■第68話:拡大
最初は。
小さかった。
ぶつかったのは。
一部隊だけ。
だが。
止まらない。
接触は。
連鎖する。
■戦場外縁
「前方、衝突!」
「アストリアとグラディウス!」
「……介入するな」
指揮官が即答する。
「距離を維持しろ」
だが。
「……無理です!」
別方向。
「セラフィナ部隊、接近!」
さらに。
「後方にも反応!」
一拍。
囲まれる。
「……ちっ」
もう。
選べない。
■アストリア戦域
「干渉が強まっている」
魔術士が報告する。
「詠唱遅延」
「制御誤差、増大」
一拍。
「……範囲を広げすぎたか」
リシェルは目を細める。
だが。
「問題ない」
「調整すればいい」
理はまだある。
そう信じている。
■グラディウス戦域
「なんだこの戦いは!」
兵が吠える。
「当たらねぇ!」
「力が乗らねぇ!」
一拍。
それでも。
「進め!」
止まらない。
止まれない。
だが。
崩れる。
■セラフィナ戦域
「……歪みがある」
神官が呟く。
「祈りが届かない」
一拍。
「……なぜ」
答えはない。
だが。
「進め」
教皇の言葉。
それだけで。
止まらない。
■中規模国家
「……広がっている」
観測官が低く言う。
「衝突が連鎖している」
一拍。
「戦線が存在しない」
普通の戦ではない。
「……全部、混ざっている」
沈黙。
「……原因は」
一拍。
誰も言わない。
だが。
「……レグナスか」
小さく呟く。
否定できなかった。
■レグナス
「……広がったな」
カインが呟く。
「おいおい」
バルガスが笑う。
「もうぐちゃぐちゃだぞ」
一拍。
「問題ない」
静かな声。
「揃う」
それだけ。
一方。
アルディウス・レグナス。
「……任せる」
短い言葉。
それで。
十分だった。
戦場は。
広がった。
だが。
それは。
戦線ではない。
“崩壊”だった。
そして。
それは。
止まらない。




