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■第76話:侵食

 ズレは。


 


 戦場だけのものではなかった。


 


 


 広がっていた。


 


 


 確実に。


 


 


■アストリア魔導皇国


 


「再計算」


 


 


 リシェル・アストリアは短く言う。


 


 


 


「誤差修正、完了」


 


 


「再詠唱、開始」


 


 


 


 


 完璧な理論。


 


 


 完璧な再現。


 


 


 


 魔術が放たれる。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 ズレた。


 


 


 


「……なぜ」


 


 


 初めて。


 


 


 眉が動く。


 


 


 


「理論は正しい」


 


 


 


「条件も一致」


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


「……なのに再現しない?」


 


 


 


 


 あり得ない。


 


 


 


 魔導は。


 


 


 理だ。


 


 


 


 それが崩れる。


 


 


 


 意味が分からない。


 


 


■グラディウス竜王国


 


「全力で叩き潰せ!」


 


 


 ドラクスが吠える。


 


 


 


 


 兵が突撃する。


 


 


 


 


 圧倒的な力。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 踏み込みが。


 


 


 


 


 浅い。


 


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 


 振り切れない。


 


 


 


 


 力が乗らない。


 


 


 


 


 一瞬。


 


 


 


 


 遅れる。


 


 


 


 


 それだけで。


 


 


 


 


 止まる。


 


 


 


 


「なんだこれは!!」


 


 


 


 


 力が。


 


 


 


 


 通らない。


 


 


■セラフィナ教皇国


 


「祈りを」


 


 


 神官が唱える。


 


 


 


 


 加護が降りる。


 


 


 


 


 はずだった。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 揺らぐ。


 


 


 


 


「……弱い?」


 


 


 


 


 あり得ない。


 


 


 


 


 信仰は絶対だ。


 


 


 


 


 それが。


 


 


 


 


 不安定になる。


 


 


 


 


「……なぜ届かない」


 


 


 


 


 静かな恐怖。


 


 


■バルザーン帝国


 


「報告を」


 


 


 ゼルハルト・バルザーンが言う。


 


 


 


 


「各戦場、異常発生」


 


 


「命中誤差」


 


 


「連携崩壊」


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


 


「……やはりか」


 


 


 

 


 


 


 


 


 すでに予測していた声。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


「偶然ではない」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 側近が息を呑む。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


「では……」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ゼルハルトは言う。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「人為的な干渉だ」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 断定。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 他国より。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一歩先。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「……誰が」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 その問い。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 すぐに続く。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「決まっている」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 一拍。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「レグナスだ」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 側近が固まる。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「まさか……」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ゼルハルトは静かに言う。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


「“あの男”だ」


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 名前は出さない。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 全員が理解した。


 


 


■レグナス


 


「報告」


 


 


 


「異常、拡大」


 


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 


 短い返答。


 


 


 


 


 それだけ。


 


 


 ズレは。


 


 広がった。


 


 


 戦場から。


 


 


 国家へ。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 意味が変わる。


 


 


 


 違和感ではない。


 


 


 


 異常でもない。


 


 


 


 


 “誰かの意思”だ。


 


 


 


 


 それが。


 


 


 


 


 世界に伝わり始めていた。



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