城館の会談 その1
ジャックが目を覚まし、見習い騎士のアドルフたちと騒動を起こす2時間前のこと。
ーーー帝都北東部、ファローザ城館。
高台に建つ城館の前に、一台の馬車が停まった。
その馬車は黒塗りの質素なもので、およそ貴族が乗るような華やかな装飾は施されおらず、停車した城館の白亜の美しさとかけ離れていた。
日が昇ってから1時間も経っていない。まだ春と言えども、何か羽織らなければ肌寒い。
特に御者は手袋とコートをかっちりと着込んでいて、しかも、長い時間風を感じて馬車を走らせていたために、鼻と頰は赤くなってかさついていた。
「アーリマン様、着きましたぜ」
御者が背後にある小さな窓を開けて、乗っていた男に伝えた。
アーリマンと呼ばれた男は、濡れるような金髪を束ねた美麗な男だ。すらりと伸びた足は馬車の中が狭く感じられる。彼は、派手さはないが見栄えの良い黒を基調とした正装服を着ており、それが彼の金色の髪を一段と引き立てていた。
アーリマンの隣には少年が座っていた。少年もまた、アーリマンと似たような正装をしている。髪は深い夜空を想わせる藍色で、その大人しげで知的な顔立ちと合わさって、実際に、年齢よりも上に見られることもしばしばあった。
アーリマンは少年の肩をつついた。少年は読んでいた本に気を取られて、停車したことに気づいてなかった。
少年はアーリマンに目礼して、本を鞄にしまった。
アーリマンが馬車の扉を開けて降車し、少年もそれに続く。御者はアーリマンから言伝の紙と路銀を受け取ってから、手を振って馬を走らせた。
鉄門の前に、アーリマンと少年が立つ。
「ハル、案外落ち着いているようだな」
門の向こうの高台に建つ城館を見上げたまま、アーリマンは隣にいる少年に話しかけた。
ハル、と呼ばれた少年はアーリマンの顔を見て答える。
「ええ、今のところは。むしろ教官の方が、緊張しているように見えます」
「まあ、な。この城館に入るのは俺でも初めてだ。しかも、あの方との対談も初めてだからな……どうなることやら」
そう言ってアーリマンはポケットから、紋章のついた丸い石版を取り出した。石版の紋は、うねった植物のような繊細な草紋で、古めかしいがどこか気品漂うものだった。
鉄で出来た門の中央にある円形の窪みに、紋章が刻まれた表面から埋め込み、さらにアーリマンはそこへ魔力を流した。
「……こんなところだな」
アーリマンが呟く。ハルはその一連の作業を細かに観察していた。
石版を取り外すと、扉がゆっくりと奥へと開け放たれた。2人の目の前に、城館まで30mほど続く石畳で整地された道が、右へ左へと登り坂を伸びている。
2人が進む道の脇に庭園などは無い。
敷地内には針葉樹がびっしりと生え揃い、高い城館の下層部分を、人の目から覆い隠してしまっている。遠目から城館を見ても、3階層より上の様子やそびえ立つ尖塔しか見えないだろう。
「まるで、森の中に迷い込んだみたいです」
生い茂る針葉樹を掻いくぐるように伸びる道を進みつつ、ハルは鑑賞するようにそう呟いた。
「そうだな。ここの主の趣向がよく現れているとも言える」
「なるほど。しかも静かで、人っ子一人もいない」
「今日の訪問はお忍びだ。出迎えも出さない約束になっている。……それにしても、元々招かれたのは私一人だけだが、君が都に滞在していたのは丁度良かったよ。君が、毎日似たような訓練や座学ばかりで、内心飽き飽きしてると父君から聞いたよ」
「最近の僕のサボり癖を教官にも知られてるとは、その、お恥ずかしいです」
額に手を当ててハルは苦笑った。
そうしている内に、2人は城館の入り口扉の前に立つ。
後ろを振り返れば帝都の街並みが見えた。貴族の館もあれば、市場もある。砦のような士官学校や、木造ながらも堅牢なつくりの冒険者ギルドもある。そして北には、皇帝の居住する巨大豪奢な王城が建つ。
それら全てが、この城館より見渡すことで、朝日を絶妙な角度から浴びて、まばゆく煌めく幻想的な景色を創りあげていた。
「ファローザ様は、思ったより趣き深い人柄のようですね」
「この城館に居を構えてからは、特にこの立地を気に入って過ごすようになったそうだからな。……多くは語らぬ方だが、こういう景色を楽しむ一面もあるようだ。ハル、意外と私はあの方と腹を割って話し合えそうだ」
「そうだと宜しいですね」
顔を見合わせて2人はそう言い合った後、アーリマンは咳払いしてから、開錠されてある扉をじっくりと力を込めて押し開けていった。
城館に入った2人はエントラスホールに出た。ホールは小さかった。いや、思ったよりも広くないと言った方が正しいだろう。
正四方のホールから左右へ廊下が伸びているだけで、天井も高いわけではなく、燭台の数も少ないので薄暗い。エントラスの正面奥には上階へ行く螺旋階段があり、その上る途中の壁に窓はあるのだが、申し訳程度に日光が入っているだけだ。
依然として、人気は全くない。
しんと静まる城館のホールに、2人の足音や衣擦れの音のみが聴こえる。
「森の中に迷い込んだと思ったら、今度は肝試しに来たみたいになりましたね。こんな会い方をするなんて、随分と変わったお人のようです」
なおも、緊張を感じさせない様子でそう言ったハルに、アーリマンは頭の横をこりこりと掻いた。
この城館の主は、帝国でも5本の指に入るほどの権力と地位を持つ者だが、今回アーリマンが連れて来たこの少年は、見かけの大人しさによらず、中々肝が据わっているようだ。
また、肝だけではなく好奇心自体も旺盛なようで、壁や燭台、廊下の天井の造りなどへ素早く目を移している。
「ふむ、ふむ。どうやら、この建築様式は帝国由来のものではありませんね。門を開けた草紋の石版や、この燭台の模様も、人の文化とはまた違う落ち着いた魅力があります。……教官、ここの主の出身を知っているのですか?」
「噂には聞いているだけだ。余計な詮索は俺の立場上、そうもいかないのさ。さあ行くぞ、ハル。君の学術的な好奇心を満たすのは、また今度にしよう」
「はい、教官」
アーリマンがハルを穏やかにたしなめて螺旋階段へ歩き出すと、ハルもそれに従ってついていった。
螺旋階段は全階層に繋がっていた。
この城館にて階層を行き来するためには、螺旋階段を上り下りするしかないようで、建築の随所にある装飾も凝っていたが、城館としての守備の役目も果たしている。
アーリマンたちは最上階となる6階よりも更に上、城館の東側に建つ尖塔の小部屋にまで行かねばならない。
この城館の主が、そこで待っているのだ。
6階に着いた2人は、陽射しが点々と差し込んでいるだけの薄暗い廊下を歩いた。もちろん等間隔に部屋の扉はあるのだが、それは全て閉ざされている。
これだけ広い館ならば、何十人もの使用人が常駐していなければ、まず手入れは行き届かないはずなのだが、どこに目線を移しても、どんな小物を観察しても、チリ一つなく丁寧に手入れされてある。
ある種の完成された異様さが、和やかに支配していた。
『ここまで徹底しているお忍び対談とは、どうやら、帝国に巣食う影は根深いらしい』
前を歩くアーリマンは、このファローザ城館に住まう者に招待されるまで経緯を思い返していた。
アーリマン……オーギュスト・アーリマンは、帝国の特殊騎士団『竜騎士団第1番隊』の隊長を務める男だ。父親もかつては竜騎士団の総団長として、退役するまでその身を帝国に捧げた生粋の軍人将校だった。
2つの隊に分けられている竜騎士団のうち、第1番隊は『翼竜種』を従えることで、天空を自在に飛び回る機動力を生かした部隊である。
その第1番隊の隊長であるアーリマンは、先々月、この城館に住まう帝国の重鎮から極秘の指令を受けた。
その指令書のやり取りには、すでに退役した父親も絡んでいたのだが、それはともかくとして、現役の竜騎士であるアーリマンには、極めて重要な指令が下ったのだ。
『帝国内には、秘密裏に他国へ部下を送っている一派が存在する。その一派は帝国をひっくり返すような計画と研究を進めている……か。半ば眉唾の話だったかと思えば、実際に起こったのが都市ロメオのあの事件だ。つまり人狼エイドス・セイルズは、その一派の研究員ということになる』
指令を受けたアーリマン率いる竜騎士団第1番隊は、1ヶ月半に渡ってその機動力を生かし、帝国の謎の一派を調査するために東奔西走した。
ファルス王国の王都ベルガモット、副都サクルース、ピルカ王国と帝国の国境沿いの街、ピルカ王国南端の港町……行ける範囲を広げに広げて、その秘密組織を他国にて竜騎士たちは調査した。
他国の軍隊に見つかることのないように、拠点は必ず翼竜ごと身を隠せる森林や山地に置き、日夜調査にあたった。
『それにしても……拠点にした山林の湖、その近くにエイドスの研究所を見つけたのはこれ以上ない幸いだった。大きな都市に潜伏しているかと思いきや、まさか都市ロメオの内部や近辺で、世にも珍しい研究を進めていたとは……』
そして、その時のアーリマンには天運があったようだ。
何ヶ月も費やして行うはずだった指令が、わずか1ヶ月半で標的の秘密研究所に大当たりしたのだ。
その時、もはやエイドスは都市ロメオに総攻撃を仕掛けていた。エイドスの研究所にて様々な情報を手に入れたアーリマンたちは、すぐさまエイドスを追って都市ロメオに現れた。
『ラプターウルフの人狼エイドスが、あれほどにまで都市ロメオに執着した理由は、今でも不明だが……まあそれは良い。それもこれも今日、指令を出したあの方に会って、話を聞けば分かることだ』
アーリマンが考えごとをしている内に、すでに2人は廊下の突き当たりの扉を開けて、尖塔の部分に入っていた。
またもや螺旋階段が上へ向かい、それを上りきると紅色の扉が見えた。扉の両脇の壁には燭台が灯されていて、扉自体にも草紋の装飾が施されていた。
「ここに、おられるのですね」
さすがのハルも声が若干固くなっていた。
アーリマンはハルの背中を2度叩いてから、静かに叩扉した。
「どうぞ、入りたまえ」
入室を許可する声が聞こえた。
一言では形容できない、不思議な音階の声だった。
「失礼いたします」
アーリマンは扉を開けて部屋に入った。それに続いてハルも入室した。
円形の部屋は主人専用の書斎らしく、本棚と机とソファがまず目に入った。
本棚はひとつではなく、窓以外の壁中を覆ってしまっている。両手で抱えて運ぶような本を収めている本棚もあれば、手帳大の大きさの本を何百も収納している本棚もある。
窓の前の濃い褐色塗りの机には、博物館に展示されるような巻物や巨大な羽根筆、星座を表わす球儀、古代の石剣などが雑多に置かれていた。
床や内壁は木で出来ており、真紅の絨毯は立派に厚く、踏むと足がかすかに沈んだ。先ほど2人が進んできた本館とは雰囲気からして別物で、この部屋には暖かみがあった。
この部屋と城館の主、ファローザはソファに座っていた。
ファローザは銀の仮面を被っていた。仮面は目と鼻を覆い隠し、丁寧に結われた白銀の髪、口元と顎の輪郭のみがさらけ出されていた。
口と顎に髭は一切生えておらず、素肌は日焼けとは無縁な白さで、顎先から頰の輪郭はほっそりとしていて若々しい。
深緑のローブを羽織っており全体の体型は見えないが、脚を優雅に組んでソファにもたれているため、そこまで隆々とした体格の持ち主ではないだろう。
2人は少々戸惑った。
これが帝国のあの重鎮なのだろうか、と。
待ち受けていたのは若々しい青年、いや、少年と言われても信じそうな……もっと言えば、うら若き少女といっても遜色なさそうな、そんな見た目の人物だった。
「さあ、かけてくれ」
ファローザは対面するソファを手で示し、扉の前に立つ2人を座るよう促した。
その声は若く透き通っていながら、なおかつ成熟された気品と威厳がある。かろうじて男だと分かったが、その不思議で優美な耳触りをする声色は、妖精や精霊の類を連想してしまうほどだ。
アーリマンとハルは一礼してからソファに座ったが、その間も2人の視線は目の前の人物から離せないでいた。
軍人であるアーリマンは、集中すれば間近にいる人間の息遣いを読むことができる。今も隣のハルからは、緊張が徐々に高まってきた息遣いが聞こえる。しかし、対面して座っているファローザからは、どういうわけか、明確な息吹を読み取ることができなかった。
「お初に、お目にかかります……竜騎士団所属、オーギュスト・アーリマンと申します」
「……同じくお目にかかります。見習い騎士、ハル・イブリッツと申します」
ソファに座った2人が姿勢をさらに正して名乗ると、ファローザは小さく頷く。
「アーリマン、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう。では私も改めて……はじめまして、ケルル・クヴェン・ファローザだ」
その名を聞いて、まずハルの顔に一層緊張が走る。
この城館の主に会うとアーリマンに知らされた時から、こうなる予想はしていた。城館の中に入ってからも、どんな人物とこれから対面するのか再三、心の準備をしていた。
やはりこの方が、とハル・イブリッツは息を呑む。
ケルル・クヴェン・ファローザ。
名前だけならば、帝国で知らぬ者はいない。
このディーセント帝国には数多の貴族や将校が政を行い、軍務を務め、日々国を発展させているが、ケルル・クヴェン・ファローザは、この帝国で3人しかいない『将軍』の1人なのだ。
人々にこの3人は『帝国三将』と呼ばれ、その役職とは、破格の実績と実力を持つ者にしか与えられないものである。
さらに言えば、将軍の役職はこの国に限っては世襲するものではない。一代限りの、功績を実際に残した本人にのみ与えられるため、極めて純粋な実力によって勝ち取る席なのだ。
皇帝の側近である宰相を除けば、最も皇帝の近くを補佐する者。
戦さ場にて無類の強を誇り、且つ、数々の分野にて国の発展に貢献した栄誉者。
『それが、この国における将軍。その中でも滅多に衆人へ姿を晒さないファローザ様が、実際に僕の、目の前に……』
憧れ、畏敬、羨望……自然とハルのそんな視線はファローザの顔へ向かう。
将軍ファローザとは、中途半端な地位の人間が顔を直視してはいけない人物なのだが、その謎めいた雰囲気も相まって、少年ハル・イブリッツの視線を釘付けにする。
ファローザの顔の向きが、ハルのもとに向いた。
ファローザが被っている仮面は双眼すら覆っているはずなのだが、何故だかハルは、じっくりと観察されている気がしてならなかった。
「ハル・イブリッツ、といったね……イブリッツ伯爵の子息かな?」
アーリマンと違って招待されていないハルに対しても、ファローザは口角を上げて優しい声でそう訊いてきた。
「はい。この度は、突然の訪問をお許しください」
「構わないよ。今回、私のためによく働いてくれたアーリマンの弟子ならば、私にとっても大事な客人だ。さあ、アーリマン、無事帰ってきた君の報告を聞かせてもらおうか」
ファローザの言葉にアーリマンは頷き、懐から数枚の紙を取り出した。その紙すべてには文章がびっしりと記されている。アーリマンがエイドスの隠れ家から回収してきた記録、手紙などである。
アーリマンがファローザに手渡そうとすると、紙はアーリマンの手元からひとりでに離れ始め、アーリマンはそこでファローザの仕業と察して紙を手放した。
紙は宙を漂い、ファローザが出した右手に収まった。
先にアーリマンが、ファローザから受けた指令の結果を報告することにした。
「まずは、将軍殿が私に言い渡された指令の顛末を……」
「ファローザで良いぞ、アーリマン」
「恐れ入ります。では……先々月にファローザ様が私に文書で言い渡された指令は、無事に結果を得ることが出来ました。ファローザ様のご推察通り、帝国内には秘密裏に他国へ間者を送り、魔物の取引や研究を行っている組織がいることが判明しました」
「ふむ、ご苦労。それにしても仕事が早いな。結果が出るのは、まだ先のことだと思っていたが」
「はい……運良く、組織の一員である男の隠れ家を発見しました。男の名前はエイドス・セイルズ、ラプターウルフの人狼種であります。エイドスは研究を進めた末に、異なる種族の魔物と魔物を交配させ、新たな種の魔物を創造する技術を持っていました」
エイドスの名と魔物同士の交配。
この報告を聞いたファローザは、興味深そうに唇を舐めた。顔の下半分しか露わになっていないが、予想を超えた情報に強い興味を示している。
「ほう、異なる魔物を交配させる技術……か。それは大変なことだな。そのようなことを出来る者は世界でも、そうはいないはずだ。……それで、ついさっき君が渡してくれたこの紙が、その人狼の隠れ家にあった交配技術の情報か」
「その通りでございます。ですが、これだけではありません。その件の人狼は、ファルス王国の都市に攻撃を仕掛け、冒険者たちに討伐されました」
「……何?」
思わぬ展開に、ファローザの声が半音上がる。表情に軽い驚きが現れた。
ファローザは組んでいた脚を解き、姿勢を前傾させて両手の指を前で組んだ。
将軍ファローザの雰囲気が、穏やかなものから真剣なものに移り変わり、アーリマンの隣のハルも口を真一文字に結んで2人の様子を見ている。
「どういうことが起こったか詳しく聞こうか」
「はい。エイドス・セイルズは人狼としての力を持つ研究者ですが、エイドス自身、自らを『研究対象』として活動することもいとわない性格だったのです。その証拠に、エイドスは自らの体に魔物を埋め込み、聖獣ウッドウルフの巣を襲撃し、聖獣の力や魔物の力を惜しみなく取り入れたプロセスを記録していました」
「なるほど。もしかすると、人狼エイドスは組織の一員の中でも、規格外の一員だったかもしれない。……で、都市を襲って返り討ちにあったのか。聖獣と人狼の力を持ったデタラメなやつみたいだが、呆気ないな」
「どうやら、そのようです」
「ファルス王国の都市だったな……どこの都市だ?」
「都市ロメオです」
ロメオの名を耳にすると、部屋の空気が凍った。その都市の名にファローザは何か特別な想いがあるようで、場の空気が打って変わって重苦しくなったのも、ファローザを取り巻く気勢の凄まじい様変わりによるものだ。
「……ロメオ、か。知っているよ、その都市のギルド長は魔術師グレンジャーだな?」
「ご存じでしたか」
「やつとは古い仲だ、勿論さ。つまり、だ………人狼エイドスを討伐した立役者は、あのグレンジャーということか」
「いいえ、ファローザ様。エイドス・セイルズを仕留めたのは、ソル・グレンジャーではありません」
アーリマンの言葉に、意外にもファローザは歯を見せて笑顔になる。決して微笑みではなく、確かな悦と昂揚を感じさせる笑みだ。
その笑顔はまるで、予想を裏切る展開の劇を観覧して興奮する少年のようだった。
「ほほう、そのエイドスを倒したのはグレンジャーではないのか……一体何者だ?」
「一人の少年と一人の少女でございます」




