君の痛みと3枚の宝物
今日はペア授業を締め括る
桜台高校、対、精蓮学園の
学年別の球技大会。
私たちの種目はドッジボール…
生徒会長である私が始球式を始めた。
私はボールを持ち最前に出た。
『雨宮ひよりさんを出して。』
クラスメイトに押されて前に出てきたひより…
これはペア授業初日に話した作戦だった…
『動いたらダメだからね…』
そう言って振りかぶった。
『あっ…!!』
手を滑らせたフリをしてバウンドさせてひよりちゃんにパスする麗奈。
急いで後ろを向いて走ろうとするがコケてしまう。
『いたっ!』
その一瞬をついてひよりが投げたボールが麗奈に当たった…
すかさず真冬がボールをキャッチして何も出来ずに後ろを向いたひよりのお尻にボールを当てた。
それを合図にボールが速さを増していった…
今回のドッジボールは当てられたら終わり。
だから私は早くこのゲームからひよりちゃんを助け出したかった。
それは私にとって桜台高校からの解放を宣言するものだった。
そして決着は真冬が決めてくれた。
早く終わるようにルールを変えられた私たちの学年は他のクラスの応援へ向かった…
ひよりちゃんはきっと一年生の応援に行ったんだろう…
そして、私と真冬は閉会式の準備がある事をみんなに伝え、着替えるために更衣室へ向かう…
『麗奈。』
『うん…』
この結果によっては話が変わってくる…
私は祈るように勢いよくロッカーをあけた…
そこには、桜台高校の…ひよりちゃんの制服があった…
一瞬固まってしまいお互いの顔を伺うと
パチンッ!!
誰もいない教室に私と真冬の手が重なる音が響いた…
それは私たちが望んだ世界にグンと近づいた事を意味した。
『麗奈、気を抜くなよ。』
そう言って真冬はさっさと着替えて更衣室を後にした…
『ひよりちゃんの制服…』
内側はぼろぼろで破れた跡があちこちにあった…
私は制服を抱きしめて涙が溢れた…
『あと少しだからね…』
私はひよりちゃんの制服を着ると準備の為に会場へ向かった…
球技大会が終了し、閉会式の挨拶が始まった。
私は胸ポケットにあるクマのマスコットを取り出そうとした…
『ない…(そうだ…ひよりちゃんの制服だから…)』
私は焦ったがひよりちゃんならわかってくれると信じて覚悟を決めるしかなかった。
『生徒会長の挨拶。』
真冬の合図でゆっくりと幕が上がる…
何も知らない生徒たちがざわつく…
私は焦る気持ちを落ち着かせるように静かになるのをじっと待った…
数分が経ち.
私はいつも以上に声のトーンを下げて始めた…
『皆さま、ペア授業お疲れ様でした…』
『桜台高校の皆様、精蓮学園の取り組みにご協力頂きありがとうございました。』
『精蓮学園では古くから…
『麗奈さん…』
そう叫んで体操服姿の生徒が駆け寄ってくる…
両手で抱えた私の制服…
『正式な場ですよ。着替えてきなさい。』
私は冷たく突き放すように言った…
『でも…制服が…』
『良かったじゃない。あなたが着たかった制服で。』
会場内でそんなひよりの姿を見て笑う声が聞こえた気がした…
『真冬。お願い。』
そう言って真冬はひよりの腕を掴んで更衣室へ向かった…
更衣室に着くと真冬は着替えるように促す。
『急いで着替えて。』
『でも…』
着替えを手伝いながら制服にクマがある事に気づいた真冬は聞いた。
『クマがないと麗奈を信じれない?』
黙り込むひより…
『胸ポケットにある生徒手帳の中を見て。』
胸ポケットから生徒手帳を取り出すとゆっくり広げるひより。
『そこじゃなくて…』
そう言ってひよりの手に触れながら生徒手帳のカバーを外した。
『あなたなら見覚えあるんじゃない?』
そこには3枚の紙が入っていた…
『これって…』
それはひよりが渡した期間限定のチョコの包み紙だった…
『何かあるといつもそれを見て心を落ち着かせてた…』
『その紙切れが…麗奈の宝物なんだ…』
ひよりは制服のボタンを締めながら駆け出していた…
会場に入り急いで麗奈の元へ向かうひより。
『似合ってるじゃない。』
わざと皮肉に聞こえるように麗奈は言った途端会場から笑い声が聞こえてくる…
『その制服はあなたにあげるわ。でも…』
ひよりが持つ生徒手帳をわざとらしく、大袈裟に取り上げた。
『これは私の宝物だから返してもらうわ。』
『開会式を続けるから席に戻って。』
『はい…』
目に涙を浮かべゆっくりと自分の席に移動するひより…
『それでは話を続けます。』
『今回、私はペア授業の連盟制度を使ってある方を精蓮学園にお迎えしたいと考えております。』
『1年2組。白崎結菜さん。壇上へ。』
予想外の人物の名前に精蓮学園の生徒がざわめく。
『静かに。』
会場に戻った真冬が静止した。
『彼女は今回のペア授業で友達の為に考え、行動し、助けるという精蓮学園にとって大切な行動をしました。』
『ですので…白崎結菜さん。精蓮学園に転校して頂けませんか?』
『でも私は…』
麗奈は結菜にだけ見えるように胸ポケットからひよりの生徒手帳を覗かせて言った
『お願いします。』
『(きっとそれがひよりちゃんを守る為に必要なんだ…)』
『分かりました…』
『では、後日、彼女の転校式を行わせていただきます。』
『これでペア授業閉会式を終わります。』
ざわめきが薄れゆく中、
『(どうして…麗奈ちゃん…)』
ひよりはまた1人で涙を流して
『(助けるって言ってくれたのに…)』
閉会式は幕を下ろした…




