■第70話:理解
戦場は。
壊れ続けている。
ぶつかり合っている。
だが。
成立していない。
それを。
“見ている側”は。
理解し始めていた。
■レグナス内部
「……もう一度、状況を整理します」
ヴェルドが静かに言う。
全員が視線を向ける。
「三大国は衝突している」
「だが戦線は存在しない」
「各軍は独立して動いているように見えるが」
一拍。
「実際には」
紙に線を引く。
「同じ“流れ”に乗っている」
カイルが息を呑む。
「……流れ?」
ミレアが小さく頷く。
「全部、同じ方向にズレてる」
ガイラスが腕を組む。
「だから当たらねぇのか」
一拍。
ヴェルドが答える。
「違う」
静かな否定。
「当たるように“見せている”」
沈黙。
「……は?」
「実際には」
一拍。
「全部外れている」
カイルの顔が青くなる。
「それって……」
言葉にならない。
代わりに。
ルナが口を開く。
「最初から決まってるってこと」
静かな断定。
レオンが笑う。
「つまり」
「勝負になってねぇ」
エリナが目を伏せる。
「……そんなの」
一拍。
「戦いじゃないよ」
誰も否定しない。
できない。
ヴェルドが静かに結論を出す。
「これは戦争ではない」
一拍。
「制御だ」
カイルが震える。
「誰が……?」
沈黙。
そして。
全員の視線が。
一点に集まる。
カイン。
一拍。
ヴェルドが言う。
「……宰相殿」
「あなたは」
言葉が止まる。
だが。
それでも。
「何をしているんですか」
一拍。
カインは答える。
「何も」
静かな声。
「ただ」
一拍。
「整えているだけだ」
その言葉。
全員が理解した。
これは。
戦いではない。
“盤面”だ。
そして。
その中心にいるのが。
カインだった。
理解は。
終わった。
だが。
それは。
始まりでもあった。




