白百合姫
ー白百合姫ーー
ある森に可愛らしいお姫様が居ました。名前は白百合姫。
白百合姫は世界一の美少女として有名でした。
そんな事も知らず、魔法使いの魔女は手に入れた魔法の鏡に語りかけたのです。
『鏡よ、鏡。世界で一番美しい女性はだぁれ?』
『それは森の奥に住む白百合姫です。』
『何ですって!私じゃないって言うの?』
『魔女様は世界で2番目でございます。』
『この私が2番目?なら白百合姫が居なくなれば私は1番になるのね!』
そう言って魔女はリンゴに呪いを掛け白百合姫に食べさせる為に山へ向かいました。
『こんにちは。リンゴはいかがですか?』
『いえ…今日は遠慮しておくわ』
『そうおっしゃらずに試しに一口食べてみて下さい。とても美味しいですから。』
そう言って白百合姫に手渡すと、白百合姫はリンゴを一口食べてしまいました。
『うっ…なんだか眠たく…ごめんなさい』
『ゆっくりお休み下さい。』
『…永遠に。』
部屋に戻った白百合姫はベッドに横になるとすぐに眠ってしまいました。
そこへ一緒に住む小人たちが白百合姫を起こしにやってきました。
『白百合姫。そろそろ起きなされ。』
ですが何日も起きる事はありませんでした。
このままでは衰弱して死んでしまうと考えた小人たちは命と引き換えに魔法をかけガラスの棺に封印しました。
『運命のキスで目覚める』と記して…
ーー舞台裏では…
『ひよりさん、もう出番だから棺の中に入って。』
『う…うん…』
『ひよりさん、大丈夫よ。神崎部長が居なくなってちょっと設定が変わったからキスシーンはおでこになってるから。』
『よかった〜』
『でもちょっと長いから我慢してね』
『来年のポスター作らないといけないからちょっと撮影会になるの。』
『そんな…』
『本当ごめん。5分くらいだと思う。音楽が流れるからサビのところでゆっくり目を開けて。』
『わかりました…』
『じゃあ、蓋閉めるね。』
ーーそして月日は流れ、魔女も居なくなり巡り巡って魔法の鏡を手に入れた王女様がいました。
『鏡よ鏡。私の運命のひとはどこ?』
『山の奥で眠る白百合姫です。』
『白百合姫…どんな人かしら…』
王女様はすぐに馬車を走らせ森へ向かいました。
ーーそして舞台裏では…
『麗奈さん次キスシーンがあるけど相手は人形だからリラックスね』
『うん、わかった。』
『キスシーンなんだけど、来年のポスターに使う撮影会に入るからちょっと長いけどここが最大の見せ場だからね。』
『パンフレットにも書いてある通りここを楽しみにして来てくれてるお客さんも多いから絶対ミスしちゃダメだよ。演劇部の未来が掛かってるから。』
『わかった。全力でやるよ。』
ーー王女様が森へ着くとそこにはガラスの棺が一つありました。
『運命のキスで目覚める…私の運命の人がこの中に…』
王女様が蓋をあけると…
『(これを開けて…)』
ガサッ
『(えっ…ひよりちゃん…うそっ…)』
そこには見惚れてしまうほど美しいお姫様が眠っていました。
その瞬間、後ろのスクリーンには、
舞台からの目線
白百合姫の目線
王女様の目線
あらゆる角度から撮られた映像が映された。
そしてアナウンスが流れる。
『皆さま、ただいまから数分間、撮影会となりますので、撮影を希望なさる方はこちらにお並び下さい。』
ほとんどの観客が舞台前に並び、長蛇の行列ができる…
『では再開致します。』
そして音楽が流れた…
白百合姫のあまりに美しい姿に目を奪われた王女様の唇は引き寄せられるように…
『(どうしよう…どうしよう……)』
舞台袖から小さく声が聞こえてくる…
『早くして、お客さんが待ってるよ。』
『(わかってる。わかってるけど…)』
会場のざわめきも聞こえはじめた…
『(もう…やるしかない!!)』
『(麗奈ちゃんの匂いがする気が…でも、そんな訳無いよね…)』
そしてスクリーンの画像は切り替わり、私はゆっくりと唇を重ねた…
『(えっ…うそ…おでこだって言ったのに…)』
カシャ、カシャカシャ…
その瞬間、眩しいくらいのフラッシュが2人を包んだ。
『(ひよりちゃん…私なんかでごめんね……)』
『(麗奈ちゃん…ごめんね……。)』
私の瞳から一粒の涙が流れた。
そして、永遠に感じるほど長かった音楽がサビに入った頃
私たちはゆっくりと目を開いた…
『(麗奈ちゃん⁈)』
曲が終わりゆっくりと離れる麗奈
『ひと目見た時にわかったわ。あなたは私の運命のひとよ。』
知らない誰かに初めてを奪われたと思った。
『私もだよ。麗奈ちゃん!!』
私は長い不安から解放され役も忘れて抱きついてしまっていた…
再びフラッシュが2人を包み込む。
少し距離を取った後、今度は私から唇を重ねた。
黄色い歓声とスタンディングオベーションが起こる中、ゆっくりと幕は降りていった…




