卒業式
『送辞…在校生代表、白崎結菜』
『はい!』
『先輩達の旅立ちを満開の桜が…』
『……。』
急に言葉を詰まらせる結菜。
『結菜ちゃん?どうしたの?』
『…。』
『結菜ちゃん?』
『琴音ちゃん。やっぱりダメだ…こんなの読んだら私の気持ち伝えきれないよ…』
『桜台高校、精蓮学園の卒業生のみなさん、3年間楽しかったですか?』
『私は白百合の会…あっ…えーっと…いろいろあって桜台高校に転校になって、ペア授業のおかげで精蓮学園に戻ってこれて、しかも来年から桜台高校と合併する事になって…精蓮学園の三年生には感謝しかありません。』
『そしてお友だちの九条麗奈ちゃん、雨宮ひよりちゃんが卒業するのですごく寂しいです。』
『だからせめて…高校生活では悔いは残してほしくないです。』
『後輩たちにちゃんと最後の言葉は伝えましたか?』
『机に消えない落書きはしましたか?』
『屋上には行きましたか?』
『…大好きな人に想いは伝えましたか?』
『もう数時間しかありません…』
『でもまだ残ってます。!!』
『まだ数時間残ってます!!』
『絶対に悔いの残らない高校生活を全うして下さい!』
『この想いを私たち在校生の送辞とさせていただきます。』
『続いて、答辞、卒業生代表。雨宮ひより』
『はい。』
『あんな素晴らしい送辞を頂いて、一生懸命書いた…今朝出来たばかりのこの答辞を開けられなくなって残念に思います。』
『だから私も悔いなく卒業する為にずっと言えなかった事を言わせて下さい。』
『私は中学の頃から精蓮学園の生徒会長に憧れていました。』
『そして、ある事情で合格していたにもかかわらず、桜台高校への入学を選びました。』
『そこで過ごした1年間ちょっとは毎日が地獄のように辛くて…』
『そこに女神…じゃなくて、ちっちゃい天使が現れて…本当に可愛いくて優しくて…』
『愛おしくて…』
『その2年間を上回る幸せを私にくれました。』
『佐藤さん、山本さん、松島さん。ありがとう。』
『あたしたちはそんなお礼言われること何一つしてない、むしろ恨まれて当然だ!』
『そんな事ないよ。3人が居なきゃ私は憧れの生徒会長にはなれなかったし麗奈ちゃんにだって会えなかった。』
『それでもまだ、私に負い目があるって思うなら。』
「私みたいな弱い人を今度は救う人になって私に償ってください。」
「わかった。あたしたち、いつかまた会う日には、後輩たちに胸を張って会えることを、今ここで約束します。』
『約束だよ。みずちゃん』
『うん…。』
『そして、もう一つ私からお願いがあります。』
『あの時は恥ずかしくて嫌だったけど、無理言って今朝早くから飾ってもらったあの写真…見てくれましたか?』
『見たよー』
『めっちゃ良かった!』
『やっぱり…ちょっと恥ずかしいな…』
『私にとってあの写真は特別なもので、私の18年間でいちばんの…最高に幸せな時間でした。』
『あの写真を…小さくても良いからこの先10年…いや…ずっと校舎に飾って頂けないでしょうか?』
『この学校に来た後輩たちに「この学校はこんなに幸せになれた生徒会長が居るんだよ」って知って欲しいんです。』
『どうか…』
『どうか、よ…』
『よろしくお願いします!!』
私の言葉を遮るように麗奈ちゃんは立ち上がり頭を下げていた。
『麗奈ちゃん…』
『ひよりちゃん、私も…同じ気持ちだよ。』
『よろしくお願いします。』
そしてパチパチと…次第に大きな拍手が2人を包んでくれた。
『ありがとう…』
『ありがとうございます。』
『この写真を私の…私たちの後輩たちへの答辞とさせていただきます。』
そして卒業式も終わり、私たちは悔いの残らないようにと最後は2人で過ごす時間をもらって、ゆっくりと校舎を巡った。




