■第75話:拡張②
戦いは。
続いている。
だが。
前とは違う。
削れていた。
確実に。
だが。
勝敗がつかない。
押しているはずの側も。
押されているはずの側も。
同じように消耗していく。
■ベルグラード前線
「……おかしい」
ガイラスが低く言う。
「押せてる」
「だが抜けない」
一拍。
敵も同じだった。
「踏み込め!」
号令が飛ぶ。
だが。
一瞬。
遅れる。
それだけで。
前線が止まる。
「なんだこの噛み合わなさは……」
誰も答えられない。
■後方観測
「被害報告」
ミレアが静かに言う。
「双方、同程度」
「偏りなし」
一拍。
「……あり得ません」
ヴェルドが頷く。
「通常なら」
「どちらかが崩れる」
一拍。
「だが崩れない」
カイルが震える。
「これ……どうなってるんですか」
沈黙。
その中で。
ルナが口を開く。
「……削ってる」
一拍。
「均等に」
レオンが笑う。
「喧嘩じゃねぇな」
「処理だ」
その言葉。
空気が変わる。
■味方側の認識
「……待て」
ガイラスが振り向く。
「これ」
一拍。
「誰かやってるな?」
カイルが息を呑む。
「え……?」
ミレアがゆっくり言う。
「自然じゃない」
「意図がある」
ヴェルドが目を閉じる。
一拍。
「……宰相殿だ」
静かな断定。
カイルが固まる。
「味方……ですよね?」
一瞬の沈黙。
誰も否定しない。
だが。
誰も安心していない。
■敵対国
「報告を繰り返せ!」
レオナルトが怒鳴る。
「命中しない!」
「連携不能!」
「損耗は均等!」
一拍。
「……均等だと?」
その言葉。
引っかかる。
「なぜ均等になる」
戦争は。
偏る。
それが常識。
だが。
違う。
「……誰かが」
一拍。
「調整している」
言ってしまった。
その瞬間。
空気が凍る。
■レグナス内部
「報告」
「問題なし」
それだけ。
変わらない。
戦場は。
壊れている。
だが。
それは偶然ではない。
そして。
気づき始める。
まずは味方。
次に敵。
少しずつ。
確実に。
広がっていく。




