嘘だとしても…
麗奈は右手が震えるのを押さえて一呼吸してから真冬に向かって話しかけた…
『う、うわっ…て、手汗きもっ…握らなきゃよかった…』
『麗奈!!シッ』
『あっ…佐藤さん…今の…聴こえて…ないよね…』
ゆっくり真冬の隣に居る佐藤の顔を覗き込む麗奈…
『聴こえちゃった…』
凍りつく麗奈は必死にその場を取り繕う
『あれは…その…』
『良いよ。あたしなんかに隠さなくても。
私もあいつ嫌いだから。』
『えっ…本当?よかった〜』
胸を撫で下ろすふりをする麗奈。
『佐藤さん、この事は内緒にして欲しいんだ…麗奈はいつも学校では…』
『大丈夫だよ。私も似たようなもんだし。』
『ごめんね、こんなのバレたら好感度ダダ下がりだよ…』
『あいつ私がずーっと話しかけてるのに喋らないし、たまに喋ったと思ったらボソボソ何言ってるかわかんないし…』
『(嫌だ…)』
『そうそう、顔見ただけでイラつかせるんだよね。』
『だ…だよね!』
『(嫌だ…)』
『あいつ明日絶対追加授業申請するよね…』
『麗奈がしろって約束したんだろ?それに生徒会長がされなかったら面目丸潰れだぞ?』
『無視しちゃって良いかな?』
『(嫌だ…)』
『ダメだ。今はお前が思ってる以上に好感度が上がってるんだ。』
『うちのクラスの連中もあんなのに優しくしてる麗奈さん女神じゃんって言ってるやつも居たよ。』
『女神だなんて…』
嬉しそうな素振りをする麗奈
『(全然嬉しくない…)』
『せめて明後日まで我慢しろ。』
『ちょっと待って、私申請出せないでしょ!』
『申請出せないの?』
『うん、生徒会長はよっぽどの事がない限り申請しないって言うのが代々受け継がれたルールなの。』
『そっか…真冬は出してくれるよね。』
『当たり前だろ。あと二日しかないけど楽しもう。』
『だね!』
『あっ…私こっちだから、また明日』
手を振って見送る2人…
『絶対言っちゃダメだからね〜』
『わかってる〜。』
そう言って背中を向けたのを見たあとゆっくりと歩き出す2人…
それから私たちは、しばらく何も話せなかった…
私は涙を堪えられなかった…
『よく頑張ったな。』
拭っても、拭っても溢れてくる…
『…好きな人の悪口なんて……』
『言いたくなかった…』
そして私は口に出してしまった事に気づかなかった…
『うん。』
真冬は気付かないふりをした…
そして肩を抱いて歩いて行った…




