到着したけど、これ終わるか……?
続きです。
10月27日午前5時34分48秒、5人の優しい寝息が漂う馬車内にて。
ザッ――ザッ――――ザッ――――――――…………。
揺れていたはずの馬車が徐々に弱くなりやがてピタリと止まる。
外からは鳥の鳴き声が聞こえ、窓からはまるで春のような涼しい爽やかな風が車内を循環してゆく。
数秒後、突如として閉まってた出入り口の扉が外側の方から勢いよく開かれた。
キィ――ッ!! と、まるで黒板に爪を立ててひっかくような嫌な騒音が発生し、背筋が氷水に漬け込まれるような寒気が一方的に彼らへと襲いかかる。
その寒気が5人を瞬間的に起こしてゆく。
ビクッ! と痙攣のような震えと同時に5人はパッと反射的に体を起こした。
「わっ!? びっくりした~」
出入り口の扉には、この馬車を操縦していた少女が立ちふさがるようにして立ち、カミカミの日本語を放つ。
「と、到着しました! 皆さん、起きてくだしゃい!!」
その少女は一般的な村人が着ていそうな純粋な服を身につけていた。幼い顔と他にもまるでどこぞの童話に出てきそうな特徴的な茶髪に赤いフード付きのマントを羽織っていた。
「さすがにもう起きたわよ」
「すごく鳥肌……立っちゃった……」
二人がそんなことを呟くと他含め一斉にぞろぞろと馬車から降りた。
5人の降りた場所、そこは崖だった。雲何一つ無くここからの眺めは美しかった。ある所を見れば山が、また別の所を見れば緑に覆われたジャングルが――多種多様な風景画のような光景が広がっていた。
「すっごーい! 高い!」
「あそこですか、想像以上です。とても驚きました」
小学生みたいな反応を示すスピカと、人差し指と中指を立て眼鏡を押し上げ落ち着いた様子で感嘆の言葉を放つユウ。その横では他の3人が、2人とはまた違う話を展開していた。
「あの森が例のポイズンフォレストかよ」
「ここから見てもあま、り、特別な……というのはあまり感じないわね」
「つーか、逆にそんな遠くから見て判断つく方がおかしいからな」
「わー……高い……」
赤いマントを羽織った少女は5人が馬車から降りたことを確認すると、先程の言葉を補足するかのように、言葉を放つ。
「こ、ここからは馬車での接近は危険なためこれ以上は行けましぇん! ち、因みに帰還の馬車は今から12時間後となりましゅ! どうか、ご無事で……」
少女はそう言うと、馬に乗りこむ。そのまま両手で縄を持ち波を生ませるかのように大きく縄を振り下ろす。
パチン! と、乾いた空気を裂くような音が響く。直後馬車はカラカラと音を立てながらここから離れていった。
「行っちゃったわね……」
「どうせ12時間後にはまた来るんだから、安心しろよ」
「それよりラルフ、レク……あの二人……もう先に行っちゃったけど……いいの?」
「……はい?」
ラルフは反射するかのようにセピアの指した指の方向に首を向かせる。
――そこには、すでにその二人は崖の梺への下り坂を歩き進めており気付けば200メートル程の差が生まれていた。
「……ったく、仕方ねぇな、俺らもさっさと付いてくか」
頬を人差し指で掻くラルフ。面倒くさそうにそんなことを言うと梺への坂道を下り始める。
その坂は、崖の近くにある岩山に螺旋状にして出来ていた。まるでドリルのように渦まく坂道は所々から岩が地から突き出ており、現実での公共施設などの玄関前によくあるバリアフリーのようななめらかな坂では無かった。このような道に慣れていない者が下手に走ってしまえば、いずれ突き出た岩と岩に足を挟んで転倒してしまうだろう。
鼻歌を歌いながらルンルンと愉快に歩き進むレクティアとセピア。完全にその様子はまるでピクニック気分のようだ。
「そういえばこのギルドの、それぞれの役割って決まってるのか?」
ふとラルフは何かを思い出したかのように鼻歌を歌っている二人に話しかけた。
「基本的には……特に……っていうのは決められていない……スピ姉は火炎の魔法を使う魔法戦主義者……ゆーっちは暗黒と閃光の魔法を使ったり属性付与して戦う……レクは――」
「ハイハイ!! 私の主戦は――」
「お前は大風魔法主戦型であることには十分に分かったから言うな」
「それ言わせなさいよ!!」
言おうとしていた事を不意に切り落とされ、むっ、とレクティアは頬をハムスターのように膨らませせる。
「……私の場合は……一応ヒーラー」
「あれ、お前、俺ら助けたとき弓矢持ってたよな? どういうことだ?」
セピアの発言に対して、そういえばと言わんばかりに問いかける。
「攻撃手段がそれだけ……ということ」
「つまりお前の言っている事をまとめると、基本的には回復魔法を使用していざというときに弓で攻撃をするということだな?」
「そう……いうこと」
「なら良いけど」
ラルフは、彼女の言葉を聞いた途端安堵の息を吐いた。理由は最悪の事態を回避できたからだ。何せヒーラーはパーティーにおいて必ずや、といっても過言では無い。故に、ヒーラーが居ないパーティーなんて見たことあるだろうか?
まず絶対にないだろう。……いや言うなら、いてたまるか。
そうこうしている内に時間は経ってゆき、5人は無事に坂を降り切り苔の生えた木々が立ち並ぶ森の入り口に立っていた。
まるであの時のノーセンスお嬢様の敷地内にあるジャングル(に見立てた庭)のようだった。
補足していうのであれば、その木の葉や苔の色が緑では無く紫に変色していることだった。
「着いちまったぜ、『ポイズンフォレスト』――」
ラルフがそんなことをぼやくと、横にいたスピカが指揮を持つようにして前に出る。
「さぁーて!! おまえらー!! 着いたから早速始めるけど、とりあえず『石』にならない程度に頑張ってね☆」
彼女の言い方はとにかく軽かった。
「他人事みたいに言うなリー駄ー」
「というわけで、早速レッツゴー」
「「「おー!」」」
「スルーすんなよバカ共」
呆れるように大きく息を吐くと、ラルフは腕を組み、先に行った4人の後を追うのであった。
感想・意見お待ちしております。




