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ひよりの想い

ーそれは私が麗奈ちゃんに初めて出会った頃の話…


私は麗奈ちゃんに憧れて…近づきたくて…

いつか渡す為にくまのストラップを買いにこの宝石店に来た…


『ひよりちゃん?』


『はっ…はい…(何で私の名前知ってるの?)』


『えっ…あ、いらっしゃいませ!』


『あの…くまのストラップありますか?』


『そちらにありますよ。』


私は棚に並んだくまを眺めた。

いちばん上に飾られたくまが私を呼んでる気がして見上げると黒いくまと目があった気がした。


『あの…これいくらですか?』


それはさっきひよりの名前を呼んだストラップだった…


『それは…』


『あなた…ひよりさんで合ってる?』


『はい…どうして私の名前知ってるんですか?』


『ちょっと…ね。』

『このくま、気に入ったの?』


『はい…なんだかこの黒いくまが…』


『わかった。あなた…バイトはした事ある?』


『無いです…』


『だったら、少しうちで働かない?』

『自分で稼いだお金で買ってくれるなら、安く譲ってあげる。』

『それに…私なら好きな人に渡すなら自分で稼いだお金で買ってあげたいな。』


『でも、私…』


『接客が苦手なら裏方でも良いわ。』

『私は、あなたが働いたお金で買ってあげてほしいだけだから。』

『ダメかな?』


『それなら…お願いします。』


『じゃあ明日から来れる?』


『はい、冬休みなので…』


『じゃあ明日の朝からお願いね。』


そして私はここで働く事になった…


『おはよう御座います…』


『おはよう…何かあった?』


『いえ…何も…』


『(隠すのが下手ね…)』

『ごめんね…クリスマスに…』


『いえ…予定はないので…』


『じゃあ、今日はこれをお願い。』


最初の仕事は自分が将来、結婚する時に相手に渡す、自分をイメージした指輪のデザインだった…


何度も書いて、消して…

やっと出来たデザインを店長に見せて、

書き直して…

私はその作業を何回も繰り返した…


『今日は初日だし、これくらいで終わりましょうか。』


『はい、ありがとうございました…』


『帰る前に…ちょっとだけお話しない?紅茶とココア、どっちが良い?』


『あっ…でも…』


『私があなたの事もっと知りたいの。』

『きっと何かデザインのヒントをあげられるかもしれないし…』


『はい…じゃあ、ココアで…甘めにお願いします。』


『わかったわ。』


そして店長はココアとケーキを用意してくれた。


『美味しそうでしょ?』

『今朝買って、あなたと一緒に食べるの楽しみにしてたのよ?』


私は涙を流さないように必死に我慢した…


『今朝、何かあった?』


『はい…私…実はいじめられてて…』


『うん。』


『今日、店長さんにお土産に買ったケーキ…取られちゃって…』


『うん。』


『それで…近くに、その…くまを渡したい人が居たんだけど、「たすけて」って言えなくて…それで……』


『そっか…もう良いわ。』

『ごめんね、私は大人だから…もし助けたらいじめがひどくなっちゃうから…』


『でも、そういう辛い事は私に言って。全部聞いてあげるから。』


『はい…』


『大丈夫、きっと大丈夫だから…』


それから私は次の日もデザインを考えるだけで一日が過ぎ、

その日、私は店長から「気分を変える為に」と、お店の中の清掃をしていた…


『雨宮さん、あのお客様見て。幸せそうでしょ?』


『はい。』


『あっ、来た…』


『すみません』


『いらっしゃいませ。』


『あの指輪、婚約用にお願いします。』


『かしこまりました。』


店長は指輪をショーケースから取り、お客さんに確認をお願いした。


『こちら、ご確認お願いします。』


『はい。』

『

これでお願いします。』


『では、ご用意致しますのでしばらくお待ちください。』


そう言って店長は準備を始めた…



『あの…なんであの指輪にしたんですか?』


『あの指輪を見た瞬間、嬉しそうに左薬指の指輪を眺めてる彼女が思い浮かんだんです。』


『お待たせ致しました。』


『ありがとうございます。』


『では、次は奥様とのご来店をお待ちしております。』

『ありがとうございました。』

『ありがとうございました。』




『雨宮さん、デザインのヒントは見つかった?』


『はい…今からデザインしてきても良いですか?』




そして私の婚約指輪は出来上がった…

それから私は少しでもお店の役にたてるように頑張った。


『雨宮さん。今までお疲れ様。』

『はい、これ。』


店長は私にくまのストラップとお給料を渡してくれた。


『あの…これ…私、最初のほうは何も出来てなかったのに…』


『うちはね、指輪のデザインが最初の研修なの。』

『自分の未来の幸せを考えられない人にこの仕事は出来ないから…』


『店長…ありがとうございました、私、あの指輪絶対買いにきますから。』


『あ…うん……そのくま、絶対に渡すのよ?』


『でも、私じゃ…』


『大丈夫。もし渡せなかったとしても、運命には逆らえないから。相手の人から「欲しい」って言ってもらえるわ。』

『こういう仕事してるとね、運命って感じる出会いを何度も聞いたり、見たり、体験するの。』


『あなたのそのくまも運命に導かれてるから。』




ーーそして……。




『2人とも、そのくまの背中めくってみて。』


私たちは背中をめくると、私の白のくまにはひよりちゃんの名前が、黒のくまには私の名前が書いてあった。


『じゃあ、そのファスナー開けてみて。』


ファスナーを開けると蓋があり、その蓋を開くと中は指輪ケースになっていた。


『店長…これ…』


『ずっとあなたが持っていたのよ。』


『でも私…』


『私じゃあなたを守れなかったからね。』

『格安で譲ってあげるって言ったでしょ?従業員限定、高校生割引の99%引きになっちゃったわね!』


『ありがとうございます…』


『九条さんのくまにもあなたの気持ちを入れてあげなきゃいけないから…』


『だから自分をイメージした指輪だったんですね。』


『そう。相手に自分の名前が入ったくまを渡して、自分をイメージした指輪を渡す…ずっと一緒に居られるでしょ?』

『御守りみたいになってるのよ?』


『私がそのくまを持ってた時、きっとその指輪が私たちを繋いでくれてたんだね。』

『ひよりちゃん…私にもつけて?』


私はひよりちゃんに左手を差し出した。


『うん。』


『ちょっと待って、写真撮るから。』


『写真?』


『ひよりちゃん、実は、私店長と交渉してて、私たち…あの広告のモデルになる事になったの…』


そこには『あなたと誓う永遠の約束』という文字が書かれたポスターがあった。


『えっ…でも…』


『雨宮さん、九条さん、2人には断わる権利はないわよ?』


『原価だけ考えてもうちはかなりのマイナスだからこの「2人のもと生徒会長」の写真で取り返すんだから。』


『あの写真も使わせてもらうわね。学校には許可はもらってるから。』


それは白百合姫の私たちのキスシーンだった…


『じゃあ、くま貸して…指の角度は…こう。九条さんと雨宮さんは目線を指輪に…そうストップ。』


『えーっと、くまok、指輪は…2つとも写ってるok、目線ok、校章は…うんokね。よし。じゃあ撮るわね、3、2、…』


カシャ、カシャカシャ。


『じゃあつぎは白のくまを雨宮さんが渡す感じで…』


そして、その写真はこのお店のシンボルになった。



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