白百合の会
真冬は家に着くと玄関の前で立ち止まった…
『私は…怖いか?』
『い…いぇ…』
目線を逸らし彼女は言った…
『そうか…』
なかなか家に入ろうとしない真冬…
『何かあったんですか?』
『いや…その…部屋に入っても笑わないで欲しいんだ…』
少し暗い顔をする真冬。
『分かりました。』
扉を開け、そのまま真冬の部屋に向かうと、中には可愛いぬいぐるみがたくさん飾られていた。
顔を真っ赤にする真冬…
その姿に思わず笑い声が出てしまっていた…
『くっ…ふっ…ご…ごめんなさい…』
必死に笑いを堪える結菜。
『私には似合わないのは分かってるんだ…』
確かにイメージとは違う女の子らしい雰囲気の部屋だった…
それを隠そうとする真冬先輩は可愛くて…笑ってしまったんだ…
『(私の知らない真冬先輩…)』
『私…もっと早く知りたかったです。先輩の事…』
そして一息ついた少女は真剣な表情で話し始めた。
『それよりも…白百合の会についてですよね。』
『あぁ、白百合の会っていったいなんなんだ?』
一瞬…沈黙が流れた…
『私も入って間もないのであまり知らないんですが…』
少女はノートを取り出してわかりやすく書き出した。
「白百合の会は会員制でこの組織の目的は、
女性の為の組織…主に女性同士の恋愛相談、友達相談が目的みたいです…表向きは…』
『表向きは?どう言う事だ?』
『私も友達の事で悩んでいて入会に至ったんです。何度か会議に参加したのですが、未だにそう言う相談はなかったんです…
でも、先輩のおかげでやっと力になれそうなんです…』
『私は何も…』
少女を脅した罪悪感から俯く真冬…
『私の友達は桜台高校に居るんです。さっき白百合の会から届いたのが桜台高校転校手続きで…』
『桜台高校?あそこはあまり良い噂を聞かないぞ?私の知ってるやつが仕切ってるみたいだし…以前いじめのような事をしてた連中を見たんだ…』
『はい…私もそう言う噂は聞きました。私の友達も精蓮学園に合格したって聞いてたのに何故かその高校に行ってて…一緒に行こうって約束してたのに……だから何かあったんだって…』
『ずっと悩んでたら突然変な手紙が届いて…』
『それが白百合の会の招待状だったのか。』
『はい…誰かが私を招待したみたいで…』
『手紙にはこう書いてありました…』
【白崎結菜様、私たち秘密組織、白百合の会は悩める女性を助ける為の会です。】
【私たちはあなたの力になりたい。】
【どんな手を使ってでもあなたの願いを叶えます。】
【もし私たちの力が必要なら…あなたの力になれるなら…あすの18時、精蓮学園から東にあるコインパーキングに青色の乗用車を止めておきますので、そちらでお待ちしております。】
【完全秘密組織ですのでこの手紙は燃やして処分してください。】
『その時の私は冷静になれてなかったのですぐにそこへ向かいました。』
『会場に行く道中の運転手さんや受付の方たちは気さくに話をしてくれました。会場に着いて白百合の会について最低限の事だけ説明されました。でもこの徽章を貰ってからは急に態度が変わったんです。』
『私が話しかけても誰も口を開こうとしませんでした…唯一口を開いてくれた運転手さんが言ったんです。』
『この組織の話は誰にもするな。組織の会員とも口を聞くな…って。』
結菜はメモを取りながら続けた…
『私の知ってる勧誘方法は私のように直接白百合の会から招待される事と、私たち会員が招待する事。』
『今回私がこの徽章を必死に探してたのは、もし無くしたり、誰かに譲ったりしたらとんでもない罰を受けなきゃいけないんです…シリアルナンバーが入ってるから、組織の人間に落とした事がバレても同じです。だから無くした事を私は組織に伝えたんです。』
『とんでもない罰?』
『ある人は両親共に海外に転勤になったり、家業が倒産したり…それをこの組織は故意にするんです。』
『上からの圧力か…だから警察本部が絡んでたんだな…』
『私も徽章が見つかったとはいえ転校で済むとは思っていませんでした…それでも、組織は何か企みがあって桜台高校にしたんだと思います…』
『それでも先輩は…』
『私は…それでも白百合の会に行かないといけないんだ…』
その瞬間、空気が変わった気がした…
『(真冬先輩は本気なんだ…)分かりました…』
『あと私が知ってる情報はおそらくですが、内部で分裂してる気がするんです…』
『分裂?』
『いぇ…そんな感じがして…一部ですが…楽しそうにしてる人が居たんです…皆んな暗い顔をしてるのに…』
『あと…いろんなトップも組織と関係があるって事…病院の先生だったり、警察官、タクシー会社、運送会社、マンションのオーナー……その人たちが協力しあって組織を隠してるんです。』
『最後に連絡は学校から返ってきたノートに書いてあります。』
『ノート?精蓮学園にも関係者が居るって事か…』
『はい。宿題とかで提出したノートが返ってきた時に自分の字で書き覚えの無いメモ書きがあるんです。国語と社会が主ですが稀に数学だったり英語にもあります。なので提出したノートは最初から見返した方がいいです。会議に行くかどうかは任意なので見逃しても大丈夫ですが…』
『私が知ってるのはこれくらいです…』
真冬は黙ったまま何かを考え込んでいた…
『先輩?』
『あっ…あぁ、すまない…話してくれてありがとう。
今日は生徒会の仕事を手伝ってもらったって事にしてくれ。
そうすればこちらとしてはなんとでも理由をつけられるからな。』
『はい。分かりました。』
『今から帰ると何時頃に家に着けるんだ?』
『8時15分くらいには…』
『分かった。なら、私の方からご自宅に連絡を入れておくよ。』
『送ってやりたいが…組織に見つかるわけには行かないからすまないな…』
『気をつけて帰ってくれ。』
『はい…失礼します…』
結菜を見送ったあと、すぐに真冬は結菜の自宅に連絡を入れて、謝罪をし、お礼と到着時間を伝えた…
『麗奈…』
あれからすぐに真冬のもとに白百合の会の招待状が届いた…
結菜が言ったとおり、徽章を受け取った直後の反応はガラリと変わっていた…
『(勧誘する事だけが目的って感じだな…)』
それから何事もなく結菜の転校が行われた…




