くまの秘密
あれから私たちはあの宝石店へ向かった…
『あっ…ここって…』
『ひよりちゃん知ってるの?』
『うん…私、ここでこのくまのストラップ買ったんだよ?』
『そうなんだ…だから店長さん…』
『いらっしゃい。待ってたわよ。入って。』
『遅くなってしまってすみません…』
『慰めてもらいに来たのね…おいで。』
『ち…違いますよ!!』
『そっか。じゃあ、雨宮さん。来て。』
『はい…』
そして店長さんはひよりちゃんを抱きしめた。
『良かったね…本当良かった…おめでとう。』
『はい…ありがとうございます……』
『店長さん…私の…ひよりちゃん、取らないでください…』
『ごめんなさい…嬉しくて…じゃあ、座って。九条さんは、甘いココアでいいわね?雨宮さんはどうする?』
『私も同じのでお願いします。』
『わかったわ。ちょっと待ってて。』
そう言って2つのココアを持って来てくれた。
『じゃあ、2人の指を測らせてもらうわね。』
『私もですか?』
『必要になるでしょ?』
『あと、2人のくまも借りていいかな?』
『くまですか?』
『名前入れないとね。』
そう言って、くまと指輪を持って店長は奥へ向かった。
『店長…自分の事みたいに喜んでくれたね。』
『うん…私の事、ずっと気にかけてくれてたから…』
『ずっと?』
『うん、実は私、このくまを買うために何日もここでバイトしたんだ…』
『何日も?でもこれってそんなに値段しないよね?』
『そんな事ないよ…セットで1万4400円だったんだよ?』
『お待たせ。何の話?』
『店長、このくまって本当はいくらですか?』
『えっ…え〜と…』
『店長?』
『これ、精蓮学園では1440円ですよ?』
『それには訳があるの。』
『実は、この子たち…従業員の子たちから怖がられていたの…』
『「動いた」って人も居れば、「喋った」って人も居たわ。』
『実際、私も移動した後を見たし…声だって聞いたわ。』
『えっ…嘘…』
『待って!!最後まで聞いて。絶対怖い話じゃないの。』
『はい…』
『話は私がこのくまを作ってしばらくした時よ。』
『私、くまが1組出来ると必ず京都にある貴船神社ってところに「このくまを迎える人が幸せに慣れますように」ってお参りに連れて行くの。』
『そのくまもいつものように連れて行ってからしばらく経って…』
『棚に飾ってあった雨宮さんの持つ黒いくまだけを作業場に持ってきて手入れをしてたの。』
『中の指輪ケースを外して装飾してた時よ。』
『指輪ケース?』
『このくまね、2種類あるの。精蓮学園で売ってるくまがエンジェルベアー。この店にあるのがマリッジベアー。』
『告白専用と婚約専用。みたいな感じかな』
『だから値段も違うの。ほらっ。』
店長が指差してた先には1440円のくまと144万円のくまがあった。
『本当だ…でも…』
『言いたい事はわかるわ。ちゃんと話すから。』
『で、ケースの装飾をして、くまに戻そうとしたらあったはずのくまが無くて、棚に戻ってたの。白いくまに寄り添うように。』
『その日からよ。その黒いくまから声が聞こえるようになったの。』
『最初はなんて言ってるかわからなかったんだけど、雨宮さんがこのくまを買いに来る直前にはっきり聞こえたの。「ひよりちゃんが来てくれた」って。』
『私…ですか?』
『次の日からバイトに来てくれたでしょ?雨宮さんがバイトから帰った後必ず、「ひよりちゃんに会いたい。」とか、「寂しいよ。」とか「ひよりちゃんは私が守る」とか聞こえて…』
『人形には魂が宿るって聞いた事ない?』
『だから私はこの子、雨宮さんの事を大切に思ってる誰かだって思ったの。』
『そう言われると…このくま。麗奈ちゃんと一緒に居るみたいなんだよね…』
『じゃあ…指輪はめてみて。』
『はい。』
『ダメよ。九条さんがはめてあげなきゃ。』
『あっ…はい。』
私はひよりちゃんの左薬指にゆっくり入れた。
『ピッタリです…』
『雨宮さん。綺麗でしょ?その指輪。』
『はい…まるで麗奈ちゃんみたい…』
『私?』
『九条さんをイメージして作ったのよ。』
『1年くらい前にまたまた、雨宮さんと九条さんが手を繋いで帰ってるところを見てね。「この子だ」ってわかったんだけど、あなた、雨宮さんと別れた後、桜台高校の子と雨宮さんの悪口言ってたでしょ?』
『あっ…それは…』
『でもあなたの本当の言葉を聞いて「何か理由があるんだ」って…「指輪作ってあげなきゃ」って思ったのよ?』
『本当の言葉?』
『泣きながら隣に居た友達に言ってたじゃない。』
『「好きな人の悪口なんて言いたくなかった」って。』
『うそ!!私、そんな事、真冬に言ったの?』
『真冬…私がひよりちゃんの事好きだって知ってたんだ…』
『ふふっ…気付かないふりしてたなんて…真冬さんらしいね。』
『じゃあ、次は雨宮さんがはめてあげなきゃね。』
『はい…でもごめんね、麗奈ちゃん、私まだ…』
『指輪ならそこにあるでしょ?あなたが一生懸命デザインした指輪が。』
『えっ?』
店長さんは私のくまのストラップを指差して言った




