交渉
あれから私たちは色んな人の声を聞いた…
賛同してくれる人、怖くて賛同出来ない人、聞かなかった事にしてくれた人…
でも、みんな白百合の会には不信感を持っている事がわかった…
そして…集まった署名、精蓮学園生徒、職員含め416名…
私たちは次の作戦へと移行した。
『ひよりちゃん、行こうか。』
『うん。』
あれから見違えるように頼もしくなったひよりちゃん。
まさかひよりちゃんの提案で私と2人で生徒会長をするとは思ってなかったけど…
私はひよりちゃんと共に桜台高校に居た。
その日は祝日で私たちが桜台高校の校長先生に話をもちかけたのだ…
守衛室を通ると校長先生が迎え入れてくれた。
『待ってましたよ。こちらへ…』
そう言って静かな校舎を進み、私たちは校長室へ案内された…
『校長先生、ごめんなさい。大切な校章をこんなふうにしてしまって…』
『その話は後でいいかしら?これからの話次第では違う意味になりますからね。』
『で、今日は何の話をしに来たの?』
校長先生は私たちを試すように言った…
『グロリオサの徽章についてです…』
『やっぱり、あなたたちが盗んだのね…』
『何が目的?それとも脅しに来たの?』
『盗んだわけじゃ…』
『ひよりちゃん。』
『あの日…ここでひよりちゃんとお昼ご飯を食べたあの日の帰り際、私はそちらの机に光るこの徽章を目にしました。』
『この徽章がどれだけ大切なものなのかはわかっています。』
『だからこそ、そのままにしてはおけなかったんです。』
『でも、私たちの持つ白百合の徽章とは違う…そして…』
私は白雪姫先輩にもらったグロリオサの徽章を取り出してみせた。
『ある方に譲り受けたこれとも少し違う。』
『だからその方に相談しました…』
『するとある提案をされたんです。』
私はそこまで話すとひよりちゃんに目線をやった。
『私たちは返しに来たんです。』
『ただ…その代わりに…グロリオサの組織について情報をください…』
『何をするつもり?』
『それは…』
ひよりちゃんは俯いてしまった…
『私が、グロリオサの組織を壊滅させます。』
『麗奈ちゃん!』
『良いの。もし、失敗したら私が罰を受けるから。』
『麗奈ちゃん。』
ひよりちゃんは私の胸にあるくまに優しく触れた。
『私も、この子みたいに……』
『麗奈ちゃんと一緒が良い…』
『だから私も一緒に罰を受けます。
』
『あなたたちの覚悟はわかったわ。』
そう言って校長先生は語り出した。
『麗奈さん、あなたがペア授業の申請に来た時、私は橘先輩…紫苑さんの子供だってすぐにわかったわ。』
『ママの事…知ってるんですか?』
校長先生は優しく微笑んだ…
『私と橘先輩は今のあなたたちと同じような関係だったわ。』
『あの頃…私を救ってくれたのは橘先輩だった…』
『当時橘先輩には一ノ瀬生徒会長…今は白雪理事長ね。あの人と惹かれあっていた…』
『ママと白雪理事長が…』
『でも当時は女性同士の恋愛なんて誰にも言えず気持ち悪がられていてね…』
『(私もひよりちゃんをそんな目で見てるなんて知られたら怖い…)』
『その時、私たちは白百合の会の存在を知って、色んな悩みをみんなで話し合ったわ。』
『でも、私は2人が結ばれたら傷つくのは2人だと思っていたの…』
『そこにこのグロリオサの組織から声がかかった…』
『白百合の会の闇になるなら2人の幸せを保証する…って…』
『嫌なこともいっぱいしなきゃいけなかった…私ももう限界だった…』
『だから私はあの日に賭けたの。』
『あの日…あなたたちがここに来ると知ってわざと机の上を散らかしてその中に徽章を置いたの…』
『もし、気づいてくれたら…それが、あなたたちならきっと…って。』
『だから私も協力させて。』
『本当ですか!』
『盗んだなんて言ってごめんなさいね。』
『いえ…持って行ったのは事実なので…』
『それと、その校章。』
『切ってしまってすみません。』
私は、2人で生徒会長になるというひよりちゃんの提案に、胸の校章を切り合わせる事を考えたあの日の事を思い出していた…
ーー胸ポケットを外して…斜めに切って縫い合わせる…縫い目にを覆うように百合の花の刺繍を施して…
麗奈ちゃんは私の制服だから上側が桜台。下側が精蓮。
私は麗奈ちゃんの制服だから上側が精蓮、下側が桜台ね。
私、お裁縫得意だからまかせて。ーー
『その校章みたいに…雪乃ちゃんと仲直り出来れば良いんだけど…』
『きっと理事長も同じだと思います…』
『ペア授業の申請の時、私と副会長が対象外だった桜台高校にしたいって言いに行ったとき理事長嬉しそうにしてましたから。』
『そう…』
校長先生は安心した様に見えた。
『わかったわ。実は、1週間後、大きな会議が行われる予定なの。』
『その時に間に合うように私の方も準備するわ。』
『徽章はその日まで預かってて。』
私たちの交渉はうまくいきあとはその日までの打ち合わせを重ねるだけだった…
そしてその1週間はこんなにも長く、そしてすぐに訪れたーー




