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残された時間

『麗奈ちゃんはあと行きたいところある?』


『屋上は行ってみたいかな。』


『あっ、私も屋上行ってみたい。』


『じゃあ決まりだね。』


そして私たちは最後に屋上へ向かった。


『すごい広いね。』


『あ〜ぁ…一回はここでお弁当食べたかったな……』


『最後にここに来れただけでも奇跡みたいなんだからわがまま言っちゃダメだよ。』


『理事長も結菜ちゃんに送辞であんな事いわれたら開けないわけにはいかないよね。』


『だね。』


何をするでもなく、屋上から下を眺めるだけの時間…

その瞬間だけは時が止まっているように思えた…


『そろそろ最後の場所に行こっか。』


『うん。』


扉を閉めた後…

階段を降りようとするひよりちゃんの後ろ姿を見て私はある事を思い出した。


『ねぇ、ひよりちゃん。』


『な〜に?』


『落書き…した?』


『そんなの出来る訳ないよ…』


『じゃあさ、ここにしない?』


そう言って屋上へ続く扉を指差した。


『こんなところにしたらみんなに絶対バレるよ。それにすぐ消されちゃうかも…』


『だから良いんだよ。お昼は一度は屋上で食べてみたいって誰でも思うでしょ?』


『うん。』


『いろんな生徒が一度はこの扉を開けようとしたはずだよ。』


『そうだね。私もあの日…』


『だから…』


そう言ってカバンから油性ペンでいちばん目に入るドアノブの少し上に麗奈ちゃんは落書きした。


【9/22初めて喧嘩をした私たちはこの場所で仲直りをして一緒にお弁当を食べました。】

【生徒会長、九条麗奈】


『私、日付けも覚えてるんだよ。』


『生徒会長がこんな事しちゃいけないんだ〜』


私のマジックを取り上げてひよりちゃんはその下に何か書き出した。


【そして、仲直りの証にお弁当を食べさせ合いっこしちゃった。】

【みんなも仲直りはここで食べさせ合いっこしてね。】

【生徒会長、雨宮ひより】


『ちょっと、そんな事書くの?』


『だって、私には大切な1日なんだもん。』

『麗奈ちゃん最後の場所行くよ。』


『あっ、ちょっと待って。』


私たちは最後の場所へ向かった。



『やっぱり…恥ずかしいね…』


『うん…』


そこは下駄箱の前の廊下に飾られた2人の写真の前だった。


『最後の卒業写真…ここで撮ろっか。』


『うん…私もここが良いって思ってた。』


『誰か居ないかな…?あっ、あのっ!写真撮って欲しいんですけど…』


『あら、麗奈ちゃんにひよりちゃん。』


『白雪姫先輩…』


『偶然ね、今ちょうど真冬ちゃんを送り出したところよ。私はお母さんに呼ばれてちょっとお手伝いに行くところ。』


『写真…撮ってもらえませんか?』


『良いわよ。じゃあ並んで。』


『白雪姫先輩?』


『う〜ん…これじゃダメね。』


『何がダメなんですか?』


『後ろの写真に負けて今のあなたたちが輝いて無いわ。』

『そうだ、あなたたち、同じ構図になって。』


『えっ?そんなの…』


『麗奈ちゃん。』


振り向く麗奈ちゃんに私はあの時のようにキスをした。


カシャ!!


『うん。ばっちりよ!』

『じゃあ、私急がないとだから…じゃあね。』


『あっ…そうだ、麗奈ちゃん。』


白雪姫先輩は私にひよりちゃんに聞こえないように耳元で囁いた。


『頑張ってね。』


『はい。』


そして別れを惜しむ事なく白雪姫先輩は去って行った。まるでまたすぐに会える事を予感してたかのように…

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