■第84話:接触⑥
戦いは。
続いている。
長く。
重く。
ヴァルハイン軍は。
まだ立っている。
だが。
確実に。
削れていた。
■前線
「交代!」
兵が叫ぶ。
だが。
遅れる。
一拍。
それだけで。
空く。
隙が。
「埋めろ!」
別の兵が入る。
だが。
噛み合わない。
「くそっ……!」
■中央
「中央維持できません!」
報告が飛ぶ。
「いや、持たせろ!」
レオナルトが即答する。
だが。
声が少しだけ遅れる。
そのわずかな差で。
前線が崩れる。
「……ちっ」
■後方
「疲労、限界に近い!」
「補給、遅延!」
「指揮反応、低下!」
一拍。
数字が。
崩れていく。
■レオナルト
「……まだだ」
低く言う。
分かっている。
長く続ければ。
負ける。
だが。
止まれない。
「あと一つ」
「きっかけがあれば」
そう思ってしまう。
それが。
崩れの始まりだった。
■観測(レグナス側)
「疲労、臨界近い」
ミレアが言う。
「補給追いつかず」
一拍。
「あと少しで崩れます」
カイルが息を呑む。
「じゃあ……もうすぐ」
ヴェルドが首を振る。
「まだだ」
■分析
「崩さない」
ヴェルドが言う。
「限界まで維持する」
一拍。
「その方が削れる」
カイルが震える。
「……そんな」
■ルナたち
「……きつそうだね」
エリナが言う。
ルナは頷く。
「うん」
一拍。
「でも」
「まだ終わらない」
レオンが笑う。
「終わらせてくれねぇからな」
■ヴァルハイン
「……退くか」
副官が呟く。
一瞬。
静まる。
その言葉。
初めて出た。
撤退。
だが。
「……違う」
レオナルトが否定する。
一拍。
「押す」
選んだ。
まだ。
勝てると。
思っている。
思わされている。
■レグナス
「報告」
「ヴァルハイン、戦闘継続」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
戦いは。
終わらない。
限界に近づいても。
止まらない。
止められない。
それが。
この戦場だった。




