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重心の社  作者: 十五夜
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第四章:鳴動

北の双子滝。

切り立った崖の間に白糸を垂らすその場所で、少年の上履きは見つかった。

それは岩場の上に、まるで誰かが丁寧に揃えて置いたかのように、踵を揃えて並んでいた。


佐藤が現場に駆けつけたとき、異様な光景が広がっていた。

現場を保存し、鑑識を待つべき捜索隊の面々が、誰も上履きに触れようとせず、ただそれを取り囲んで跪いていたのだ。


「……何をしている。早く証拠品を確保しろ」


佐藤の声が、水飛沫の音に掻き消される。

住民の一人が顔を上げた。その表情には、疲労の色など微塵もない。ただ、内側から発光するような、静かな法悦が宿っている。


「刑事さん、見なさい。これで三が揃った」


彼らはもはや、少年を心配する言葉を口にしなかった。

三つの点が揃い、三角形が閉じた。その事実だけが、彼らにとっての救いであるかのように。


佐藤は強引に列を割り込み、上履きを手に取った。

その瞬間、背筋に冷気が走り抜ける。

上履きの中には、小さな、しかし鋭利な石が詰められていた。それも、ただの石ではない。御霊神社の境内に敷き詰められていたものと同じ、青白い小石だ。


「……意図的だ。これは最初から、配置されていたんだ」


佐藤が周囲を見渡すと、いつの間にか住民たちの視線が一斉に自分に注がれていることに気づく。

これまでの親切な隣人としての眼差しではない。

それは、舞台の上に迷い込んだ異物を排除しようとする、冷徹な観客の視線だった。


下山する道すがら、佐藤は異変を感じた。

町の至る所に、昨日まではなかった注連縄が張り巡らされている。

家々の門口には盛り塩がなされ、住民たちは皆、白い布を腕に巻いていた。


「お帰りなさい、佐藤くん」


支所の前で待っていたのは、摩季だった。

初めて名前で呼ばれた。しかしそこには、親愛の情など微塵もなかった。

まるで、迷子の子供を優しく、しかし絶対的な力で檻に連れ戻すような、逃げ場を塞ぐ響き。


彼女の手には、古びた真鍮の鈴が握られている。


「……三つ目が揃いました。これで、線は結ばれ、外と内は分かたれた。あなたももう、此処の一部。逃げる必要も、探す必要もございません」


「何だと?」


「今夜、風が変わります。三角形の中心へ向かって、すべての気が流れ込む。……さあ、参りましょうか」


彼女が鈴を鳴らすと、チリン、と冷たく澄んだ音が山々に反響した。

すると、あちこちの家から、それに応えるように住人たちが姿を現す。

彼らの手には、白い提灯が灯されていた。

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