた。

 彼女の中で生まれた激しい憎悪が、心を覆うように埋め尽くす。

(――)


 ……


 …………


 ………………

 

 ……………………が、ここで彼女は一つ気付く。


(……あれ?)

 なぜか痛みが発生しない。

 あれほどの痛みを体験してこの一撃で痛みを感じないなんて普通有り得ないはずだ。

 ――ならば『即死』という物が発生したのだろうか?

 実際、稀に起るらしいのだ……彼女が聞いたところによるとHPが10分の1の時にその時のHPの3割以上のダメージを受けた場合にのみ発生するらしい。

 それが発生してしまうと、『アブソーバー・システム』が発生している状態で基本攻撃を受けた場合として発生する『細い木の棒で叩かれるような鋭い痛み』を感じるのだが、この場合は痛みは感じず簡単に『石』になるらしい。

 だが、その考えはあり得なかった。

 実際、そうであるならば体の全ての(、、、、、)機能は停止(、、、、、)し何も動かす事は出来ず、耳も聞こえない筈だ。


 しかし、なぜか皮膚に風が感じる。


 何かと思い、恐る恐るレクティアは瞑いた瞼を開く。

 そこには、本来であればいるはずの無い男の後ろ姿が一つあった。

 ヒョロっとした細い体型に特徴的な初期アイテム『布の服』が、腰には2本の武器木刀とナイフそれぞれ一本ずつが腰に掛けられていた。

「っ!?」

 すると彼女は更にもう一つあることに気付いた。

 それは、背向く男の右手の指先だった。

 なんと驚くべき事に、何も属性付与(エンチャント)を付与をさせずして右手の人差し指と中指の二本の指だけで他の武器とは比べようが無い圧倒的攻撃力を持つ『大剣』をいとも簡単に、まるで当たり前のように挟んで止めていたのだ。

 

 同時に彼女はその者の正体に気が付く。


 最初は一瞬心の中で疑った。なぜなら彼のような服装をした核石人種(プレイヤー)原人種(NPC)なんて少なくないからだ。

 しかし、後ろ姿でありながらも彼の腰にぶら下げてある二本の武器を見た瞬間、彼女は確信した。

 

 間違いない……

 ラルフ (、、、)だ。


 直後レクティアの中にある絶望は一瞬にして消えた。

「そんな……、なんでラルフが、ここに……?」

 結局は希望なんて消えたわけでは無かったのだ。

『……オイ、――』

 ふと、声が聞こえる。 

 それはまるで二人の声が合成されたかのような声だった。

 すると指で挟んでいた大剣の刃先を横にズラすと、怒りに満ちたような声で、目を悍ましいほどに剥き出し、獣のように尖らせ、こう言った。


『――誰に剣先向けてると思ってるんだァ……三下(、、)ァ!?』





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