過去の感情
今回は短いですが、内容は『一見凄く良い雰囲気ですが、よく読んで見れば凄く重い話』です。
――ほんの少しの時間ではあるが彼は、ある夢を見ていた。
――4年前……の事だ。
それは、なんとなくで出場してみた大会『第一回クリスタル・レイロード』の決勝試合後の事だった。
ーー直後、スピーカーから実況の声が聞こえた。あのうるさい女性実況者の声である。
『な……何てことだぁ!? なんと、「第一回クリスタル・レイロード」優勝はたったの2人で圧倒的戦力差だったはずの5人の相手をものともせず……しかもノーダメージで!? 一体「ルイス」、「エダ」は何者なんだあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
「マジかよ……俺らが優勝……?」
ピンとしない顔で突っ立っていたルイスの姿があった。
彼の目の前には5個の核石セミ=クリスタルが杜撰に転がっていた。
不思議に現実味が未だ感じられない……。実際それは仕方の無い事かも知れない、何せ2人で5人倒したんだ。正直それくらいのリアクションは最低限無い方がよっぽどおかしい程である。
「……やったよ。ボクやったよ!!」
ルイスのすぐ側には嬉しそうに片手に剣を持ちぴょんぴょん跳ねる少女……のような外見をした少年『エダ』の姿があった。
会場のコロシアムでは、第一回の大会にもかかわらず『初代最強』の称号を得る瞬間を一目見ようと観客席全体には沢山の人で溢れかえっていた。当然、客席から聞こえる歓声や野次はうるさい。とはいえ今この瞬間は、特に客席からの歓声は最高潮に達していた。それは実際試合が決したからと、他言いようが無い。
「なんとなくで参加したのに、なんか面倒くさくなってきたんだけどぉ!?」
「次に優勝インタビューがあるってよ!! あ~ボクら有名人じゃん!!」
ウキウキ気分でいるエダに対してラルフは深刻な顔つきで話しかける。
「お前……なんか思わねぇのかよ……ガチでこの大会に臨んでいた人もいるのによ。軽い気持ちで参加した俺らが普通に優勝しちまったんだぞ!? 少しは申し訳ないとか思わねぇのかよ!?」
「なぁに、それは相手の経験不足よ。普通に考えて『ボクたちの相手には及ばない』、って解釈するものだよ!」
「……うぇ、それ言っちゃ負けた相手にとっては異常なレベルの屈辱だろうが」
そんな会話を淡々と続けてゆくと会場内の闘技場から一時退場するアナウンスがかかった。どうやら、エダが言ったとおり、間もなくインタビューが始まるらしい。
2人は言うとおりに会場内から退場するとラルフは、ふて腐れるかの様子で、
「とはいえ、お前言う内容とかって決めてるのかよ」
ラルフがそう問うとエダは自信満々の様子で、
「そりゃあもう、5パターン程。なんか試合の最初からずっとね」
「……うん、やっぱお前、後で対戦相手に謝ってこい……割とマジで、焼いた鉄板の上で額くっつけて来いっていうレベルに……」
ラルフがそこまで言うと、直後あのうるさい女性実況者の叫び声が聞こえた。どうやらインタビューの会場準備が整ったらしい。
「あ~、なんか面倒くせぇ。これって、もしかして来年もやるのかよ……まあ、またこの地に立てるのなら立ちたいけど……」
ルイスは人差し指で耳元を掻くと、ふと独り言のようにそう呟いた。
するとエダはルイスへ顔を向けると、彼の言葉に応えるかのように満面の笑顔でそっとこう言った。
「そうだね。また来年も2人で、この場に立てれたら良いね! ーー」
エダがそう言うと2人は目を合わせながら、パンッ! とグータッチを交わすのであった。
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