■第69話:中心
戦場は。
壊れていた。
ぶつかり合っているはずの軍が。
噛み合っていない。
剣は届かず。
魔術は遅れ。
祈りは歪む。
それでも。
止まらない。
だからこそ。
壊れていく。
■混戦中央
「なんだこの戦いは…!」
グラディウス兵が叫ぶ。
「当たらねぇ!」
「位置が合ってねぇ!」
一拍。
別方向。
「詠唱、遅延!」
「制御不能!」
アストリア側も崩れる。
「祈りが届かない…!」
セラフィナも同じ。
全てが。
“少しずつズレている”
それが。
致命的だった。
■外縁(観測)
「……全部ズレてる」
ルナが呟く。
「戦ってるんじゃない」
一拍。
「戦わされてる」
レオンが笑う。
「だろうな」
「昔からあいつはそうだ」
エリナは言葉を失う。
「……これ全部」
一拍。
「カインなの?」
沈黙。
そして。
ルナが答える。
「最初から」
その一言。
すべてを確定させた。
■レグナス内部(内政)
「報告を」
カインが言う。
「南部補給路、再構築完了」
ヴェルドが淡々と答える。
「問題なし」
「西部防衛線、再配置完了」
ガイラスが頷く。
「いつでも対応できる」
「流通、安定」
ミレアが資料を閉じる。
「物資不足の兆候なし」
一拍。
「……あの」
カイルが恐る恐る口を開く。
「外、戦争ですよね…?」
沈黙。
誰も慌てない。
誰も焦らない。
そして。
ヴェルドが静かに言う。
「関係ない」
「ここが中心だ」
カイルが息を呑む。
「……中心?」
一拍。
ミレアが小さく続ける。
「全部、ここに向かってる」
ガイラスが笑う。
「なら簡単だ」
一拍。
「来たやつ全部叩き潰すだけだ」
だが。
違う。
それだけじゃない。
カインは。
戦っていない。
ただ。
「揃ったな」
それだけを言った。
■レグナス王
「……任せる」
アルディウス・レグナスは言う。
理由はない。
だが。
それで十分だった。
■戦場
ズレは広がる。
衝突は激しくなる。
だが。
噛み合わない。
それは戦いではない。
“崩壊”だった。
外は地獄。
内は完成。
その差が。
すべてだった。




