爆発の後……
お待たせしました
あれから数分後――ラルフの一瞬の判断によって放たれた火炎属性の魔法、【バレットフレア】はあらゆる物体を溶かす毒酸ガスを吐くモンスター『ゲロッグハーム』を正確に射貫き直後、辺りを大爆発の火の海と化していた。
爆発に巻き込まれた木々や、襲いかかろうとしていた『ポイズンコブリン』達を灰にし、その影響で発生した焦げ臭い匂いがこのエリアを充満していた。
このゲームの中での仕様において毒ガスは基本的に可燃性、火に触れればそのガスは発火し爆発する。それは、ラルフのこれまでの経験で得た知識によるもので実現された物だった。自身としてガスを蓄積させるタンクが体内に存在していたお陰で爆発させるのに必要な濃度の条件を満たしてくれいた事が幸いしたと感じていた。
当然ながら、その光景を見ていた他のメンバー達は目を剥き唖然……。そりゃあそうだ、Lv1の核石人種がこの一瞬の間でこの状況を突破したのだ。これを見て驚かない方がよっぽどおかしい。
「ど、どうします……? とりあえず、氷水で火を消しますか?」
「えっ……、ええ、そうね」
口をガタガタ震わせ、震えた声で話し合うスピカとユウ。まるで腰を抜かしたかのように立ち尽くしていた。
「スピ姉……もうそれ終わった……いつまでボーッとしてるの?」
「えっ!?」
気が付けば先程の炎は消えただの灰の空間へと変わっていた。
どれ程の時間が経ってしまったのだろうか、二人は未だこの状を理解し切れていなかった。
「もう、ラルフが【アクア・ボール】ですぐに消火しちゃったわよ」
「私って……?」
「何言ってるのよ、あなたさっきまでボーッとつっ立っていたのよ」
「あれっ、ラルフは? 何処に行ったの?」
レクティアはスピカにそう聞かれると灰のエリア奥の方向に指を指し健気に話す。
「ラルフはすでに『ポイズンコブリン』からのドロップアイテムを取りに行ったわ。もう、あれだけの数倒したもの、逆にドロップアイテムを落とさない訳が無いじゃない」
「まあ、そうよね。ははっ」
「とは言っても、あと少ししたら帰ってくると思うわよ。さっきラルフからメッセージが届いて『取る物取ってきたら帰ってきます』って言ってたわよ」
「へぇ~、ソウデスカー」
わざとらしい棒読みでレクティアの話を流すと、そのままスピカはメニューウィンドゥを開いた。
彼女が開いたのはメニュー画面、正確にはホーム画面に出てくる時計だ。今現在この時計には到着から既に10時間、つまり午後の3時を刺していた。スピカ自身、今まで感じなかったが初めて時間が経つのは早いと感じられた。
すると、灰だらけの道の奥から一人の人影が写った。
その影は、徐々に正体を現す姿へと変わってゆく。
「おーい、今戻ったぞ~!!」
「あっ、ラルフ!! お帰り」
スピカはラルフの手を見た。そこには、黄土色の球状の塊――ウッドレイクを両手で抱え込むように持っていた。その量は基本ノルマの30以上は超えている事は容易に分かる程だ。
ラルフは、持っていたウッドレイクをスピカに渡す。
「ちょっ!? これ、重っ!? って私が持つの!?」
渡すとラルフはメニューウィンドゥを開き一枚の茶色い布製の袋を出現させ、それをそのまま開いた。
「スピカさん。悪いけどそのままこの袋に入れてもらえませんか?」
「まっ、待ってよ!? これ重いんだから……っ!?」
最終的には文句を言いながらもラルフの要求に応じ、持っていたウッドレイクを袋に入れた。
「後は、そのアイテムを手で持って馬車の所まで行きましょうか」
「ええ、そうね。っていうか、なんでラルフじゃ無くてレクティアが袋持ってるのよ」
スピカはレクティアのいる方向に指を指す。そこには袋を引き摺るように持つレクティアの姿あった。
「う゛ぅぅぅーーーー!! 重い~、ラルフぅ~お願いだから持つの手伝ってよ」
レクティアがそう嘆くが、対してラルフは手伝おうという気にもならない様子で言葉を返す。
「何を言ってるんだ? 今の時代は男女平等、今更女性に優しくなんて基本流行らないぞ。それに初めて会ったとき俺にあんな仕打ちをしておいて文句言うなよ」
「うっ――!?」
正論を突かれ反論する事が出来なかったのかレクティアは言葉が詰まってしまった。確かにあの時レクティアはギルドの備品を持つのが面倒だと言ってそのままラルフに押しつけていた。
それが今、丁度ブーメランのように自分に返ってきたのだ。正直見てて笑うしか無い。
「まあいいや、さっさとあの場所に戻りましょうよ。あと2時間もしたら帰りの馬車来るし」
今現在5人がいる場所は、およそ10平方キロメートルもある広いポイズンフォレストの中心部だった。先程の爆発の影響で木々の葉が消え何一つ無い青い綺麗な大空が彼らの視線にハッキリと写し出されていた。
「そうですね、それでは行きましょうか」
「うん……行こう」
こうして一同は無事ノルマをクリアし安心した様子で話していた。
しかし代わりとしてその代償は大きかった。それはスライムハームの粘液による防具等の消失だ。あの拠点を見ての通りこのギルドの資産は極端に少ない、故に服ならともかく防具類の装備は一般的な衣類値段のおよそ4倍ほどの値段が付いているのだ。
実際、今回このクエストにて消失したのは防具と衣類だけだった。しかし結局の所、衣類での消失において一部消失したものの女性陣の局部の露出を防げただけでも不幸中の幸いとして見て良いだろう。
まあ、後の報酬金はこの資金に充てられることなぞ知る由も無かった。
やがて一同は、その調子であの降り立った崖のある方角へと進んでいくのであった。
「な……何でしゅか!? 貴方たちのその格好は!?」
外見、とても幼く見える赤いフードを被った一人の少女が真っ赤に頬を染めていた。
「……ああ、これは気にしなくて良いよ、うん……ホントに」
あれから二時間、何とか他のモンスターに相対する事無く無事にあの崖へと到着した一同。既に到着したときには馬車が先に彼らを待っていたかのようにいたのだった。
ラルフ以外の4人は見事に酸によって服が溶けしまい、つい数時間前までとの姿とは180変貌し(色んな意味で)醜い姿へとなっていた。
正直、彼女達の姿はあの馬車を運転するその少女にとっては非常に刺激的な物に相当するだろう。
「ま、まあ、いいでしゅ!! は、早くっ、その……乗ってくだしゃい! 見ててこっちが恥ずかしいでしゅ!!」
真っ赤に照れた顔を両手で覆い隠し慌てるような口調で話す。
「あぁ、なんかごめん、こんな姿で……あっちに着いたらすぐ買い換えるよ」
「なら、良いでしゅけど……」
スピカと少女で、そんなことを話すと一同は馬車に乗り込みそのままイニティアムへと帰還するのであった。
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